ダリア到着!
途中に出てくる嫌いな男のタイプは作者のものではありません。本当です。
ノアとルミは、ダリアの中央部・女神像広場で待ち合わせをすることにしていた。
女神像広場とは、その名の通り、10mほどある女神の像がどどーーんと立っている広場のことである。女神像の周りは季節の花で埋め尽くされていて、とても華やかだ。また、各所に置かれたベンチには、同じようにここで待ち合わせをしているであろうプレイヤーたちがいっぱい座っている。
「ルミもう着いてるって言ってたけども…ん~、ルミちっこいからみっかんないよ」
本人が聞いたらシバかれそうな内容だが、本人がいないのでシバかれない。
とりあえず露店に寄り、持ち前の愛嬌で、一本分の値段で二本のチュロスをゲットしたノアは、さらにうろちょろする。
そうして、ようやくルミを見つけた…が、ルミの隣にはノアは知らない男がいる。いやまぁノアの場合は忘れているという可能性もめちゃくちゃ高いのだが、今回は本当に初対面だった。
だが、まぁ。やることは変わらない。
「るぅぅぅぅぅぅみぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
えんだああいやあああ、もびっくりの久々の感動の再会である。現実時間ではおよそ12時間ぶりの。
ルミはこちらを見た瞬間、ゲッというような顔になった。ここまでは予定調和である。そしてルミの小さな体へ豪快にダイブ―――
「【回避】!!!!」
できなかった。
「このスキル便利ね。あなたに突進されるのも回避できるわ。当たり所悪いとみぞおちにダメージ入るのよね」
「う…うぐぅ…」
一方回避されたノアは、つまずいて盛大にずっこけた。チュロスは無事だ。代わりに顔面強打した。まぁここの世界では、全年齢向けなので、傷はつかないようになっている。あるのはHPの概念だけだ。
「ルミのいーーじーーわーーるーーー!!!!」
「やめなさい!人様の前で恥ずかしい!!」
転んだ体勢のまま足をじたばたさせるノアの頭を軽くはたいて起き上がらせる。
ルミは、一緒にいたらしい男に向かって「お見苦しくてすみません」と頭をさげた。
「いや…別に、なんとも」
言葉少なに返した男は、ルミと比べると随分背が高かった。頭三個分くらい違う…いや言い過ぎた、でも二個分は違う。なにせ、ルミの背丈はギリギリ男の肩に届いていない。
男は、ルミやノアとは同い年くらいだろう。青みがかった灰色の短い髪の毛は癖っ毛で、すこしウェーブを描いていた。初心者装備は、ちょっと動きやすく改造されたような鎧で、背中には同じく初心者装備であろう銅の大剣が背負われていた。
切れ長の目に、暗い灰色の瞳。鼻筋が通っていて、クールな男前だなと思った。美形というより、男前。
そして何より、口元では鋭く大きな八重歯が強く主張していた。
「うわぁ、吸血鬼さんだ~!ルミの知り合い?」
「えっと…さっきちょっと面倒な人間から助けてもらったのよ」
へぇ~、とノアはチュロスをかじり始めた。うまし。
チュロスを受け取ったルミは、男に「半分要ります?」と訊く。男は無言でうなずいたので、ルミはぱかっとチュロスを割って、少し多いほうを男に渡す。
もちょもちょと食べ始めたルミが少し困ったように笑って、説明し始めた。
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ここについたのは、5分くらい前ね。それで、あの女神像の前のベンチで待っていたの。
そしたら私が苦手なタイプの男たち…えぇ、あなたならそれでわかるでしょ、海谷絵音みたいな顔と髪型していて、なんか真夏でもニット帽被ってそうな人たち…そんな感じの人たち三人組に声かけられたのよ。
この羽が珍しかったのね。えぇ、幻翼族の。あ、そういえば色々あって使えるようになったわよ。まぁ軽くイベント踏んだのよ。え?どんな装備ゲットしたか?
…あなたと一緒にしないで頂戴。
その三人組の中に、一人有翼族の人がいたの。
それで、羽小さいのはバグ?可哀そうだね?お兄さんたちと一緒に選びなおす?一応βプレイヤーだからどの種族がいいとかわかるよ?…思い出すだけで悪寒がするわ。腹立つわね、あの憐れみと欲望の目線。上から目線の男なんて嫌いよ。あと笑い方が気持ち悪かったわ。馬鹿にしているようで。
こら、ノア。女の子がそんな顔するんじゃありません。
最初は丁重にお断りしていたのよ。…え?そんな丁重に扱うからつけあがる?
