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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第三章 契りって何ですか?天狼さん。
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捨てられた硯鬼と理想の天狼。

 自称硯鬼は、急に殺気を出してきた。

それと同時に物がガタガタと揺れた。

戸棚にあった薬品が入った瓶などが揺れに耐えられず、戸棚から落ちた。

次々と割れて行く中で、硯鬼が入っている瓶だけが割れることはなく、瓶の蓋から黒い煙が出るだけだった。

「…っ!」

なんか、地雷踏んだぽい…

「おのれ!おノれ!オノれ!おノレ!オノレ!オノレー!」

揺れが止んだ時には、黒い煙が理科室を覆った。

生臭い臭いが充満して、気持ち悪くなる。

「イヌドモメ!コノケンキサマヲ!ヨクモオオオォォォー!!」

ああ、これやばいかも…

突如として巨大な鬼の手が現れた。

鬼の手は、肌が焦げたように黒く、爪は紅く鋭く、指は人一人軽くつぶせるような太い指をしていた。

それが、こちらに向かって来た。

「コムスメエェー!チヲ!チヲ!チヲオオオォォォー!ヨコセエエーー!!!」

「…っ!!」

とっさに、帯から扇子を取って、鬼の手に向けて投げてしまった。

扇子は、くるくると回転しながら飛んで行ったが、鬼の手の中へと消えてしまった。

何かに当たった感はなく、霧をかすめただけのようだった。

あっやばい!

紅い爪が私の身体に貫こうとした時。

鈴の音と共に、黒い手が真っ二つに割れ、黒い霧状となった。

「ギイエエェー!!」

硯鬼が叫ぶ中。

「うるさいぞ、硯鬼」

私の傍らに、鬼の面をした男が、鈴の音を鳴らしながら刀身を光らせる。

「今度は、枯らすのではなく、業火の火にくべてやろう」

オタ面さんの威圧で、硯鬼がひるんでいく。

同時に室内の黒い煙が晴れていった。

硯鬼は、瓶詰の状態だ。

勝ち目がないのは、明白だった。

「待って!オタ面さん!」

私は、とっさにオタ面さんの黒い尻尾を握ってしまった。

「あぅふん!」

「変な声出さないでください!」

「灯花たんこそ~それは、にぎにぎプレイでござるぅ~」

変なことを言ってくる、オタ面さんを無視して話を振った。

「硯鬼!あなたの封じを解いた、小鬼たちはどうしたの?それと、天狼さんと会わなかった?答えてくれたら、助けてあげる!」

硯鬼は、ひゃっくり上げながら、答えた。

「ヒイック、ヒィイク…テンロウ?テンロウがいるのか!あのテンロウガがああぁ!」

すぐに怒って、話にならない…

「硯鬼に何も言っても、伝わらないでござるよぉ~、今の硯鬼は、ただの干からびた乾物でござるぅ~、力も血臭をばら撒くぐらいしか、出来ないでござるぅ~、それより、灯花たん…早く放してほしいぃ~にゃん!」

なんとなく、毛をむしり取った。

今度は、オタ面さんがおしりを押さえて、泣いた。

「伝わらないなら…」

私は、硯鬼に近づいた。

「コムスメ!あっコラあぁ!」

私は、硯鬼が入っている瓶に触れて、そっと持ち上げた。

触れて見て、特に害はなさそうだ。

見て目通りの瓶の重さで、よかった。

「おれっちをどうする気だ!おいこら!おい!」

私は、瓶を振った。

「あがっ!あがががー!!」

「人の話を聞きなさーい!」

「あがあがあぁー!!」

硯鬼をシェイクしながら、尋問した。

「どうなのよー!天狼さんはどこにいるのよー!」

「し、し、しら、な、い~~!!」

「どこー!」

「ほ、んとう、に、しら、ないんだ~!」

「えっ本当に知らないの?」

振るのをやめた時には、瓶の中にいる硯鬼は、ぐったりしていた。

「あっあらやだ」

やり過ぎっちゃった。

 

