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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第三章 契りって何ですか?天狼さん。
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天狼の箱。

 天狼は、監視宿かんしやどから出ると、重々しく佇む蔵の前に立った。

社のような構造だが、まつってはおらず、お社自体を封じる為に札と鎖が張り巡らされていた。

古びた家屋のにおいと鎖の錆びついたにおいが、鼻に着いた。

天狼は、蔵の前にして目を細めた。

「ここに来るのは、私が天狼として覚めた後だったな…」

社の中心には鎖で出来ている鈴緒にその後ろには札で封じている扉がある。

天狼が鈴緒に触れると鈴と鎖の擦れる音が社全体に響いた。

すると、札で封じている扉が開いた。

札がはがれているわけではなく、内側から扉は開いた。

天狼が開いた扉から中に入ると、その扉はすぐに閉じた。

屋内は、暗闇に包まれていたが、入って来た者を出迎えるようにろうそくに青い火が灯った。

蔵は外見と違って、どこまでも続く廊下がある。

きしむ床を踏みながら、天狼は廊下を進んだ。

廊下の奥へと進むと扉があり、天狼は扉を開けると眩しい光に包まれた。


 天狼は、眩しい光の正体にすぐに気が付いた。

「夕陽か…」

そして、己がどこにいるのかもすぐにわかった。

「学校…だろうな、ここは…」

職員室と表示されている扉を背にしていた。

天狼は、そのまま長い廊下を歩き出した。

すると、若い女の声が聞こえて来た。

ガラリと教室の扉から出て来たのは、この学校の女子生徒だった。

「天狼」

こちらへと微笑みかける女子生徒は制服姿の灯花だった。

白猿はくえんか…」

「そうだ」

やはりこれは、いつ来ても慣れぬ…

目の前にいる灯花は、本人ではないことを分かっている。

今、想っている人物を白猿は姿を映す。

「天狼、われのことが気になるのか?」

「そうだな…」

「我は、お前の心を映す鏡。我、禁忌のふうじにて目録もくろく

「わかっている」

灯花の姿をしている白猿は、上目遣いで近づき、妖艶ようえんな笑みを浮かべて言った。

「なら、何を欲している?」

抱き着いて来た白猿に、いらつきを覚える。

猿め…

「天狼、欲しているものは何だ?我、求めるモノを差し出そう…そして、天狼おまえを、知る」

知らざるの面をした猿。

白猿と言ったものだ。

抱き着いてくるざるをここで拒否しても、無駄な事。

「…………」

「硯鬼、確かにここにある。封を解いた小鬼ものもここにある。我は、小鬼ものの求める物を差し出した。そして、小鬼ものを、知った」

小鬼たちは、知られてじられたか…

「天狼、我は何だ」

「…………」

白猿は封じだ。

知られてじられるのは御免だな…

天狼は、ふと笑って答えた。

「知りたいのは私だ、おまえが知る必要は無い。そして、お前は目録」

「そうだ」

夕陽に照らされる黒髪がさらりと流れた。

寂しそうな顔をする白猿。

「…………」

それはわざとか?

前回来たときは、道司みちつかさの姿だった。

あれは、あっさりと無視できた。

「我は目録」

白猿は、人の心を読み目録する。

自身に囚われば、封じられる。

天狼は、白猿の肩を押し退け、夕陽が射し込む廊下を再び歩いた。

白猿は、そんな天狼の後ろ姿に目を伏せ、夕陽の光に当てられながら静かに薄くなり、そして、消えた。

 

 天狼は、ある教室へと入った。

1年C組。

私が担当とするクラスだ。

そして、教卓の上には、黒い箱あった。

天狼はその黒い箱へと近づいた。

箱は、開いていた。



 灯花は、オタ面さんとゲームをしていた。

スライムを重ねて、潰して消していくゲームで、二人プレイをして対戦していた。

「あっ3連」

「こっちは、10連でござる~」

「ああー!降って来たし!」

「ぐふふっ泡にまみれて潰れてしまえ!」

「ちょお!」

「拙者、この手のからくりは熟してるでござるよ!まだやるのか?」

ゲームは苦手かと思ったけど、意外と上手かった。

かれこれ、何十回もしているが一回も勝ててない。

「くっ!熟練者め!」

「それはひがみか?」

灯花は、コントローラーをほた投げた。

なんやかんやで、オタ面さんとよろしくやっていた。

だって、暇だったんだもの。

「ところで、天狼さん遅いんだけど…」

「何かあったでござるな~」

「えっ!」

「あそこは禁忌の箱でござる、天狼坊ちゃんでも何もないとは言い切れないのでござる」

だんだんと心配になってきた。

「えっでも…」

私が行ってもどうしょうもないし……

でも、だからと言って、何もしないわけにはいかない…

それに、天狼さんはちゃんと私を助けてくれた。

ここで、引いていたら恩を仇で返しているような気がする。

「その、禁忌の箱って何ですか?天狼さんから、不吉な物が入ってる蔵だと教えてもらったですけど…」

オタ面さんのその口ぶりだと、ただの蔵ではないと言っているかのようだ。

「灯花たんは、天狼坊ちゃんが気になるでござるか?」

「気になる、オタ面さん」

「……ふむ、なら迎えに行くか?」

「えっ!いいの?」

「灯花たんなら、いいかもー!報酬は、コスで!」

「よろこんでー!」

棒読みで答えた。

着るだけなら…いっか。

何かあったら、天狼さんに助けてもらおう。

「拙者、全力で灯花たんを助太刀致す!」

「わーい!で、蔵って?」

「灯花たん、あの蔵はただの蔵ではないでござる」

「うん」

「灯花たんが聞いた通り、蔵であるが、箱でもござる。蔵が箱と考えてほしいござる」

「箱」

「箱は、器と蓋があって箱。蔵は器で、蓋は面でござる。禁忌とは、器の中の物を指しているでござる。器と禁忌の物を封じる為に面を用いて封じた。それ以降、禁忌の箱と呼ばれるでござる。単純な名前でござるな~。だが、問題は封じる為に面を用いたことであるぞよ、面は自身を映す鏡のようなモノ、見る者によっては、形を変えるモノ。面は、白猿はくえんと呼ぶでござる。顔が無い猿と捉えてよかろう~。顔が無いとなれば、自身を知らぬ、知ら猿と言う。白猿に知られることで封じられるぞよ。つまり、鏡に己が入ると閉じ込められるという事でござる。そこで、器を用いることで白猿に役割を与えることができるぞよ。器は、幽世だ。幽世に禁忌の物を置くことで、白猿は禁忌の物を知っていることで封じることができるでござる。白猿は、目録として機能し禁忌の物を把握できるようになるぞよ。それだと取り出すことが出来ぬこという事にたどり着く、なあに簡単な事でござる。取り出す方法は、白猿に知られることだけでござる」

「…………」

わからん!

「灯花たんの頭じゃあ、中二病にもなれんでござるな~!」

「失礼な!立派な、腐女子でーす!」

「まあ、実体験すればわかるぞよ。いざ、アトラクションでござる~!」

オタ面さんは、そこら辺に落ちてあった、鈴がついている刀を背中に差した。

大丈夫かな…

だんだんと不安になって来た。

「灯花たん、そんな顔をするな。拙者を誰だと思っておる」

「オタク」

「拙者こそが、鬼門の番人で禁忌の箱の監視者!久遠陽炎ぞ!」

「はあ…」

「ちゃんと免許もあるでござるぞ~!」

スッと懐からカードらしきものを取り出した。

それ、車の免許です。

なにげにゴールド免許。

本当に大丈夫かな…

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