逃避行などではなく
朝が来る前に
二人でこの街から出よう
誰にも見つからないように
夜の闇に紛れて
僕ら いつもそうだった
人目を避けるため
新月の晩を選んで
まるで罪を重ねていくように
二人だけの時間を刻んできた
いつか二人で
誰の目も気にしないで
太陽の下
手を繋いで歩きたいねって
星空を見上げながら
同じように描いていた夢
ここを出たら
穏やかな海の見える街で暮らそう
君が焼いてくれたパンと
淹れてくれたコーヒーの香りで
毎朝目覚めて
仕事を終えたら
寄り道なんかせずに
真っ直ぐに君の待つ家へ帰るんだ
休みの日には
公園へ出かけよう
高台にあるはずの
海が見渡せる公園へ
お弁当
僕が作って見るからさ
そこで今週あったこと
話しきれなかったこと
たくさん話そう
そうやって過ごした最後は
夕日が水平線の向こうに沈むまで
ベンチで寄り添って眺めていよう
夕焼けに染まっていく海と
僕らの住む街を
静かに眺めていよう
そんな夢を語り
子どものようにはしゃぐ僕ら
そんなことできないのにねって
不意に君の頬を伝った一筋の涙が
僕らを現実に引き戻す
どこにも行けない
行けるはずないから
こうして
隠れるようにしてあっているんだって
だけど
大丈夫だよって
僕は君の頬にふれて
流れた涙を拭い取る
どこにも行けない僕らが
それでもこの街で二人で生きていくため
これは必要な時間なんだ
ただ甘い夢に溺れているだけじゃない
僕が頑張れる理由になる
だから僕を信じて
必ず迎えにくるから
こんな夜の闇に紛れて
盗人のようにではなく
昼間 太陽の下
正面から胸を張って
必ず君を迎えにくるから