怒涛のアームガンナー(1)
前回までのあらすじ
バアルディット最強の将軍、白騎士が率いるパロデスと死闘を繰り広げたエメラルドタマキであったが、後一歩及ばず、絶体絶命のピンチに陥っていた。
そんな時、衛が2台のマシンと共に駆け付け、エメラルドタマキ・マシンエメライダーとなり、窮地を乗り越えたが、衛はマシンの副作用により倒れてしまう。
マチスのアジトに向かう最中にバアルディットの将軍、リターンズメェーン将軍に襲撃されるも、環とモナのコンビネーションで切り抜けることに成功し、アジトに到着するもアームガンナーに目を付けられる環。
果たして、姫宮環の運命はどうなるのだろうか!?
マイヤに案内されてロッカールームに着いたタマキとモナは言われたように隊服に着替えようとしていた。
環がロッカーを開けようとしたその時。
「よう、勇者様? 気分はどうだい?」
その声と、腕と一体化した銃を頭に突きつけられて、環は思い出していた……女神を威圧していた黒いメカニカルボディーの男を。
「確か……アームガンナー、さんでしたよね?」
女神にも躊躇なく撃った事を考えると動く事が出来ずにいた。
「名前なんか良いんだよ! どの面下げてここに来たかと思えば……女連れで、ヘラヘラ…ヘラヘラと! 本当に癪に障るやつだぜお前はよ!!」
アームガンナーは環を蹴り付け、壁に叩きつける。環も身構えていたとは言え、後ろから横っ腹を蹴られた事でむせていた。
「変身出来なきゃこの程度……なさけねぇな!? 一人じゃ何も出来ないんだろ!?」
アームガンナーはそのまま数発蹴り、環を踏み付けた。
「なぁ、分かるか? 勇者様よぉ……俺の体を良く見てくれよ?」
足を退けたかと思えば髪を掴み上げ、無理やり環を起す。
「お前と違って頭以外は機械だ! 生殖器もねぇ!! 俺ら兄妹はてめぇの体を作るためにこんな体にされたんだよ!!」
血走る目、メカニカルボディーを見た環は言葉を失っていた……
「何か言えよ勇者様よぉ! お前みたいな体を作る為の犠牲に俺は……!」
「やめなさいアームガンナー!」
騒ぎを聞き駆け付けたマイヤはアームガンナーを怒鳴りつけ、隊服を着たモナも遅れて男性ロッカールームにやってきた。
「環!」
モナはすかさずアームガンナーにドロップキックをかまし、環から引き離した。
「っ! モルガナイト…!」
アームガンナーはモナを睨みつけ両腕を銃に変え、構える。
「今の私は杭神モナだし、貴方は何を考えているの!?」
帽子のクリスタルと腕の装置を光らせ、パイルバンカーシールドを出すモナ。
「そこまでになさい!」
マイヤはモナとアームガンナーの間に立ち、呪文を唱えるとアームガンナーの銃身が凍りついた。
「マイヤ! 邪魔をするのか!? お前なら分かってくれるだろ!?」
「だからってコレは八つ当たりです!!」
マイヤの言葉に何か言い返そうとしたアームガンナーだったが、悲しそうな表情を浮かべロッカールームを出ていく。
「何よあいつ……環、大丈夫?」
モナはパイルバンカーシールドをしまい、環を抱き起こす。
「すみません、モナさん…マイヤさん、ありがとうございました」
横っ腹を押さえながらモナとマイヤに礼を言う環にすかさず頭を下げるマイヤ。
「いえ、本当に申し訳ありませんでした」
謝るマイヤをたて、その場を治めた環は隊服に着替え、マチス達の元に戻った。
バアルディットの本拠地にて
白騎士が負けた事、リターンズメェーンが任務に失敗した事を受け、デスドラン将軍は準備を進めていた。
「白騎士もリターンズメェーンもやることが手緩いのだ!」
スコルオブトが開発している機械を見ながら愚痴をこぼすデスドラン将軍。
「そう言うデスドラン将軍も甘いのでは? 脳改造を施さないのは以外で……正直驚いていますよ」
何やら機械を完成させたスコルオブトがデスドラン将軍に近付き、ニヤニヤしながら話しかけていた。
「そこまで驚きもせずに楽しんでいるのはお前だろ?」
その機械を起動させ、機械は起き上がる。
「マシーン族の神秘と生命力が生み出すエネルギーであれば、例え勇者で有ろうとも倒せないでしょう」
スコルオブトは自分の作った機械が勝つことを確信していた。
「アームガンナーの悔しがる顔が見れるのが楽しみだ。そして姫宮環よ! 今日が貴様の命日だ!」
デスドラン将軍は完成した機械を連れてマチスの国に向かった。
「……お、にぃ…ちゃん……」
マチスのアジトにて
環はナックルタイガーチームもいれる広場で、迎会によるもてなしをされていた。たくさんの食事を前に、マチスの部下…と言うより仲間達とワイワイしていた。
「アームガンナーについてはまあ、許してやってくれ。悪いやつでは無いんだ。それよりカレーを食べないか?」
ふくよかな体型をしたコックの男は頼んでもいないのにカレーライスを振る舞ってくれた。
