手を取り合って
ストック切れそうで私キレそう
(ここで大歓声)
「!?まずいよお姉さん、これ毒みたい!!
微量だけど確実に削ってきてる、持久戦はできないよ!!」
「ナンダッテーーー!!??」
ツバサの読み通り、これは毒である。
まだ放ち始めたばかりで毒の効果は薄いものの、無視はできないダメージだ。そして今後礼拝堂全体に充満すればそのダメージ率はさらに上がっていくだろう。
ハッと気づいたノアが、声をかける。
「とりあえず、うんと、ツバサくんとばたぴは私の近くに着て!!」
「え、なんで突然…」
「いいから!!!」
その真剣な様子にツバサとバタピーは何も言わずにノアの側まで近づく。
そうしてツバサとバタピーを近くに寄せたうえで、ノアは聖女のブーツを履いた爪先で軽く地面をタンと鳴らす。
「【聖域展開】!」
すると、ノアを中心に金色の魔法陣が展開される。半径は3m程度だ。その魔法陣のいたるところに女神アリスの方の宗教のシンボルであるダイヤのマークが散りばめられていた。
「これでちょっとは毒のまわりが遅くなるはず…ルミごめんね!!【ヒール】は優先的に回すから!!」
「いいのよ!!機動力は必要だからあああああこっち来ないで頂戴気持ち悪いわね【クイックショット】おおおお」
【聖域展開】は魔法陣内のプレイヤーの状態異常耐性を上げるスキルだ。基本動かない方針のノアとツバサ、そしてバタピーは聖域に固まっていれば毒の影響は弱くなる。
しかし、あちこち飛び回って攪乱している…現に腐って黒くなったユーカリに追い回されて絶叫しているルミはそうはいかない。
申し訳ない、がそこは【ヒール】で埋め合わせするしかないだろう。
『ふははは…そんなに固まっていたら、狙ってくれと言っているようなものだなぁ!!??』
そう言ったベクソンは、銀のユーカリのメイスを3人に向ける。
すると、ベクソンの背後から丸いユーカリの葉を模したような刃が100ほど現れ、乱雑に無秩序にとっ散らかり、3人に襲い掛かる。
「うわあ!いてててて」
「させねぇよ!!死ぬかもしれねぇけど、【ヘイト】!!!」
バタピーが【ヘイト】を発動させると、ばらばらになっていた刃が一か所に固まり、バタピーめがけて飛んで来た。
「!!ばたぴ、集めてくれてありがとう!!【ウィンドカッター】!!!」
一か所に固まったユーカリの刃に向かって、ノアの風の刃が放たれ、刃のおよそ半分を消し飛ばす。
しかし、残りの半分はバタピー一人をめがけて襲い掛かる。
「うおおおおおいてえええええ!!!でも助かった!!うおお
…あ!俺HPポーション使うから【ヒール】はルミちゃんに使ってやってくれ!!」
「わかった、ありがとうばたぴ!!
