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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第三章 契りって何ですか?天狼さん。
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白猿の資格取得。

 天狼さんとオタ面さんとの話で大体の事はわかった。

「まず、天狼さんは、以前の方法でここから出ようとしているんですね」

天狼は、頷いた。

私は、オタ面さんから聞いたことを話した。

「無理にこの世界を壊すと、そこから禁忌の物が出てくるらしいんです」

「そうだな、だが、それしか出る方法が無い」

私は、一拍置いて、言葉を出した。

「私は、その方法は納得できません」

「ふむ、ではどうする?」

天狼は、腕を組んで話に傾けた。

私は、オタ面さんを見た。

鬼の面をしていて、表情は伺えない。

「正直に言ってください。他に出る方法があるのでしょう、教えてください」

私は、じっと鬼の面を見た。

すると、オタ面さんは鬼の面を外した。

黒髪に緋色の瞳、顔には花のようなあざがある。

顔の輪郭は、天狼さんにそっくりだった。

背恰好まで、近い。

やはり彼は、天狼さんと血縁者なのだろうか?

そう思いながら、様子を伺っていた。

「そう睨み付けるな、天狼。これも、主の命だ」

いつもと違う声音で言葉を吐いた。

「資格無き者に、禁忌を手にするなかれ。愚か者に手打ちを」

陽炎は、灯花が持つ硯鬼を見た。

その様子に天狼が、すかさず言い出した。

「相手になるぞ?陽炎」

「いいや、拙者ではない。天狼…相手は、これぞ!」

陽炎は、鬼の面を上と投げた。

「…っ!!」

鬼の面は、天井にいる白猿へと上がった。

白猿は、鬼の面を受け取った。

「陽炎!」

天狼が叫ぶと陽炎は、背にある刀に腕を回した。

「灯花たん、約束は守るぞよ」

「ふぇ?」

いきなりの事でまぬけな声しかでなかった。

「来るぞ!」

天狼さんの声が響いた。

その時、天井から背筋が凍るほど殺気を感じた。

灯花が天井を見上げると、白猿が鬼の面をしていた。

顔が無い白猿が鬼となった瞬間だった。

目録として機能していた白猿が、別の機能を発揮していた。

いきなり、灯花の元にと尖った刃が振り落とされていた。

灯花は、声にならない叫び声をあげた。

そして、この箪笥の空間に鈴の音と打撃の音が鳴り響いた。

「資格が無ければ、会得すればよいこと。簡単な事でござるな~」

オタ面さんの声が聞こえて来て、灯花は自分の置かれた状況を把握した。

目の前には、白猿の鋭い獣爪があった。

その凶器が私にかかることはなかった。

なぜなら、天狼さんが瞬時に刀から刀身を抜いて、押さえていたからだ。

甲高い音が鳴り響くと同時に鈴の音と琴の音が鳴った。

オタ面さんの手から伸びる黒い糸が白猿を捕らえていた。

指を小刻みに動かすと目の前にいる白猿が後方へと引っ張られ、箪笥方へ叩きつけた。

衝撃と反動で、箪笥の引き出しが、飛び出した。

いくつもの重量がある引き出しがこちらへと飛んで来たが、それを天狼が素早く切り捨てる。

陽炎は、白猿に追い打ちをかけるように、背にある刀から刀身を抜いて、抜刀をかけた。

まさに、金棒ように振り下ろし、白猿に一撃を食らわせた。

だが、白猿も鬼。

白猿の手には、鎌が握られていた。

鎌には、鎖と重りがついていた。

灯花には、見覚えがあった。

悪器。

地獄蟲の死骸を幾もの重ねて、作り上げた武器。

ここに落ちて来て、白猿によって召喚された悪器だ。

その武器を使いこなす白猿。

陽炎の一撃は、鎌と鎖によって防がれた。

陽炎は、瞬時に白猿と距離を置いた。

天狼は、灯花を背に置いて、刀を構え直した。

「陽炎、後で覚えていろ」

陽炎は、不敵な笑みを浮かべて言った。

「ご褒美でござる」

白猿は、鎌が付いている鎖を回しながら、天狼と陽炎の様子を伺っていた。

先に動いたのは、陽炎だった。

鈴の音を鳴らし、再び黒糸を白猿に絡めとろうとするが、それも白猿の鎌によって瞬時に斬られた。

鎌の動きがまるで、蛇のようだ。

その滑らかな動きで、黒糸が斬られのだ。

生きてる武器とはこの事を言うのだろう。

黒糸の呪縛を切り裂いて、鎌が向かったのは、天狼の後ろに控える灯花の方向だった。

天狼は、刀身で鎌の動きを弾いた。

白猿は、鎌を己の元へ戻すと、再び鎖を回した。

かい

どこからか、複数の男女の言葉を聞いた。

突然、白猿の元に黒い大穴開いた。

黒い穴は、怖気がする闇一点。

白猿は、回していた鎌を大穴に投げた。

すると、投げた鎌を通じて、大穴から巨大な蟲が現れた。

蟲は、巨大化した蠅だった。

蟲が大穴から這い出ると大穴はすぐに閉じた。

悪器は、地獄蟲を召喚出来るのか。

さすがは禁忌と呼ぶ物。

最悪過ぎて、吐き気がした。

「客を呼ぶとはな…笑わせる」

天狼の呟きが灯花の耳に届いた。

灯花は、その場から動けずにいた。

一歩でも動けば、その身は無事でいられるだろうか?

