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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第三章 契りって何ですか?天狼さん。
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血に濡れた箱。

 灯花は、綾女に一つ、疑問を持った。

「綾女さま、綾女さまはずっとここに居たんですよね?私達のことをずっと見ていたんですか?」

話の内容だと、ここに来るまでの道のりを知っている様子だった。

それに、綾女さまはここまでの道を用意したと言っていた。

私達の行動が筒抜けじゃないと、話が噛み合わないはずだ。

綾女は、肩にかかった髪を払った。

「我は、管理者ぞ?入って来た者を見ていて何が悪い?それに、お前たちが我を起こしただろう、それ相応の対処したはずだが?」

綾女さまは、藍色の瞳を細めて言って来た。

「我とて、睡眠は取るぞ?」

あっまずい…

「そ、そうなんですね!すみません。そんなつもりで言ったわけではないんです。いやその、どこで見ていたのかなと…」

「そんなことか、言わずとも知れたこと」

「もしかして、白猿ですか?」

「そのもしかしてだな、田螺タニシのような脳みその小娘。白猿に渋柿を投げられておったな、随分ずいぶんと下に見られておるな、哀れな小娘だ」

綾女さまは、哀れだと言いつつ、同時に愚かだと言っているようなもだった。

「うぬううぅう…」

綾女さまといい、白猿といい、人のこと馬鹿にし過ぎ!

でも、事実だから言い返せない。

うなることしかできなかった。

私が唸っていると天狼さんが割って入って来た。

「食べ物を粗末にするお前たち方が、賢いとは言えないんだが?他者に頭を下げさせたげれば、それ相応の礼儀を覚えるんだな。愚かに見えてならん」

その言葉に、さすがの綾女さまもぐうの音が出なかった。

「それに、人は礼儀を持つ者には自然と頭が下がるものだ。真に人を想うことで、人は身を引けるもの。綾女、この意味はわかるか?」

「うっ……その、だな…」

天狼さんに問われて、歯切れが悪そうだ。

「譲られておるのだ。譲り、譲られ人は良い巡りをもたらす。人に譲れ。それは、鬼でも物の怪でも、あるいは神でも言えるものだ」

綾女は、天狼にそう諭されて、何も言えなくなってしまった。

天狼は、ひと息をついて、綾女に言葉を伝えた。

「綾女、華鬼はなおにとしての誇りを持ち、慈悲の心を持て…お前だからこそ、華鬼に相応しい」

「天狼…」

天狼さんの言葉で、綾女さまの態度も少しは良くなっただろう。

聞いているこっちまで、泣きそうになる。

譲り合いか…

心に響く言葉だ。

天狼さん…天狼さんはすごい人だ。

優しさが溢れている人だ。

綾女さまは、ちょっとしょぼくれている様子から、反省していることはわかった。

そして、少し寂しそうに懐かしそうに笑みを浮かべて言葉を出した。

「お前は変わらんな…天狼」

天狼さんはその言葉を聞いて、目を見開き、そしてゆっくりと瞼を閉じた。

少し困った表情をし、綾女に詫びた。

「すまなかったな、綾女。いつまでも恐れていて、来るのが遅くなった。…………」

「なに、いつものことだろう?なあ天狼…」

灯花は、この二人の関係が気になった。

「あの~天狼さんと綾女さまは、どうゆう関係でいらっしゃるのでしょうか…?」

恐る恐る、訊ねてみる。

答えてくれたのは、天狼さんだった。

だけど、意外な言葉を聞いた。

「綾女とは、初対面だ」

「え?」

理解できずに戸惑っていると、はっきりと綾女さまから言葉をもらった。

「天狼の言う通りだぞ。我は、白猿を通して視ていたからな、知っていて当然だ。それに、我は天狼が嫌いだ」

「はあ…?」

いやさっき、仲良さそうにしていたのに?

綾女さまと会ってすぐに仲良くなる人柄でもじゃないのに?

怪し過ぎる…

傾げる私に、天狼はくすりと笑った。

「…………」

今の顔は、ずる過ぎる。

そんな顔されたら、身を引くしかないじゃないか!