 しばらくして、オタ面さんがようやく口を開いてくれた。

「オオカミ使いが荒い娘でござる」

「つい、やっちゃったんです。ごめんなさい…」

素直に謝ったけど、変な事を言うオタ面さんもどうかと思うんだけど…

「あの、天狼さんは見つかりましたか?」

「ああそれが…においが途中で、途切れてしまったのでござる」

「そんな…」

「大丈夫でござるよ、天狼坊ちゃんはそんなやわな男ではないでござる。それに、拙者、きちんと蟲を駆除してきたので、灯花たんは安心するといいぞよ」

「はあ…」

「ところで、それをどうするでござるか?」

「えっ?ああぁ…」

私が持っている硯鬼のことか…

硯鬼は、私が瓶を振って以来、そのまま気絶してしまった。

オタ面さんは、硯鬼を指しながら言った。

「それが、硯鬼の本体であるぞよ」

「えっこれが…」

「見た目が乾物だが、封じを解けば、それこそ完全な鬼となる。それも、血を求め、め歩く、地獄蟲と同様に人に害をなすモノ。今のうちに処分するでござる」

「…でも、小さな子供ですよ?」

「幼い性格だと思ったら、大間違いでござる。それは、人の心は持ってはおらんぞよ。何でも人間の常識に当てはめようとするのは、人の悪い癖でござるな。人食い怪物を人間だと言っているようなものでござるよ。この世にそんな都合がよいことがあるか?怪物は怪物、人間は人間だ」

「…………」

何も言い出せなかった。

まるでこれが現実だと言われているようだ。

オタ面さんは、それを差し出すようにと手を伸ばしてきた。

本当に硯鬼を差し出していいだろうか?

……天狼さんなら、どうするのだろう?

そう思ったその時。

突然、真後ろに気配を感じた。

後ろから私を、ふわりと優しく抱きしめる、何かがいた。

「…っ!!」

「…………」

私の心を見透かしたように、それは答えた。

「灯花の好きにするといい…」

その声は、間違いようもない天狼さんの声だった。

黒スーツ姿の天狼さんがいた。

「…て、んろうさん?」

いきなり、抱きしめられて、思考が止まった。

陽炎かげろうは、その様子を目を細めた。

「あ…あっ…」

「…どうした?私の灯花…」

「なっ!」

近い!

天狼さんの顔が近い!

さらりとした長い銀色の髪が私の肩にかかり、より近いことを感じた。

「~~~ぬぅう」

今絶対、顔が赤い。

「くっふふふ…」

くすりと笑いかけてくる、天狼さんに胸が高鳴った。

いつ見ても、天狼さんはかっこいい。

「これが、欲しいか?」

私は、天狼さんに素直に答えた。

「……いえ、別に」

「うん?欲しくないのか?」

「こんな、イカのゲソみたいな可愛くないもの、いりません」

「…では、何が欲しい?」

ぎゅっと包み込むように抱き込まれる。

「…………」

私は、少し考えて答えた。

「本物の天狼さん」

「…………」

「決まりだな…」

オタ面さんの言葉ではっきりした。

「天狼さんはどこ!天狼さんを返して!白猿はくえん!!」

「くっふふふ」

天狼さんの姿をした白猿は、不敵に笑い出した。

そんな、白猿に苛立ちを覚えた。

「てかっいつまで私にくっついているの!このばかああ!」

振り払うはずが、白猿に硯鬼が入った瓶を思いっきり天狼さんの顔にぶつけてしまった。

「あっ!」

やっばあ!

