追憶 スラム街の少年
ブクマしてくださった方ありがとうございます!!
今回短めな上にようわからんと思いますが見捨てないでください!!
その人族の少年は、スラム街で目を覚ました。
強烈な生ごみの臭いに思わず顔をしかめる。
少年が毛布の代わりに纏っていたぼろきれは薄汚れていた。
立ち上がると、あたりには彼以外に人はいなかった。―――代わりに、腐った肉と化した人であったものはあったが。
少年は自分の姿を確認する。上はサイズが小さすぎるTシャツに、下はぶかぶかすぎるズボン、という格好だった。ウエストは適当なひもで結んでいて、上下ともにひどく汚れていた。顔にも先程もまで寝ていたところの土がついており、靴は履いていない。
彼は荒れた土地を裸足のままふらふらと歩き始める。
何が起きてるのかもわからないが、とにかく歩く以外に彼にできることはなかった。
「生きているものがいたのか」
ふらふらと歩いていた彼の後ろに、突如男の影が差した。
振り返れば、背の高い険しい顔の男がいた。黒いフードを被り、紫色の魔族の目でこちらを睨んでいる。ばたばたばた、とマントが揺れる音がする。
「…お前は、誰だ?ここではなにがあった?」
少年は、少しその男に気圧されつつも問いかける。
「我が名はエグゼウス。
なにがあった、という話だな。ここのスラムの民が使う井戸があるだろう。昨夜、貴族連中がそこに毒を投げ込んだ。遅効性で朝を迎えるころに体が腐って死ぬ毒だ。ここの土地を一掃して貴族用の庭園にするつもりらしい。
…すまない、情報を手に入れるのが遅れたがために、そなたの家族や仲間を守れなかった」
「仲間とか、家族とか、わからないんだけれど」
「そうか」
短く答えたエグゼウスと名乗る男は、少し思案した後、少年に手を差し出した。
「革命軍へ来い。一兵卒としてだが、衣食住は保証しよう」
「…革命軍」
あぁ、とエグゼウスは頷く。
革命軍というのがどういうものなのかはわからない。
おそらくこの国に反旗を翻す集団なのだろうけど。その集団がこの国では犯罪であり、またそこに参加すれば少年も命の危機があるだろう。
しかし、ここで断ったところで、少年に行く宛などなかった。
ならば選択肢など、少年にはない。
「わかった、お前についていく」
「ならばこれから私はお前よりも上の立場になる。
…私のことは総長と呼ぶように」
総長、まさか革命軍のトップか?
思わず固まる少年に、エグゼウスは問いかけた。
「新たな同志よ。そなたの名前は何という?」
少年は、決意を固めて拳を握りしめた。
「俺の名は、トーマ。よろしく…総長」
次から、新章「白の王国 神聖都市マリアベル」に入ります。