表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Alice Code;Online  作者: 恋歌
白の王国 神聖都市マリアベル
23/40

≪神罰≫≪雪兎≫vs番犬 ケルベロス

ようやーーーく終わります長かった

ノアちゃんルミちゃん空気だねごめんね

反省します


そして、長い通路の狼たちを魔法で一掃し、時折階段を下りてダンジョンを探索していたフッ化水素とらびびの二人はダンジョン最深部へとたどり着いた。

そこには、緋色の大きな両開きの扉があった。扉の中央には、黒い線で三つ首の犬の絵が描かれており、中央の頭の犬は赤色の水晶を咥えている。

β版の時に一度来たことのあるダンジョンだ、勝手はわかっている。この先に、このダンジョンのボスであるケルベロスがいる。


その扉の前で二人が立ち止まれば、二人の目の前にホログラムのモニターが現れる。



◢◤◢◤◢◤◢◤WARNING!◢◤◢◤◢◤◢◤


この先、ダンジョンボスとの戦闘になります。

ダンジョンボスとの戦闘が始まると、パーティー外のプレイヤーとの接触は不可能となります。

また、バトルを途中棄権することはできません。


本当にバトルを開始しますか?


  はい   いいえ



フッ化水素は、迷いなく「はい」に手をかざした。



刹那、ケルベロスが加えていた水晶が、赤く昏い光を放ちはじめ、扉が二つに開いた。

その先では、160cmと大きな三つ首の赤い色の犬…ケルベロスがこちらを飢えた瞳で睨みつけている。




BOSS 番犬ケルベロス Lv.15




「らびび、頼む」

「了解、リーダー?」


「【蹴り上げ】」

軽い調子で答えたらびびは、ケルベロスの前へ勢いよく躍り出て、そのまま三つあるその首のうち真ん中のそれの顎を下から思い切り蹴り上げる。ケルベロスはやや後ろへのけぞるが、すぐさま体勢を立て直し、自身に痛い一撃を食らわせたらびびを獰猛な目つきで睨みつける。

ケルベロスの上にあるHPバーは、通常の敵と違って三本となっており、らびびがケルベロスに蹴りを食らわせた直後、三本のうちの二段目だけが1/5まで減った。

そして、ケルベロスが体勢を立て直すと、そのHPは徐々に回復していく。


「やっぱり3つまとめて全損させないといけないタイプみたい」

「おっけー、でも回復速度はβより遅いかな?そこは調整入ったみたい」

「あれでも十分いいと思うのだけど…」

「βと違ってMMO自体に不慣れな人もいるからじゃないかな?」

「なるほどねぇ」

どうやらケルベロスは、三つの頭を同時に攻撃し、ほぼ同時に3つのHPバーを散らさないと徐々にHPが回復して撃破が出来ない仕様らしい。


「じゃあ僕範囲攻撃の用意するから適当に削っといて、1分あれば十分」

「了解」

そう言ったフッ化水素は旗を地面に突き刺し、詠唱を始める。



ACO内の魔法の中でもレアで威力の高いスキル魔法は、一部発動条件のあるものがある。

HPの残量が条件のものもあれば、特定の魔法が発動済であることが条件のものもあるが、最も多い発動条件は「詠唱」である。



「…『凍れ、凍れ。夜明けの空気は雪よりなお冷たい。』」



詠唱を開始したフッ化水素に気づいたケルベロスは、グルル…と低く唸ったかと思うとフッ化水素に牙をむいて襲い掛かった。

刹那、ケルベロスの背後から真白い影がとびかかり、三つ首の右側の頭の上から殴りかかった。

「だめよ、リーダーの邪魔をしないで?ステイステイ」

強い拳に苦しそうに呻くケルベロスに、らびびは可愛らしい笑顔とは似つかない闘争本能むき出しの真っ赤な瞳をゆがめた。



「詠唱」を開始すると、ウィンドウに映し出された詠唱全文が術者の前に現れる。

この全文を一語一句違わず、噛まずに言い切ると魔法が発動する。一度でも噛めば、やり直しか不発となる。

その間、ダメージを食らっても構わないが、術者はその場を一歩も動かずに詠唱を続ける必要がある。また、ダンジョンのボスなど知能が少し高いモンスターは詠唱を開始すると術者にヘイトが向く。

基本的に前衛がいることが前提の「詠唱」だ。しかし、その効果は非常に高い。



ケルベロスは何度もフッ化水素の方へ向かおうとするも、そのたびにらびびが胴体を蹴り飛ばしたり顎を殴り飛ばしたり、妨害を続けた。

「あー、もうそっち行っちゃだめよ、【踵落とし】」

「ギャウンッ!??」

「リーダーはそろそろね…」

しかし相変わらず棒読みね、早くしてくれないかしら、とぼやくらびび。

…ウィンドウに出ている文章を一語一句間違えず読もうとすると、やはり慎重になって棒読みになるようだ。そもそも、リアルで大学院生であるフッ化水素にとって詠唱がこっぱずかしいの is ある。