「…っ!!」

ガラスが割れる音が響いた。

天狼さんの顔が割れた。

天狼さんと言う仮面が割れた瞬間だった。

それでも表情は、笑った仮面のまま変わらなかった。

パラパラと顔の破片が落ちた。

天狼さんの仮面がはがれて、あるはずの白猿の顔は闇に包まれていて何も見えなかった。

いや、無いと言ったらいいだろう。

顔が無い仮面。

これが、白猿。

すると、ガラスが割れる音が、学校中に聴こえた。

いや、今いる世界が割れる音だった。

不自然に壁や床が鏡のように割れて、白猿の顔のように、割れた先は闇に包まれいていた。

「……っ!!」

世界が壊れて行く!

床が割れて、底なし闇へと変わった。

ひび割れる世界の中で、なすすべなくその場に崩れることしかできなかった。

私達は、そのまま闇へと落ちて行った。


 灯花は、名前を呼ばれて目を覚ました。

「灯花たん、大丈夫でござるか?」

オタ面さんが私を介抱してくれたようだ。

「あれ、私…生きてる?」

「目覚めて、何よりでござる~」

オタ面さんは、私をゆっくりと立たせてくれた。

「ここは?いったい…」

「ここが、禁忌の箱の中身でござる。管理しやすく、意味を与えることでこの世界かたちとなっているでござるよ」

数多くの灯篭とうろうが天井につるされていた。

どれも青い火が灯していた。

そのおかげで、周りをよく見渡せた。

無数の箪笥たんすが並ぶ空間だった。

人の二倍ある箪笥や小指サイズの箪笥、細長い箪笥に円形の箪笥。

色んな形の箪笥が隙間なく並び、床にも無数の箪笥があった。

そのため、箪笥の取手が床に着いているため、歩きにくそうだった。

所々に、白と紫の絹に蓮の花が刺繍されている旗が天井から降りており、ここが誰の所有者なのか象徴しているかのようだった。

ここが他の幽世より厳格な場所だと見て取れた。

他にも、天井から吊るしているのを見つけた。

干し柿?

柿をいくつも繋いで長く吊るしていた。

新しい柿から順にきちんと区別して並べてあった。

誰かがきちんと管理している証拠だった。

「不思議な所ですね…」

オタ面さんに、そう告げると。

「まさか、ここまで来れるとは思っていなかったでござる。迷い子とは聞いていたでござるが、おてんば娘っ子でござったな~~かわゆすでござるがな」

「ええっと…」

何を言っているのか、わからない。

「なぜ、天狼坊ちゃんが白猿とわかったんぞ?灯花たん」

急に問いかけられて、少し戸惑いながら答えた。

「えっ?あっああ…天狼さんの格好が、スーツ姿だったんです。天狼さんは着物だったので、すぐに偽物だとすぐにわかりましたよ?あっでも!瓶を当てちゃったのは、わざとじゃないんです、ごめんなさい!本当にごめんなさい!」

いくら、白猿だったとしても天狼さんなのに…私ったら…

やってしまったことに後悔した。

「しかし、それだけではあるまい?そうなるように、誘導の術までかけてあったのだぞ?数多くの者がここに閉じられるのは、それが原因だというのに…自力で解くとは…いや、かからなかったのか?」

「うん?術?えっと…確か私、術が効かないらしいですけど?」

「そうなのか?試しの写しは、かかったように見えたのだが?それが本当なら…そうか、なるほど、司氏つかさし~あやつは悪よの~」

「……あの、言っていることがよくわからないんですけど…」

単に私がバカなのかな?

「いや、こちらの話ぞよ。灯花たんは、天狼坊ちゃんを探すでござる~」

「あっはい!」

私は、床に気を付けながら、トコトコ歩いた。

途中、そこら辺転がっている瓶詰の硯鬼を見つけた。

一様、これも持っていくか…

「灯花たん、それも持っていくの?」

「何となく…」

「そうか…好きにするといいでござるよ~まったく、趣味が悪いぞよ」

私は、もう一回辺りを見渡した。

「あれ?扇子がない…どこ行っちゃったんだろう?」

せっかくもらったものを…失くすとは…

私は、ガックリと肩を落とした。

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