…至極もっともね。今度から善処するわ。
まぁそれで、しつこく迫ってきて、「友達を待ってるんです」って言ったらじゃあその友達と一緒にパーティー組もうよって言ってきて…さすがにノアを巻き込むのは不本意だから、私だけでパーティー入ったほうがいいかなとか考えていたのよ。…そんな顔しないで頂戴。
そしたら、彼…キルケさんが、私のところに来て、「俺の連れです」って言って逃がしてくれたのよね。運よく私も、友達の性別は言っていなかったから。ありがたく乗らせてもらったのよ。
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「ほんとうにありがとうございました。
今度何かしらの形でお礼が出来ればいいのですが…」
「…じゃあ、とりあえず、フレンド申請していいっすか」
「あ、いいですよ。」
話を聞いていたノアはなるほどな、と思った。
ルミはしっかりものの見た目に反して変態ホイホイな見た目をしている。きゅるっという感じの目や、幼い顔、そして低身長のせいだ。そのくせそこそこに胸はあるので、より変態が集まりやすいのだ。ノアのお胸事情?…推して知るべし、である。
そのうえ、ルミはなかなかにお人よしなので、変な人に連れ去られないか、ノアはいつも不安である。
意外なことに、ノアは悪い人への嗅覚はよかった。
き…き…キルト?さん?だっけ?は、セーフだ。
「じゃあキルトさん私ともフレ交換しよー!!」
「…!?」
がっつり名前を間違われ、キルケはぎょっとする。
「すみません!!この子、人の名前覚えるの苦手なんです!!ほんとすみません!!」
「私、ノア!よろしくね!!」
「名乗るのはいいから名前覚えなさい!!!!!」
絶叫にも近いルミの説教虚しく、ノアが彼の名前を覚えるのはしばらく先になるのであった。
「じゃあ、私たちはこれで…キルケさんは、どなたか待っているのでしょうか」
「ん?あぁ…友人と」
と、言うと、なぜかキルケはばつが悪そうな顔をして、少し目を逸らした。
「?きなんとかくんどしたの?」
「…待ち合わせ、しようとしたら、約束、明日だった……」
「…………………」
「さっき気づくまで、こっちの時間で1時間近く待ってた……」
「「……………………」」
ノアとルミは顔を見合せた。
ノアがこそこそとルミに話しかける。
「ねぇ、この人もしかしてバ……」
「天然と言いなさい、天然と」
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「これが転移石か~」
女神像広場から少し歩いたところ、友好記念議事堂という建物の前に、ノアとルミはいた。
友好記念議事堂、というのは、友好関係にある白の王国と赤の王国が、共同で何らかの話し合いやら取り決めをする必要があるときに利用される、いわば国会議事堂にちかいものだ。友好記念議事堂の前は、こちらも大きく開けている。
そんな二人の目の前には、2mほどもある青色のクリスタルが、40㎝くらい浮いた状態でゆっくり回っている。
「最初のミッションはこれに触れる、ということね。ここ以外で一度足を踏み入れた都市は、転移石に触れなくても自動で登録されるらしいわ」
「はえ~」
まぁ確かにいちいち転移石を探して触んなきゃいけないのは面倒か、と考えた。ご都合主義と言われようとも、時にはリアリティよりゲーム性を優先させねばいけない時もあるのだ。引っ張ったら自動でセットすることが出来る矢のように。
「じゃあ触るか!せーの、で触る?」
「そうしましょうか」
「じゃあいくよ!せーのっ!」
リンゴーン、と頭の中で鐘の音が鳴る。
二人それぞれの目の前に、ウィンドウが現れる。
MISSION 0 友好記念都市ダリアの転移石に触れる。
CLEAR!!