「…肺まで凍えろ、【一月の(ジャニュアリー・)吹雪(スノードーム)】」




刹那、ダンジョン内に荒れ狂う突風と雪というにはあまりに細かく鋭い氷。

ACOではシステム上フレンドリーファイア(すなわち、自分の攻撃が味方に当たること)はないが、見るからに凶悪な吹雪に巻き込まれるのは心情的に嫌なのだろう。らびびはぴょんと跳ねてフッ化水素の傍まで戻る。あと、「髪がボサボサになるのは嫌なのよ」とのことらしい。


ケルベロスもまた吹雪から離脱しようとするものの、すでにその足は白く雪が積もり、凍り始めており、うんうん唸りつつも動けずにもがいている。

その間にも、ケルベロスの見るからに硬そうな毛皮を、ダイヤモンドダストのように輝く幾万もの氷の刃が斬り裂いていく。

三つ並んだHPバーはぐんぐんと減っていき、やがて、0になった。



YOU WIN!

勝利報酬

ケルベロスの牙×6

ケルベロスの毛皮×10

ケルベロスの目玉×2 Rare!

3000マタ



粒子となって消えたケルベロス。

そして、まるでスノードームの中のように雪が降り積もるボス部屋の中央に、半径1m程度の銀色の魔法陣が展開された。

その魔法陣の中央に向かいながら、フッ化水素とらびびはニヤリと共犯者のように笑いながらハイタッチをするのであった。


そして、2人の耳にリンゴーンという鐘の音が聞こえた。

二人それぞれの目の前に、ウィンドウが現れる。



MISSION 1 リュコス遺跡のケルベロスを撃破する

CLEAR!!


クリア報酬

スキル交換チケット 銅

5000マタ



それを確認した後、魔法陣…ダンジョンの外へと転送する、通称帰還陣の中央に立つと、二人の前にウィンドウが現れた。



ダンジョンの入口へ帰還します


10


9




やがて、目の前が白い光で包まれて、浮遊感に包まれた。

二人が目を開ければ、そこはダンジョンの入口であった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




ここは神聖都市マリアベルの最西端。




王都とは思えないくらいに家も人もないそこは、奇しくもノアが最初に訪れたあの古い教会の近くである。

そこの整地されていない道に、そこにはあまりにも似つかない、緑色の上等な馬車が一台停まっていた。

デボラの乗る馬車である。



「本当にありがとうございました。フッ化水素様とらびび様には、感謝してもしきれません。」

「私からも、お礼を。まさかメリッサ様と共に歩む、という道があったなんて…」


そう言ってメリッサとスクアードは深々と頭を下げた。美しくゆったりと礼をするメリッサも、ピシッと直角に礼をするスクアードも、なんだか表情は晴れ晴れとしている。

メリッサの宝石のような青色に金色の虹彩の瞳には、柔らかい涙が浮かぶ。

暖かな風が、メリッサの栗毛色の鬘を揺らした。



「いえいえ、僕は何もしていませんよ。せいぜい殿下とスクアード様をここまでお送りした程度です。」

「そうそう!メリッサちゃん、これからもスクアードと仲良くね♡

らびぃ、ずぅっと応援しているから♡

らびぃのことも、忘れないでくれると嬉しいなぁ♡」

きゅるぴんっ☆という音が鳴りそうなウインクをしたらびびに、メリッサは感激したように指を組む。その様子を見て、スクアードは慈しむように微笑み、フッ化水素は苦笑する。




「メリッサ殿下、この後はナトゥーシャへ向かわれるのですか?」

「殿下、だなんて…そのような敬語はおやめください、フッ化水素様。わたくしはもう、ただのメリッサですわ」

「そうよっ!メリッサちゃんは友達じゃないっ!」

「お前はもうちょっと…いやなんでもない」

高貴な身分であるメリッサに対して相も変わらずフランクならびびに、フッ化水素は何か言おうとして…やめた。メリッサがとても嬉しそうにしていたからだ。

…その高貴な身分故に縛られることの多かったメリッサにとって、真に心が許せる相手は少なかったという。それこそ、スクアードとデボラくらいだったらしい。

王族となると、家族も警戒対象となってしまうのだと。





先程のフッ化水素の「ナトゥーシャへ向かうのか」という質問に対して、スクアードが答える。

「えぇ。あそこは砂漠に囲まれた土地ですから、途中パルエラでラクダに乗り換えますが…あなた様方がデボラ嬢にコンタクトを取っていただいたおかげで、メリッサ様もナトゥーシャで穏やかに暮らせることでしょう」

