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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第三章 契りって何ですか?天狼さん。
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学校の箱。

 私達は、教室から出て廊下に出た。

夕陽が射す廊下は、デジャブを感じた。

前にも、この風景を見たことがあるし、歩いたことがあった。

柿色の着物の袖を振って、気を紛らした。

「オタ面さん、天狼さんの匂いがわかるんですよね?」

私の後ろをついて来ているオタ面さんは、鬼の面を付けながら答えてくれた。

「ああ、わかるぞよ」

急に夕陽が射す廊下に陰りがあった。

「だが、辿るに前に、風になることをおすすめするでござるよ」

「えっ風?」

「ギギギイィイイ!!!!」

歯ぎしりのような耳障りな声が廊下中に響いた。

廊下の外窓からこちらを覗く、肥大したはえがそこにいた。

「…っ!!」

確かに、風になったほうがいい。

全速力で、廊下を走った。

「てかっなんでここに蟲があ!」

「ギイイィイイー!!!」

突然、廊下中の外窓のガラスが一気に割れた。

「ぎゃああ!」

ガラスの破片が飛び散って、私に降りかかろうとした時。

鈴の音が響いた。

来るだろう衝撃は、風に変わって私の肌を撫でた。

糸を引っ張る音が、近くに聴こえて、私は周りを見渡した。

夕陽の明りに照らされて、それは反射した。

黒い糸だ。

私の周りに、黒い糸が張り巡らされていた。

黒い糸がガラスの破片を弾いたようだ。

オタ面さんの手には、黒い糸があやとりをしているかのように交差し張られていた。

そして、そのうちの一本に指をかけて鳴らした。

九弦くげん

まるで、琴を鳴らしているかのようだった。

「ギイイイイィイイーー!!」

廊下の外には、肥大した蠅が黒い液体を流しながら、宙に浮いていた。

オタ面さんが蟲を黒い糸で拘束していた。

その拘束によって、蟲はバタバタ暴れるが同時に自身を絞めていた。

「ギイィギィ!!」

蠅が身動き取れない状態で、オタ面さんは指で黒い糸を弾いた。

三弦さんげん

さっきとは違った音が鳴った。

蠅は、そのまま黒い糸に斬られ、ぼとぼとと蟲の肉塊が地面に落ちた。

その光景を見ていた私は、腰を抜かして尻餅をついていた。

オタ面さんは、私に手を差し出して言った。

「座っている暇は無いでござる。次が来るでござるよ~」

オタ面さんに、立たせてもらっているうちに、また、あの歯ぎしりのような耳障りの声がどこからか聴こえて来た。

「うわぁ、マジすか」

「マジっすよ~。拙者、興奮してきたでござる~!」

「…………」

オタ面さんのテンションに少しついて行けず、目を細めるだけになった。

「灯花たんは、先にどこかに隠れるでござるよ~拙者は、校内の蟲を駆逐くちくしながら、天狼坊ちゃんの居所を探って参るでござるよ。な~に、灯花たんのにおいは分かるから、どこにいても大丈夫ぞよ」

すると、オタ面さんの背にある刀に付いている鈴が鳴った。

「また、引っかかったでござるな~ゴキブリホイホイの気分でござる~!」

オタ面さんは、指を動かして黒い糸を弾いた。

先ほどより、少し高い音が鳴った。

黒い糸の先は、一体どこに繋がっているのかは、聞くまでもない。

「さあ、行け」

「あっはい!」

私は、言われた通りに、廊下をそのまま走って、どこか隠れる所を探した。


 廊下を走って行くと、オタ面さんの黒い糸が至る所に張り巡らされていた。

黒い糸に当たりそうになったが、糸自体が勝手に動いていて、私が引っかかることはなかった。

一体、どうやって繋いで引っ張っているのか、不思議でならない。

オタ面さんは、黒い糸の先を見えているのだろうか。

走っているうちに、隠れやすそうな場所に前に着いた。

理科室。

私は、理科室の扉に指をかけた。

開いていた。

理科室へと入ると、微かに薬品のにおいがした。

私は、理科室の奥へと入り、薬品棚の影に隠れた。

しばらく、ここで隠れていていよう。

そう思った時。

子供の鳴き声が聞こえた。

ぐずるような泣き方だ。

「…えっ?」

こんな所に、子供?