ルミ!【ヒール】!」
なんとかHPを30%残して耐えきったらしいバタピーはHPポーションの瓶を割り回復する。
そしてノアは、毒と何度か攻撃にあたってしまったしまったらしくHPが20%を切ってしまったルミに【ヒール】をかけた。
「でもやべぇな、防戦一方だからこのままだとジリ貧だぜ!!」
バタピーは焦ったような声を出す。
ノアも困ったように、むぅ、とする。
たしかに、ルミが何とか折を見て【クイックショット】や【花に嵐】などで本体に攻撃を仕掛けることはあるが、毒の充満具合に対して与えられたダメージは少ない。また、ルミの飛行時間の限界も近づいていた。自動回復があるとは言えMPポーションの残りは少ない。
また、この間に一度ミスって【陽炎】の効果も使ってしまっている。
そして、ノアの魔法の多くは敵の猛攻の相殺に充てられている。
しかし、ベクソンのHPはいまだ1/3ほど残っている。
…このままだと、長くは保たないだろう。
「…ねぇ、お姉さんたち」
すると、それまで黙って何かを考えていたツバサがぽつりと話し始める。
「お姉さんたち、10秒だけ、完全にあいつの動きが止まったら仕留めることってできる?…上手くいかなかったら5秒かもしれない。」
「ルミ!!」
「できるわ!!!!5秒あれば十分よ!!」
「だってさ!!!私もできる!!」
その明るい答えに、ツバサは小学生らしい嬉しそうな表情を見せた。
そして、バタピーに向き直る。
「これから詠唱する。お兄さん、1分、ボクを確実に守って。」
バタピーは歯を見せて笑って、親指を立てた。
「おうクソガキ、任せろ!!」
そして、ツバサは魔導書のあるページを開いて、そこに描かれている魔法陣に手を翳し、詠唱を開始した。
「…『むかしむかし、あるところ。明るい笑顔が素敵なお姫様がいました。』」
まるで御伽噺の読み聞かせのような詠唱ではあるが、ツバサの声は真剣そのものであり、抑揚などない。
「っ毒が充満してきてHPの減りが速くなってやがる!」
「【ヒール】!ルミ、大丈夫そう!?」
「当たらなければ大丈夫そう!!」
『小賢しい!!あの餓鬼を潰してやろうぞ!!』
嫌な予感がしたベクソンはツバサの詠唱を中断させるため、再びユーカリの鳥籠を発生させる。今度は腐り果てた鳥籠だ。その枝の密度も先程より大きい。
「させないよ!!【ダークエッジ】【ウィンドカッター】!!」
風と闇の刃が鳥籠を斬り飛ばす。それでも斬り損ねた枝がツバサの肩に突き刺さり、ツバサのHPをごっそりともっていく。それでも、ツバサは動じない。
「っ痛いだろうにこのクソガキ、これ貰っとけ!礼は後でな!!」
バタピーはHPポーションをツバサ目掛けて投げ飛ばす。ポーションの瓶はツバサの纏うえんじ色のローブの上で割れて染み込んでいった。なんとかツバサのHPが持ち直す。
「『王子様はお姫様に問いました、どうか僕の傍で永遠に笑ってくれないかと』」
「もう、こっち見なさい!【花に嵐】!!」
ツバサに少しでも攻撃させないため、ルミはできる範囲で畳み掛けて注意をこちらに向けようとする。
とはいえ無理はできない。今自分が脱落すれば、逆転の目が無くなることは明らかだったからだ。
ルミから放たれた矢は、枝に弾かれるものも多いものの、本体であるベクソンにも何本か突き刺さる。
『この小娘め…グレバティス様に逆らうなど恥を知れ!!!』
「っ【回避】!危ないわね、あとは回避に専念するしかなさそうね…!!」
「っやべっ、HPポーションがもうねぇよ!!」
「うわああ、みんなHP10%切っちゃったああ」
ピンチもピンチ、最早あとがない状態になってしまった。
が、
その時。
詠唱を続けていたツバサが、口を動かしながら、バタピー、ノア、ルミの順番に目を合わせた。
その無言のメッセージをしかと受けとったノアは、表情を輝かせた。
「っよし!!これでいける!!ルミーー!!」
「わかったわ!!!」
その声を受けたルミは、急激にその高度を上げてゆく。
バタピーは、大盾をもう一度構え直した。
ツバサの詠唱は佳境に入る。
「『────これを呪いと呼んだって構わない』」
「ナナツノモノガタリ、【嫉妬の鎖】!!!!!」
そして、突如現れた赤紫色に光る鎖が、大量に蔓延る枝も、葉も、そしてベクソン本人も、全てを一瞬で絡めとった。
