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Alice Code;Online  作者: 恋歌
白の王国 神聖都市マリアベル
17/40

白の王女様

遅くなってすみません…期末テストがあったのです…落単は回避しました…



フッ化水素とらびびは、先程とは違う騎士に連れられ、長い廊下を歩いていた。


廊下の床は白と青のモザイクタイルになっており、透明度の高い一面の窓ガラスの枠は、銀色で繊細な装飾が施されていた。

この白の王国のイメージカラーは、白、青、銀、である。

らびびが「綺麗ね~」と観光でもするようにつぶやく一方、フッ化水素は「実家にある皿に似た色合いだな」というなんとも味気ない感想を抱いていた。

ちなみに、実家ではその皿にヨーグルトを入れることが多かった。


一面の窓ガラスの向こうは、とても美しい庭になっている。

白いバラの生け垣はよく手入れされており、庭の中央にはお茶会が出来そうなスペースがある。そこには、麗しい女神アリスや、天使たちと思しき像も置かれている。

「白の王国は宗教国家、という感じだな」

「えぇ。白の王国の国民は信仰心の深い気質ですから、各都市や村には必ず教会があります。」

「そうなんですねぇ~。女神様、本当にお綺麗です!」

一応フッ化水素に釘を刺されたらびびは、全力全開のぶりっ子モードはやめているが、それでもあざとかわいい声で、こてん、と首を傾げる。

騎士はそんならびびに見とれてしまっていた。

「そ、そうですね…」

フッ化水素はその様子を見て、思わず遠い眼をするのであった。




「こちらに国王様と王妃様がいらっしゃいます。高貴な方々ですので、使徒様といえど失礼のございませんように。」

騎士は、ひときわ豪華で大きな銀と白のドアの前で立ち止まった。

フッ化水素は、背筋をピンと伸ばし、らびびは小さく深呼吸をした。



少しずつ、扉が開いていく。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「よい、面を上げよ。そなたたちの名前を教えてくれ」


玉座の間で跪く二人の使徒…フッ化水素とらびびに、穏やかながらに威厳のある声が掛けられる。

顔を上げれば、そこには銀髪の中年男性がいた。

顔には苦労の数だけ皺が刻まれているものの、目尻の皺だけは、苦労によるものというより、家族や国への慈愛によるものなのだろうとわかった。


そしてその瞳は深い青色で、虹彩の部分だけキラキラとした金色になっていた。


この特徴的な虹彩を持つ瞳は、王族特有のものであるという。

実際国王陛下の横に佇む、ふんわりとした雰囲気の王妃陛下の瞳は、一般的なエメラルドの色をしており、虹彩だけ色が違う、なんてこともない。



国王を見上げたフッ化水素が口を開く。


「はい、僭越ながら申し上げます。

私は魔法使いのフッ化水素と申します、こちらは私の仲間のらびびです。」

「らびびです、どうぞお見知り置きを。」

フッ化水素の紹介に合わせらびびはカーテシーをする。先程までのぶりぶりした雰囲気とは一転した、まさしくお嬢様のそれである。


「では、フッ化水素、らびび。お前たちに王命を下す。

このマリアベルの西に、国の重要な遺跡がある。革命時代からの遺産だ。

しかし、ここ最近そこに邪のものの手が伸びてだな…恐ろしいモンスターたちが棲みついたのだ。

他の使徒も既に向かわせているが、モンスターたちは無限に湧いてくる。どうか、モンスターを討伐してくれ。」


この世界では、モンスターのことを「邪のもの」と呼び、魔物とは言わない。この世界では「魔」は悪では無いのだ。

主要種族に魔族がいることからもそれは伺える。


そして、国王からの頼みはやはりβ版の時と変わらない。

2人の答えは決まっていた。



「「御意」」




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「内容は変わらないのね」

「うん、だから多分モンスターのボスもケルベロスで変わんないよね」

謁見の間を出て、2人は元の道を引き返す。

騎士に先導され、先程の一面ガラス張りの廊下を進んでいた。



「…ん?」

歩きながらガラスの向こうの中庭を見ていたらびびが、はたと足を止める。

「らびび、どうしたの?」

「ん…いや……」

少し考える素振りを見せたらびびは、先導する騎士に向かって首を傾げる。


「騎士さぁん、この白いバラの中庭、すっごく綺麗ですねぇ♡」

「えっ、あっ…はい。亡き先代の王妃様が白い薔薇をこよなく愛しておりましたので、この中庭には力を入れております。」

騎士が顔を染めたじろぎながらも、生真面目に答えるのを聞いて、らびびはずいっと近づき、顔を近づける。

「へぇ、素敵なお庭ですね♡らびぃも見てみたいなぁ〜…

あ、いいの!お城のお庭なんて、尊い身分の方しか入れないのは、らびぃもわかっているから…」

そう言って、らびびは兎の耳をしゅんと垂れさせる。

器用なこった…とフッ化水素はらびびをジト目で見た。


しかし、らびびが急にこのような言動を取るのには訳があるのだろう。

らびびは、目敏い女だ。


らびびが瞳を寂しげにうるうるさせれば、真面目な騎士様は「女性を悲しませてはいけない…!」とおろおろしてしまう。


正直チョロい気もするが、仕方ない。彼は若かった。


「あー…わ、わかりました。少し、少しだけなら。あと、薔薇やオブジェにはお手を触れないでください…」

陥落した。らびびは「ありがとう〜♡」と言ってパッと騎士から離れる。

そして、フッ化水素に、悪女のように勝ち誇った視線を送るのであった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