そう思っても、何が出て来てもおかしくない世界だ。

子供が出て来ても、何もおかしくない。

鳴き声は、この近くだった。

どうする?

確かめに行った方がいい?

自分の心に聞いてみる。

オタ面さんに、隠れるようにと言われるほど、この学校は危険だという事だ。

下手に、外に出れば、蟲に出くわすかもしれない。

それでも、確かめに行ったほうがいいのか?

「…前の私なら、自分優先にして考えていたのにね」

そう、天狼さんなら、子供が泣いていたらすぐにでも、駆け寄るだろう。

「なら、行こう…」

己をふるい立たせて、泣く子の元へと向かった。

声の元は、すぐ近くだった。

科学用品が並ぶ、戸棚の奥に子供一人、入りそうなガラス瓶の中にそれはいた。

「ひっくっぐずっ…」

おでこに小さな角が生えた、干からびたミイラがいた。

「わあ…」

枯れた木のような姿で、瓶の中でうずくまって、ぐずりと涙を流す、小鬼がいた。

これはどうしたらいいのか、わからない。

助けたほうがいいのか、ほっといた方がいいのか、それとも、戸棚と一緒に置いてある水酸化ナトリウムをかけて、二度と声をあげないようにするか、どちらがいいのだろうか。

すると、干からびたミイラと目が合ってしまった。

「おい、お前!何見てんだよ!見せもんじゃねーよ!このブスがあ!」

見た目はあれだが、少年のような声だった。

「…………」

私は、戸棚の引き出しにある、マッチを取り出した。

よし、灰にしょう。

私は、マッチ棒に火をつけた。

あら、なんてきれいな火なんでしょう…

「わああ!やめろ!」

「苦しくて、泣いているんでしょう?すぐに楽に…」

「ちがう!ちがうって!待って!待ってください!すいませんでした!ブスとか言ってすいませんでした!」

「…………」

マッチの火はすぐに消えてしまった。

まさか、枯れたミイラが喋るなんて思わなかった。

「ねえ、どんな、き方がいい?」

「おれっちを殺す気満々じゃねーか!」

「だって、普通の子供かと思ったんだもん!」

「おれっち!子供じゃない!立派な鬼だあ!」

「…………」

「うっうそじゃないぞ!こう見えても、おれっちは硯鬼けんき様だあ!」

「えっ?へっ?今なんて言ったの?」

「うへへっ恐怖におののいたか!小娘!」

「エジプト映画の続編に出てた、森のミイラじゃなくて?」

「硯鬼さまだって言っているだろ!」

「うわぁ…」

なんて、自信過剰なんだろう…可哀そう。

「やめろ!そんな目でおれっちを見るなあ!」

「ところで、哀れなミイラさん、硯鬼ってもっと大きな鬼じゃなかった?」

「話聞けよ!硯鬼さまだって!ふんっお前に教えることではないわ小娘!」

「そう…」

私は、踵を返した。

「待て」

スタスタと出口の方へ歩いた。

「待て!待ってください!」

立ち止って、振り返る。

「なんですか?自称硯鬼さん」

「自称…いや、もういいや!小娘、おれっちをここから出せ!」

「嫌です」

「即答しなくても…よくない?おれっち、ずっと、ここで、一人で…ぐっぅぐずっ…」

あっ泣いた。

「じゃあ、どうしてここにいるの?」

「なにを言うのだ、お前たちがここに封じたのだろう?せっかく目覚めても、おれっちは出られなかったし…」

「出られなかったって…もしかして、手だけ出した?」

「なぜわかった!」

「そりゃあ…まあ、見たので」

「ほう!」

「でも、なんでミイラに?干されたんですか?」

「おれっちが、好きでこんな姿になったと思うのか!おのれ!くそ犬どもめが!」

ゴゴゴゴっと黒いオーラが出始めた。

「…っ!」

私は、一歩ずつ足を引いた。

なんだか、怒らせちゃった?

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