クリア報酬
スキル交換チケット 銅
5000マタ
「あ、なんか貰えた~!!」
「スキル交換チケット…さっき私、金ってやつ貰ってたわね。」
「あ、そうだ!!ルミの方もなにがあったか教えてよ~!!」
「はいはい、わかりました」
せがんでくるノアに対して、ルミは万年桜の丘での出来事をかいつまんで話をした。
「へ~ちっちゃいこ助けるためか~ルミらしいね~」
「結局幽霊だったけどね…そうそう、今度、ある程度おちついたら万年桜の丘いきましょ、すごい綺麗だったから。」
その言葉に、ノアはぱああと顔をきらめかせ、「いく!!!」と飛びついたのであった。ないはずの犬の尻尾と耳が見えた。たぶんチワワの。
「ノアの方は何があったのよ、あんな化け物装備…」
「んとね、話すとアバター設定のとこからの話になるの」
「はい?」
困惑するルミをよそに、ノアは、アバター設定でアリスに会ったこと、マリアベルを探索中、羊のおばあちゃんに会って、世界を救ってアリスに会いに行く、と約束したこと、そのついでに件の終盤コンテンツ装備を貰ったことを話した。
ルミは頭を抱えてうずくまった。
「いやあんた…なんでアバター設定のナレーションさんと仲良くなろうと…てかその約束してトッププレイヤーになる気…ていうかそもそもアリスって女神様の名前じゃ……」
「え!!!???アリスって女神なの!!??…でも、いろんなとこにある女神様のオブジェとは全然違うよ?」
「そうなの?じゃあ名前が同じだけで別人かもしれないわね…でも、ナレーションだったんでしょ…」
二人はうーんと首をひねるも、答えは出なかったのだった。
まぁそこはおいおいストーリーを進めていればわかるだろう、と、一旦結論付けたのだった。
「それじゃあ、スキル交換してみる~?」
「そうね、あそこのベンチに座ってやりましょ」
そう言って、ノアたちはスキル選択に興じるのであった。
ちなみに、スキル交換チケットは四つのランクに分かれており、ランクが下から順番に、銅、銀、金、虹、となっている。それぞれでレアリティとスキルの威力が変わってくるのだ。
たとえば銅なら、チュートリアルの時点でゲットできる初期スキルのみである。
銀ならば、初期スキルの一つ進化したもの、金と虹は、初期スキルの進化系以外にも、強力なスキルがある。
そして、それぞれが選んだスキルはこうだった。
ノア
銅チケット【ウィンドカッター】風属性初級魔法
ルミ
銅チケット【MP自動回復】10秒毎に[スキルレベル]ptだけMPを回復する
金チケット【鷹の目】遠方(自身を中心にして半径[スキルレベル]×30m)にいるターゲットを確実にとらえる
「え、ルミ、【MP自動回復】つかうの?」
「【顕現】がMP必要なの。出来ればMP気にせずに使いたいからね」
「はえ~」
ちなみにノアが【ウィンドカッター】を選んだのは、「風ってエルフっぽくない?」だからだそうだ。
そんなノアは、うずうず、という風にルミに詰め寄る。
「ねぇそろそろ聖女セット着てみていい~~??」
ルミは一瞬悩んだ。あの化け物装備を着ていてノアがトラブルに巻き込まれやしないかと。
しかし、当のノアは「羊のおばあちゃん」とやらに世界を救うと約束してしまっていた。すなわち、トッププレイヤーの一員になると。
はぁ、とため息をついて、ルミは道連れになる覚悟を決めた。
「…わかったわ、私も手に入れた装備着てみるから」
わーい!!と嬉しそうにノアは装備設定をいじっていく。ルミもぽちぽちウィンドウを操作する。
すると、キラキラとした光に包まれ、二人の装備はガラッと変わった。
ノアは、地味なローブとすぐにポキッといきそうな木の杖から、金色の刺繍が綺麗に施された白いローブと宝石があしらわれた豪華な金色の杖に。
ルミは、地味な色合いのTシャツとショートパンツ、そして木の弓から、桜をあしらった黒と藍のミニスカートの改造着物と瑠璃色の弓に変化した。
「うわあああルミ、かわいい!!」
「あぁそりゃどうも…あなたは黙っていれば聖女様、って雰囲気ね」
「ほんと?うれしい!」
「あんま褒めていないのだけれどね」
かくして、ノアとしては念願の脱☆初心者装備を果たし、ルミの頭痛はひどくなるのであった。
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ノア
プレイヤーレベル:4
種族:エルフ族
職業:聖職者/魔法使い
武器:聖女の杖
装備:普通のワンピース(白)、聖女のローブ、聖女のブーツ、聖女の盾
STR 5
INT 80.5
VIT 50
AGI 4
DEX 15
LUC 67(1~100の間で毎日ランダムに変動)
スキル
【魔法CT短縮LV.3】【ヒールLV.4】【チアアップLV.3】【ライトニングLV.4】【ダークエッジLV.4】【MP自動回復LV.3】【聖女の矜持LV.1】【聖域展開LV.1】【加護LV.1】【MPタンクLV.1】【ウィンドカッターLV.1】
ルミ
プレイヤーレベル:7
種族:幻翼族
職業:弓士/暗殺者
武器:夜桜の弓、銅の双剣
装備:夜桜の衣、夜桜の下駄
STR 42
INT 6
VIT 13
AGI 50
DEX 24
LUC 84
スキル
【顕現LV.2】【クイックアローLV.4】【スナイプショットLV.4】【回避LV.5】【隠密LV.3】【スラッシュLV.3】【陽炎LV.1】【敏捷LV.1】【花に嵐LV.1】【MP自動回復LV.1】【鷹の目LV.1】
ダリア編終了です。
次回と次々回幕間挟んで、神聖都市マリアベル編に移ります。
ちなみに、ノアの「聖女の盾」は、左腕に着ける巨大腕輪みたいな感じです。(もうちょっといい表現なかったのか)
こう、剣が来たら腕で受け止める感じ。
なので装備としては武器としてではなくアクセサリーとしてカウントされます。