私は二人の関係にもどかしい思いを抱えつつ、ただ黙っているしかできなかった。


 静かなお庭で、灯花は天狼さんと顔を合わせた。

「そろそろ、帰りますか?」

「そうだな」

小鬼たちの件は、残念な結果となってしまった。

だけど、禁忌の箱の管理者が彼らを悪いようにはしないだろう。

綾女さまは、仕事に忠実だ。

これ以上の悪くはならないと私は思う。

それは、天狼さんも同じことを思っているだろう。

私は、綾女さまに頭を下げた。

「綾女さま、真夜中に出向いてしまって、すみませんでした。えっと、出口までの道、ありがとうございます」

「ふん、全くだ!」

変わらずつんけんしてる。

でも、なんだかんだで言葉に柔らかさがある。

天狼さんも頭を傾け、礼を言った。

「世話になったな。今度会う時、酒でも持ってくる」

「ああ、楽しみにしておく。来るとき穴を開けるなよ、頼むから」

「ああ、心に命じておく」

天狼さん、本当に大丈夫だろうか…

綾女は、ひとあくびして、きびすを返した。

「精々、道中気をつけい。この夜は、鬼が出るか蛇が出るかだが…もうすぐ夜が明けることは伝えておく。迷い子とその送り犬よ」

「…………?」

私には、最後の言葉の意味が分からなかったが、これ以上、綾女さまに迷惑はかけられない。

私は、もう一度頭を下げて踵を返した。

「迷い子か…」

天狼は、その言葉を小さくつぶやいて、灯花の後を歩いた。


 庭から玄関の方へと戻り、敷地を出た。

月が辺りを照らす田んぼ道と戻ることになった。

静かな田んぼ道に入ると同時に、私は天狼さんに頭を下げた。

「天狼さん…その、ありがとうございます!」

綾女さまとの会話のことだった。

綾女さまに馬鹿にされたことを注意をしてくれたのだ。

「さて、何のことかな?」

「ああ!と、とぼけないでください!」

また、ずるいことを!

「天狼さん!私、すごく助かりました。言われぱっなしだったので、すごく感謝してます!」

ずいずいと言い詰めるが…

「なら、次は言い返せるようにかんばれ」

「あっ!」

天狼さんは、するりと私の礼を通り過ぎた。

まるで、気にしてない、感謝することではないと言われているようで…

「もう…」

私は、必死に背伸びしている子供のようだ。

子供じゃないのに…

天狼は、灯花に振り返り言葉を出した。

「帰ろう」

差し出した手は、まるで…

完全に子共扱いじゃないか!

「わ、か、り、ました!」

灯花は、色々言うのをやめた。

しみじみと子ども扱いを堪能させられつつ、田んぼ道へと歩んだ。


 田んぼ道は、来た道と同じで、変わりはなさそうだった。

「わかりやすく、道を開けておくと聞いたんだけど…」

この空間に入って、ここまで一本道だった。

帰りも一本道だといいんだけど…

「見るからに見渡らないな、どうする?来た道を戻るか?」

「そうですね。道が無いんだし…」

綾女さまにもっと詳しく聞けばよかった。

仕方なく、私達は来た道を戻ることにした。

来た道を戻るとオタ面さんとはぐれた場所、トンネルにたどり着いた。

トンネルはコンクリートの壁でかいと一文字が彫られていたはずだったが。

トンネルは再び、闇を広げて私達を待ち構えていた。

奥から、冷たい風が吹いていた。

「道を開いたと言うのは、あながち間違いではないな…」

「そうですね…」

変な道に出ないといいんだけど…

「天狼さん、トンネルに入る前に、一つ聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「オタ、陽炎さんのことなんですけど…」

「言わずとも、信用ならん男だ。始めから、私とお前をここに入れる為と考えた方がいい」

「やっぱりそうですよね…でもなんで…」

「綾女が言った通りだ。それは、陽炎本人に聞いた方が良い。それに、陽炎は隠者だ。目的の為なら平気でうそをつく男だ」

「…………なんか、陰謀すぎて嫌ですね」

「確かに、影ではどう動いているのか気になるところだな…結局、あの小鬼たちは禁忌の箱に何を手にしたかったのか?して、どうやって、禁忌の箱からそれを盗み出そうとしたのか?白猿の資格をどうやって、無効にしたのか?そもそも、小鬼たちは本当にそれを欲していたのか?影に誰かいるのは、伺えるな…」

「天狼さん、天狼さん、それ綾女さまに聞いたほうが良かったのでは?今からでも、引き返せますよ!」

「別に良い。それは、私が関与することではない」

「なんでっ!知りたくないんですか?」

「知りたくないと言うと嘘になるな」

「だったらっ!」

私は、天狼さんの手を取って戻ろうとした。

だけど、いくら引っ張っても、天狼さんの身体はびくともしなかった。

「だがな…関わりを持つだけは避けるべきだ」

「えっ?」

私は、引っ張るのをやめた。

「この件に関わって、危険がないわけがあるまい。禁忌は、生易しいモノではないことを知っているだろう。そして、それを求める者も危険じゃないと言い切れるか?」

「…………」

天狼さんの言う通りだ。

関わるべきじゃない。

でも、釈然としない。

天狼さんは、そんな私の気持ちを読み取ったのか、ぼさぼさ頭を戻すように撫でた。

「だからこそ、綾女や陽炎がいる。あの者らは、禁忌の守護する者。任せとおけばよい。まあ、陽炎は信用できぬが、信用たる理由わけがある」

「それは…?」

「陽炎を禁忌の守護として任命したこと。ただ者には、務まぬ仕事。仕事に務める以前に、人を選ぶ仕事だということだ。陽炎を選んだこそ、信用たる」

「…………」

言葉が出なかった。

天狼さんの深い考えが、私の浅い考えが及ばなかったからだ。

天狼さん、凄すぎる。

「だが、この天狼にうそをついたことは許せんな…あははは」

最後のこの言葉なかったら、いい感じになれたんだけど…

天狼さん、笑いながら(目は笑ってない)トンネルの中に入って行く。

その後ろ姿、マジでパネェエ!