巨大した蠅が耳障りな音を響かせて、こちらを向いていた。

巨大した蠅の下からは、黒蟲が湧いていた。

わらわらと蟲の蠢く音に不快さを感じた。


 灯花は、急な出来事について行けなかった。

話し合おうとして、なぜ戦闘が始まったのかわからなかった。

今わかることと言えば、私は狙われているぐらいだ。

蟲との目が合ってしまった。

あれは、こちらを獲物として判断した証拠だった。

私は、手元にある硯鬼を持とうとして、それをかすめた。

やばっ!

どうやら、先ほどの白猿の衝撃で、硯鬼を手放してしまったようだ。

この状況で、落としたとなると、迷惑千万。

灯花は、落とした硯鬼を探した。

天狼は、己の中にある炎を練り出し、青の火炎をまとった。

握る刀には、鋭い刃を蟲に向けた。

「早々に終わらせてやろう…」

その瞳は、より鋭く刃の如く獣の眼をしていた。

先に動いたのは、黒蟲の方だった。

群れを引き連れて天狼達を襲った。

天狼は、一線を引くように黒蟲の群れを斬った。

斬れた黒蟲は、その一線に導火し、青の炎となって一瞬で灰となった。

灯花は、青の炎の熱気と灰が舞い落ちる中、必死に硯鬼を探していた。

箪笥の床が荒れていて、所々引き出しが飛び出ていた。

そんなに遠くは飛んでいないだろうと、辺りを見渡す。

「あっあった!」

4、5メートル離れた所に、引き出しと一緒に転がっていた。

その時、子供の声が上がった。

「うぎゃあああー!!」

硯鬼の絶叫が響いた。

「燃えてる!おれっち燃えてねぇ!?」

瓶の中いるから、燃えてないが、青い炎が近くで燃えていたら誰だって驚く。

私は、目覚めた硯鬼の声を聞きながら、とりあえず見つかってよかったと胸を撫でおろした。

そのつかの間に、次の打撃が響いた。

白猿が鎌を使って攻撃をしていた。

それをオタ面さんが刀を使って防御し、黒糸で応戦していた。

天狼さんも巨大した蠅と黒蟲たちと対峙していた。

二人とも、各々敵と向き合っていた。

このままだと、硯鬼は、この戦闘でまたどこか行ってしまう。

…私のすべきことをしょう。

怖がって、うずくまることはいつでもできる。

だけど、今できることは、今しかない!

灯花は、その場から動いた。

硯鬼を手に入れるために、身体を動かしその手を伸ばした。

足元はおぼつかず転んでしまったが、それでも足を動かして硯鬼の元へと向かった。

そして、手元に硯鬼が戻った時には、状況は悪くなっていた。

あとちょっと、動きが遅かったら、飛んできた引き出しに当たっていた。

「やばいやばいやばい!」

「うるせー!このドブスがああー!!」

「あなたもうるさいわよ!このくそガキ!」

再び飛んで来る引き出しに、私はとっさに硯鬼を抱きしめた。

「灯花!」

天狼さんの声が響いた。

来るはずの痛みは、来なかった。

なぜなら、黒霧の地面から、巨大な黒い手が私をかばうように現れていたからだ。

焦げたような肌に紅い鋭い爪をし、人を簡単に握りつぶせそうな指をした鬼の手。

「ちっ!おれ様をしっかり守れ!このブスが!」

どいう吹き回しなのか、私を庇ってくれた。

「はいはい!わかりました!だから、大人しくしててよね!」

ほんと口悪!でも助かった。

私は、片手で瓶詰めの硯鬼を抱きしめて、硯鬼の大きな手に触れた。

人の肌の感触であるが、その硬さに驚いた。

鋼鉄と表現すればいいだろうか?

触れた時に、その重圧を感じた。

「灯花!」

天狼さんの呼び声に、私は反応した。

「天狼さん!」

天狼は、黒蟲を青の炎で対峙しながら、私の傍に来てくれた。

「無事か!」

「はい!大丈夫です。この子がいたから、助かりました」

「そうか」

天狼は、私を一瞥した後、巨大した蠅へと視線を向けて言葉を出した。

「灯花は、そのままそこにいてくれ」

「あっはい!」

私が返事をすると、天狼さんは蠅の元へと走って行った。


 天狼は、灯花の元から去ると、一目散に親蟲おやむしの元へと向かった。

「終わらせると言っただろう?」

天狼は蠅の頭に刀を振り下ろした。



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