「んもう、スクアード!私はただのメリッサよ、そんな堅苦しい言葉使わないで!」

「あ…そう、だな。メリッサ。」

綺麗な顔でぷんぷんと怒るメリッサに対して、スクアードが少し照れたように笑う。

そんな砂糖もしょっぱく感じるほどに甘々な雰囲気の二人を横目に、フッ化水素とらびびが何かを示し合わせるように目を合わせ、笑う。



…ナトゥーシャと呼ばれる地域は、β版でも明かされなかった。

攻略最前線である彼らは少しでも情報を集める必要がある。

砂漠と知ることが出来ただけでなく、その途中にパルエラという拠点があることも知れた。僥倖だ。



「それでは、本当にありがとうございました。

いつかナトゥーシャに来ることがあれば、何かお手伝いできることがあれば申し付けてくださいませ。」

「ありがとうございます、スクアードさん。しばらくの間は、王都は混乱するでしょうが、こちらでなんとか致しますので。どうか…メリッサさ・ん・と、お元気で。」

その言葉に、再び深々と頭を下げたスクアードは、メリッサをエスコートしながら馬車の中へ乗り込んだ。



かくして、馬車は更に西へと進み始める。

馬車の窓から、メリッサが顔を出して、名残惜しそうな、さみしそうな、しかし晴れやかな表情でらびびに微笑みかけた。

そしてらびびは、それはそれは可愛らしい笑顔で手を振るのであった。



その瞬間、ワールドアナウンスが流れた。



≪使徒の皆様にお知らせいたします≫

≪使徒 フッ化水素 らびび が神聖都市マリアベルの特殊クリアを達成いたしました≫

≪これ以降、マリアベルでは特殊クリアをすることはできません≫





「…あたりだな」

「うん、やっぱりこういうのあったね。」


らびびは、先程までの甘ったるい声と表情から打って変わって、悪女のような顔をしていた。

その変貌ぶりを見て、フッ化水素は思わずぼやく。

「らびび、お前なぁ…いくらこの辺りが過疎ってるからって、誰かお前の信者に見られたら幻滅されるぞ」

「あら、いっけな~~い♡らびぃったら、疲れちゃったみたい~?

甘~いケーキ食べたら元気になるかなぁ?りぃだぁ、食べたいなぁ?♡」

らびびは再び甘ったるい顔になり、高くて舌っ足らずな声を出しながらフッ化水素に上目遣いでうるんだ瞳を向ける。

「…そんな声よく出せんな」

「日頃の努力の賜物よ」

「はいはい」

すん、と低くなったらびびの声に、思わず吹き出しそうになるのをこらえる。



ぴろりん



「ん?」

「特別報酬かなんかじゃない?」

電子音が聞こえたかと思うと、二人の目の前に大きなウィンドウが現れた。




マリアベル特殊クリア報酬

100000マタ

HPポーション×10

MPポーション×10



ユニークスキル【愛の化身】

※パーティーで一名しか受け取れません

※受け取らなかったパーティーメンバーにはスキル交換チケット 虹が配布されます。





「ユニークスキル…僕からびぃのどっちかしか取れないのか」

「どう?ほしい?」

「効果見ないことにはわかんないだろ…」


と言いながら、【愛の化身】の詳細を見る。




…………




「…これは、お前向きだな、らびぃ」

「だねぇ、ACOで私以上にこのスキルが似合う()もいないでしょ」

「と、いう訳でこれやるからケーキはなしな」

「最低」

らびびにじろりと睨まれたフッ化水素は「あぁ怖い」と震えて見せるのであった。




ぴろりんぴろりん


「…あ、shumaとシオンからだ」

「あら…shumaくんたちワールドクエスト進めるの遅れちゃったわね」

「…特別手当出しておくか」



shuma

リーダー、らびぃ、お疲れ!!


シオン

あーーーーーー俺もケルベロス行きたかったのに畜生!!リーダー!!!『すずめ亭』のオムライス奢ってくれよ!!!なぁ!!!!!


shuma

あ、ぼくも食べたいな!!




「…というわけで、これから『すずめ亭』のあるダリアに戻ります」

「りぃだぁ、らびぃも食べたいなぁ♡」

「お前はダメ」

「ちっ」


そう舌打ちするらびびが、ふと柔らかい表情で呟いた。



「メリッサちゃん、本当によかったねぇ」



普段は悪女のような、同性に嫌われそうな性格をしているらびびの、おそらくは本心からのその呟きに、この少女の本性を見たような気がしたフッ化水素であった。





すずめ亭は、友好記念都市ダリアにあるプレイヤーにもNPCにも評判のレストランです。

VRの中でも美味しいものが食べられます。もぐもぐ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