カレーライス、まさか異世界に来てまで食べれるとは思っていなかったので少し驚いていた。
「環、このカレーってやつはめちゃくちゃ旨いぞ」
四角いキューブを食べているタイガーマックスに声をかけられ、環は振り返る。
「タイガーマックス、変態って呼ばないんだね」
環は意地悪そうにタイガーマックスに答えると少し申し訳無さそうな表情になる。
「それは、悪かったと思ってる……環、ほら! 良いから食べてみろ」
タイガーマックスに急かされ、席に付き、手を合わせる環。
「いただきます」
一口食べた途端、手が止まらずにいた。
そのカレーライスは辛さだけでなく、カリカリと歯応えのあるバナナチップが合わさり、まろやかな甘みを生み出し深みの有る味であった。
「ごちそうさまでした」
一気に食べきってしまい、それを見ていたタイガーマックスはニヤニヤしていた。
「地黄大助のカレーは絶品だったろ?」
地黄大助、環と同じく異世界転生をした男で、役目を果たしたがこの世界に残る事を選んだ人物で有る。
大助は色んな人にカレーを振る舞っていたが、環とタイガーマックスが大太の話をしてるのに気が付き近付く。
「なんじゃらほい?」
「いや、簡単に説明していただけさ」
タイガーマックスはそう言うとデカいジョッキを持ちナックル達の元へ行った。
環が不思議そうにジョッキをみていると。
「あのジョッキにはマシーン族のエネルギー元であるリキルトンが入っているんだ。簡単に説明すると車が給油するようなもんだ。ただ、お祝い事にそれじゃぁ味気なねぇだろ! って事でスーパーコック大ちゃんがリキルトンを研究に研究を重ねて作ったのがあのDキューブって訳よ!」
大太は指を指しながらタイガーマックスが食べていた四角いキューブを指差した。
「そうか、挨拶がまだだった。ワイは地黄大助、アンタの女神様に上手く逃してもらった異世界転生者だ」
大助はそう言うと握手を求めてきた。
「姫宮環です。タイガーマックスの話だとこの世界に残ったとか……」
環は握手応じて立ち上がり、手を握ると、大助の力量を感じ取って少し身構えてしまった。
「そんな身構えんで良いよ、ちょっと昔の癖でね」
大助が手を離し、椅子に腰掛けたので環もつられて座る。
「まあ気にしないで、ワイはここで大好きなカレーを皆に振る舞えて幸せなんよ」
そう言いながら楽しそうに食べてる仲間を見て微笑む大助。
「それ以外も旨いがな。大助、カレーライスを1つ」
「はいよ」
やってきたマチスは大助にカレーライスを頼むと環の前に座る。
「アームガンナーに酷く恨まれたと聞いたが?」
「あ、はい……でもまあ怪我はしてませんし、深くは気にしていません」
大助からカレーライスを受け取りながら質問してくるマチスに答える環。
「そうか……ほら、肉も食べろ」
豚の様に生物の丸焼きを渡され、環は手を出そうとしたタイミングで衝撃の言葉を聞いた。
「アームガンナーは食事も出来んのだ」
環はその言葉に手が止まってしまった。いや、少し考えれば気が付いた事だ。
『頭以外は機械、生殖器も無い……じゃあ普通に考えて食事なんて出来る訳が無いじゃないか』
環は酷く落ち込んだ。
「分かってやれとは言わん。ただ、食べれる事の有り難みだけは忘れないでやってくれ」
マチスはカレーライスを食べながら環に話し、他の料理にも手を出していた。
「ワイがこの世界に残ったのはそれが理由さ……旨いご飯が食べれない体にされても、Dキューブが有れば、せめて味や幸せな気持ちを思い出せる。そんな希望を残す為に決断したんだ」
環には大助が眩しく見えた。
「だからって人には役目が有る。ワイにはワイの環には環の。だから役目が終わったからと言ってこの世界に残れとは言っちょらん! むしろワイも本来は戦うべきなのに……お前らだけに任せてる」
大助はうつ向いてしまったが、マイヤが大助の肩を叩く。
「人には役目があるんでしょ? だったら胸を張って大ちゃん。貴方の料理が皆を笑顔にしてるの」
大助は再度、楽しそうに食べてる仲間を見る。
「そうか…そうだな」
大助は少し涙ぐみながらも嬉しそうにしていた。
「皆、色んな傷を抱えているの。でもここにいる皆はそれを支え合う事が出来ている……上の、マチスさんの国の人らもです」
「上?」
マイヤの説明で出た上の言葉に疑問を抱き聞き返す環を見て、呆れた様子でマチスを見るマイヤ。
「マチスさん、説明端折り過ぎですよ。あーもう……話は変わるんですが、異世界なのに元いた世界の食事出来ているのは、地上に有るマチスさんの国で」
そうマイヤが話た途端けたたましいサイレンが鳴り響き、通信が入る。
「マチス! 敵襲だ! デスドランが来やがった!」
その通信を自室で聞いたアームガンナーは復讐に燃えていた……