中庭に入るや否や、らびびはガバッとフッ化水素の腕をとり、自身の腕を絡ませた。

「りぃだぁ♡あっちいこ〜♡」

「おいやめろ…」

「黙って合わせとけボンクラ」

どうやら恋人のふりをしろ、ということらしい。しかしボンクラとは解せない。理不尽だ。

騎士の方を見れば、ややショックを受けた様子ではあるが、自分たちに気を使って距離を取ろうとしている。


腕を組んだらびびは、フッ化水素を連れてずんずんと奥の方へ向かっていく。

「ちょ、らびび、何を…」

「シッ、黙って」

フッ化水素が説明を求めようとすると、らびびはぷっくりした唇に、ピンと立てた人差し指を乗せる。

そうして一際大きなバラの木の陰に隠れるらびび。フッ化水素もそれに倣って隠れる。


らびびは、向こうにある周りを背の高いバラの木に囲まれたお茶会スペースを指さす。

「何…あ。」


そこには、一組の男女が何やら真剣な雰囲気で語り合っていた。



「ですから、殿下…ここを出てどうやって生活すると言うのですか…!

…ハグリッド様は、お優しい方です。殿下を幸せにしてくれます。」

「…っスクアードは、私のこと愛していないのですか!?」

「愛しておりますとも!貴女と添い遂げられるだけの力と、身分があれば、どれほど良かったか…!」



スクアードと呼ばれた男は黒い背広を着ており、若葉のような緑色の髪を後ろに撫でつけている。背中を向けているのでこちらからは顔は見えない。


一方、「殿下」と不穏極まりない呼ばれ方をしている女性は、見るからに高価な水色のワンピースを着ており、髪は緩いウェーブを描く銀髪で、ハーフアップにしている。



そして、何より。


女性は、青色の瞳と金色の虹彩を持っていた。




「…あの目は王族だね」

「ビンゴね」

なるほど、と感心するような声のフッ化水素に、らびびはフン、と勝ち誇ったように笑う。

「らびび、君はこのまま監視を。僕はシオンとshumaに連絡をする」

「あいあいさー、リーダー?」

フッ化水素がウィンドウを開きながら言えば、らびびは意地悪な蛇のように舌なめずりをする。



男女はまだ、フッ化水素とらびびには気づいていない。


「でしたら、私を連れ出してくださいませ、スクアード…」

「ならばどこへ、どこへ行けば良いのですか!

私たち二人の関係はデボラ様の他には誰も知らない、知られては行けない。その状況で、どうやって…

私だって、愛しい人が、別の男に嫁いでいくのを見送るのがどれほど耐え難いことか…!」

「…デボラに、連絡をすれば…」

「っ、デボラ様は現在、馬車の事故で脚を怪我しておられます。いつものように王城に出向いていただくことは不可能です。」

「手紙は、出せないのですか…?」

「…貴女の、そして貴女宛ての手紙は、必ず検閲されます。私が直接出せば良いのでしょうが、私はこの王城を離れることはできません…」

「そんな…」

悲壮感を漂わせ、はらはらと涙を流し始める女性。

そんな彼女を、男性は、壊れ物を扱うように優しく抱きしめた。


「お力になれず、申し訳ございません…メリッサ殿下…」




らびびは、連絡を終えたらしいフッ化水素と目配せをすると、木の陰からぴょこんと飛び出した。


「まだ諦めるのは早いよっ、2人ともっ♡」



突如声をかけられ、女性は怯えたように体を縮こませ、男性は腰に下げられたサーベルに手をかける。

「…名を申せ。ここに入る許可はとっているのか。」

男性の青色の瞳(当然、虹彩に色は無い)でこちらを睨みつけてくる。

怯まないらびびと男性の間に、穏やかな雰囲気のフッ化水素が入る。

「お邪魔して申し訳ございません。入城の許可は得ております。許可証はこちらに…

私どもは、女神アリスの使徒にございます。

私はフッ化水素、魔法使いです。こちらは…」

「らびびです!らびぃって呼んでねっ♡」


自己紹介を聞いた男性は、サーベルから手を離し、少し訝しげではあるが礼をする。

「使徒様にございましたか、これは失礼を。

…なぜ、ここに。先程の話は聞いていたのですか」

「えぇ、それはもうばっちりと」

穏やかな笑みで告げるフッ化水素の言葉に、男女の顔がサッと青くなる。

「っどうか、どうかこの事は内密に…!

それかせめて、メリッサ殿下だけは…全て私の独断で!!」

「やめてスクアード!!…っ全て私の責任ですわ。スクアードにはなんの罪もございません!」


お互いを庇うようにする2人に、ぴょこぴょこと飛び出てきたらびびがにっこりと笑う。

「わかった、内緒にしてあげるっ!

だけど、1つお願いしてもいいかなぁ?」

きゅるん、としながら問うらびび。女性…メリッサは、身を固くする。

「っ…なんでしょう」

らびびは、より笑顔を深めて言った。



「お友達になってくださいな、白の王女サマ?」





しばらくフッ化水素&らびびターンです。

この作品は、一応メインヒロインはノアとルミですが、その他のプレイヤーにフォーカスを当てることも多いです。群像劇みたいな感じになりますかね。

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