 天狼さんは、手のひらに青い灯を作った。

私達は、青い灯に頼りにトンネルの中を歩いて行く。

トンネルの中は、前に入った時と同じコンクリートの壁で覆われていた。

闇が広がっている空間に、何が出るのか分からない。

私は、自然と天狼さんの袖を掴んでいた。

トンネルの奥は、明りがあった。

何があるかは、行ってみないとわからない。

今の所、蟲の気配は無いが、警戒を解くことはない。

何かあれば、すぐにでも天狼さんが知らせてくれるだろう。

緊張を抱えながら、私達は進んだ。

灯花は、緊張のし過ぎだったか、足元が上手く歩けずつまづいてしまった。

「あっ!」

その時、天狼さんの袖を離してしまった。

膝が着くほどの転びはしなかったが、私の足取りは止まった。

気配に違和感を覚え、言葉を出した。

「えっ!天狼さん?」

天狼さんの袖を離した途端、青い火が消えたのだ。

そして、その場にいた天狼さんが居なくなった。

真っ暗闇だから、わからないもあるが、すぐそばにあった気配が忽然と消えたのだ。

「て、天狼さん!ど、どこですか?」

返事がないことに、だんだんと気持ちが焦ってくる。

暗闇で唯一分かるとしたら、奥にある明かりだけだった。

焦る気持ちを押さえつつ、奥を目指すことにした。

ここで、立ち往生したって一層、危険が増すのだ。

天狼さんがいなくても、歩かないと…

それに、もしかしたら先に行ってしまったかもしれない。

そう思い、震える足を動かした。


 奥へと辿り着いた時、そこは赤い提灯が並べてある洞窟どうくつだった。

明りの正体は、赤い提灯だったのだ。

だが、明りはあっても、そこに天狼さんはおらず、道が狭い洞窟がまた奥へと続いていた。

先ほどのトンネルの中と違って、地面が平ではない。

岩と岩を繋いで出来ているため、歩きにくく、油断をしたら岩の間に足を挟んでしまいそうだ。

「…………なんなのよお」

もういい加減、ここから出たい。

その場にうずくまりたい衝動があがる。

だけど、立ち止りは厳禁。

「進まないと…」

灯花は、重い足を動かして洞窟の奥へと進んだ。

洞窟の中に赤い鳥居があり、それを意を決してくぐる。

鳥居の存在がある以上、この洞窟はなにかを祀っているように伺える。

鳥居をくぐった先に、白くて長い、絹ののれんが降りていた。

連の花模様の刺繍が施されており、以前見かけたのれんと色違いの同じものだと判断した。

真っ白ののれんから、微かに風が吹いていた。

私は、そののれんをくぐった。

そして、その先のものを見て、灯花は驚愕きょうがくした。

「あ…あ、あ…」

心も体も真に震え出し、来た道へと無我夢中で駆け出した。

その足取りは、恐怖で溺れていた。

鳥居を抜けた時、岩の間に足を突っ込んで転んだ。

不思議なことに転んだのに、起き上がり再び足を動かしたことだ。

灯花は、そのまま走り洞窟の入り口まで戻って来た。

入り口は、来た道と同様にトンネルだ。

トンネルの奥も暗闇となっている。

灯花は、ここから離れたくて、暗闇だろうとも構わずトンネル中へと戻った。

暗闇を走る中、急に手を掴まれた。

「いやああっ!!」

灯花はそれを振り払おうと暴れたが、一気に引かれて、身動きできない状況になった。

「灯花!私だ!」

ぐっと抱き込まれて、灯花は力を失った。

「灯花、私がわかるか?」

「て、てんろうさん…天狼さん!」

力強い腕の感触と天狼さんのぬくもりが、一気に切り詰めていたものがほどいた。

「うわあああん!!」

灯花は、泣き叫んだ。

天狼にすがりつき、震えながら思い返していた。

灯花が見たもの、それは…………

真っ白い蓮の花模様ののれんの先には、水が溜まっていた。

大浴場の2つ分の広さで、血のような真っ赤な水が溜まっていた。

鼻を刺す生臭いにおいはしなかった。

鮮血のような水は、流水のように流れ続けているのかもしれない。

そして、水面には頭部だけのオオカミが浮いていた。

そのオオカミは、人を丸のみ出来る大きさで、毛並みが真っ白いオオカミだった。

幸に、そのオオカミの目は閉じていた。

誰かに似ているとは言わない。

灯花は、その光景に驚愕きょうがくし恐れた。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます!

追試前日、話もそろそろ最終になって来てます。

だいぶ、話がややこしくなっているので、分からない点や誤字脱字とか文章間違いありましたら、気軽に教えてください。(*- -)(*_ _)ペコリ


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