『っこんなもの!!引きちぎってくれる!!』
そして、上空はるか20mで大きな羽を広げたルミが、弓を引いた。
「【鷹の目】」
ノアは、杖を掲げ、祈るように叫んだ。
「【STR加護】【チアアップ】!!」
「ありがとう!【妖桜】!!!!」
ノアの膨大な火力を乗せ放った矢は、【鷹の目】の効果で、真っ直ぐ、真っ直ぐ進んでゆき、正確にベクソンの心臓に突き刺さった。
『ぐはあっ!!!』
ベクソンが吐血する。
それと同時に、ツバサのかけた鎖が粉々に砕け去った。
鎖から解き放たれたベクソンは、怒りをぶつけるように上空で膠着するルミを枝で叩き落とし、ノアの胴体を枝で突き刺した。
ただでさえHPが少なかった2人がその攻撃に耐えられるはずもなく、揃って光の粒子となって弾け飛んでしまった。
…しかし、ベクソンのHPは、1/4も残っていた。
「そんな!?」
「あああだめだったかーーーー!!!」
最後のチャンスで決まらなかったその絶望に、残されたツバサとバタピーは叫ぶ。
それでも、あと5%程度のHPが尽きるまでは抗ってやろう。
そう思い、確実武器を構えたその時だった。
『あ、あ、 ア』
ベクソンが心臓を抑えて苦しみ始め
そして
「!!!!???」
轟音とともに、ベクソンの心臓から巨大な桜の木が生えてきたのだ。
はじめは苗木程度の大きさだったそれは、ベクソンのHPを吸いながら成長してゆき、やがて、10mもの巨大な桜の木となり、ベクソンのHPを吸い尽くした。
同時に、充満していた紫の毒霧も消え去った。
桜の木の根元で、「なにか」が光の粒となり、消えてゆく。
YOU WIN!
勝利報酬
腐毒 ×5
スキル交換チケット 虹
100000マタ
特別報酬
ワールドアイテム「グレバティス教 経典」
※ワールドアイテムとはACO全体のストーリー、謎に大きく関わるアイテムです。パーティー内で1名のみ所持できます。受け取らなかったメンバーにはスキル交換チケット(虹)が配布されます。
バタピー ツバサ
特別報酬(レベルが遥かに上の相手に勝利したため)
スキル交換チケット 金
レベルアップ
バタピー Lv.17→Lv.30
ツバサ Lv.18→Lv.30
スキルポイントを振り分けてください
「「…」」
「「えええええええ!!??勝ったああああああ!!!????」」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「あいてててて…」
「はぁ…毒のない空気が美味しいわね…」
ここは、神聖都市マリアベルのリスポーン地点である、リデル大聖堂。
王城のすぐ近くにある、マリアベルどころか、白の王国内でもっとも大きな教会である。
枝にばこーんっ、ずしゃーっ、とされてHPを綺麗に散らしたノアとルミは、大聖堂の入口付近のホールに投げ出された。
辺りを見回すと、同じようにリスポーンしたらしい人がちらちらと見え、「あちゃー」というような軽い表情の人も、「お前がやらかした」「いやお前が戦犯だ」と喧嘩している人たちもいる。
それよりも気がかりなのは、果たして【妖桜】が上手くいったか、である。
それが気になって、ノアもルミもキョロキョロとしてしまう。
すると、上空から、あのアリスの声が再び聞こえてきた。
≪使徒の皆様にお知らせいたします≫
≪使徒 ノア ルミ ツバサ バタピー がリュコス遺跡内のシークレットボス、邪族ベクソンを撃破しました≫
≪これは、初の邪族撃破になります≫
そして、ややあって2人の前にウィンドウが現れた。
YOU WIN!
勝利報酬
腐毒 ×5
スキル交換チケット 虹
100000マタ
特別報酬
ワールドアイテム「グレバティス教 経典」
※ワールドアイテムとはACO全体のストーリー、謎に大きく関わるアイテムです。パーティー内で1名のみ所持できます。受け取らなかったメンバーにはスキル交換チケット(虹)が配布されます。
レベルアップ
ノア Lv.31→Lv.40
ルミ Lv.31→Lv.40
「「いやったああああああああああ!!!!!!!」」
そして、大聖堂内に、手を取りあった2人の少女の歓喜の叫び声が響き渡ったのであった。
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