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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第三章 契りって何ですか?天狼さん。
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鬼の下は、アニオタ。

 私は、天狼さんに手当を受けていた。

私に怪我を負わせたオタ面さんは、頭に大きなたんこぶをつけながら、シクシクやっていた。

天狼さんの容赦なしのげんこつに、泣くほど痛かったのだろうな。

「これで…よし。また、傷を残してしまったな…」

天狼さんの労わるまなざしに、どきりとした。

「だっ大丈夫です!怪我なんて、もうとっくにあっちこっちにできてますから!慣れっこです!」

「しかし、この傷は身内がやったことだ。いくら、務めと言えほど…」

「本当に大丈夫です。それより、あの鬼の事を言っていましたよね?あれはいったい?蟲ではないですよね?」

何とか、話をそらして天狼さんの気をそらした。

優しい天狼さんのことだ、ずっと気にするだろうし。

「あれは、硯鬼けんきと言う鬼だ。聞いた通り、封じたはずの鬼が出て来たのは、小鬼たちが封を解いてしまったからであろうな」

「小鬼って…存在していたんですね」

地獄蟲の他にも、きちんと存在はしていた。

「妖怪や物の怪は、確かに存在はしている。だが、現世ではなく幽世で棲んでいることが多い。昔は、現世でも姿を見ることがあったが、今は人へと化けなければ、生きては行けなくなったな…」

「人狼も?」

「そうだ」

天狼さん達は、オオカミから人の姿へと変えて、人の世を生き抜いていた。

「……でも、天狼さんは現世でもその姿ですよね?ほら、耳出しているし…」

ぴょこぴょこと獣耳と尻尾を出していた。

国光さんや真夜は、きちんと人の姿になっていたのに、天狼さんはちょっと半端だ。

「私は、力を出すとすぐにこの姿になってしまうんだ…恥ずかしながらな…」

「漏れちゃうでごるよ~ぐっふふ!」

「お前は、少し黙っておれ」

口を挟んだオタ面さんも、黒の獣耳と尻尾を出していた。

真夜も言っていた。

人の姿をしていても、瞳の色は隠せない。

上手く人の姿になれる人狼は、日本人らしい黒の瞳になれると。

だとしたら、人の姿にも個体差があるのだろう。

「さて、そろそろ行かねばな。私が出向いた方がいいだろう、蔵の様子も把握しておきたい」

天狼さんは、その場を立ち上がった。

「蔵に行くんですか?」

「ああ、お前はここに居てくれ。事が済み次第すぐにむかえに行く」

「はい、わかりました…」

ついて行ったって、迷惑になるだろうし…

陽炎かげろう、刀はあるか?一戦交えるかもしれん」

「でしたらこれを」

天狼さんはオタ面さんから刀を受け取った。

「…………」

天狼さんは、何かいぶしげにさやから刀身を出した。

刀身は、プラスチックのような刀身で七色に光った。

「…………」

天狼さんは、無言のまま、七色に光る刀を両手で折り、ほた投げた。

「戦国乙女戦士みさかちゃん専用、愛明刀ラブライトソードを!」

あれって、ネットで一万円(中古)ぐらいしてなかったっけ?

「…刀を」

「あっはい…」

オタ面さんは、戸棚から埃まみれの刀を取り出した。

「…………」

天狼さんは、その刀を受け取って刀身を出した。

埃をかぶっていたくせに、鉄の刀身には、刃こぼれやさび一つしていなかった。

そして、刀をよく知らない私にも、その刀が寒気がする嫌なオーラを漂っているのを感じた。

口に出さなくても、本物の刀だとわかった。

「悪くない刀だが、妖刀に近いな…」

鴉刃からすば、鴉の如し刀身を黒く染め上げ、肉を突き上げるのが好きな刀でござる。妖刀として感じるのは、よく暗器として使われているからでござる」

「使ったことは?」

「拙者、ただ預かっただけでござるよ。天狼坊ちゃんには、いささか扱いづらいかもしれんが、鬼を斬るには問題なかろう……たぶんで、ござるが…」

「まあ、よい。先に言っておくが、折れたらすまん」

天狼さんは、出していた刀身を鞘に納めて、腰に差した。

「では、行ってくる。陽炎は、娘を頼む」

「了解でござる!」

オタ面さんは、ビシッと敬礼をして天狼さんを送り出した。

妙に、返事だけ元気なのは気のせい?

「ああそうだ、これだけは言っておく、その娘に指一つ触れるなよ」

「チッ」

する気満々だったのか!

天狼さんはそう言い残して行ってしまった。


 オタ面さんと一緒の空間は大丈夫だろうか?

天狼さんがいない今、だんだんと不安になってきた。

何せ、黒い糸で巻きつけられた挙句に、首を落とされそうになったんだし…

「…………」

じっと縮こまっていると声をかけられた。

「茶でも飲むか?」

「…………」

「そう警戒するな。あのお方の指示だ、もう何もしない」

いつもの語尾が抜けて、真剣な口調だった。

何だろうこの人…

オタクのような口調になったり、急に真面目な口調になったりしている。

お茶が入った湯飲みを渡され、それを受け取ることとなった。

自分の手がどれだけ、冷えていたか気づき、指をほぐすように湯飲みを握った。

「本当に、この地に足を運ぶ者がいたとはな…娘、名は何と言う?」

「えっ?あっ朝峰灯花です」

「…とうかというのは、ともしびの火か?」

ともしびの花です」

「それで、灯花か。良い名だな、なら……」

オタ面さんは、再び戸棚を探り出した。

美少女フィギアが並ぶ棚の奥から、20cmぐらいの細長い小箱を取り出した。

埃が積もっていたが、中を開けると紫の絹で巻かれた物があった。

「これも、何かのえにし。この陽炎、傷をつけた詫びとして、これをお主にやろう。その真名に似合う品だ、護身刀ごしんとうになる」

オタ面さんが紫の絹から取り出したのは、真っ黒な扇子だった。

「これを肌に放さず持つといい…」

「はぁ…ありがとうございます…」

天狼さんに渡した刀といい、扇子から何とも言えないオーラを感じつつ、それを受け取った。

「…っ!」

おもっ!

扇子は、妙に重かった。

竹や木で出来ているはずだけど、なまりのような重さが伝わってきた。

黒塗りされている骨は、よく磨かれていて花の模様が彫り込められていた。

かなめから流れる、紅いひもが結んでいた。

いざ、扇子を開こうとすると…

「あれ…なにこれ…開かない」

力を入れても、扇子が開かなかった。

のりでもくっつけているの?

「火種にするものがなければ、火は起こせぬ。風がなければ、火は立てぬ」

「えっと…どういう意味ですか?」

「お前の名だ。灯花、灯せよ火を、さすれば燃える」

「全然わからないです。からかっているんですか?」

「う~ん、持ってても損はないでござるよ。いずれ分かる時が来るぞよ~」

ござるぞよ~じゃないと思うぞよ!

扇子が開かないだけど!

とにかく、オタ面さんの言う通り持っててよう。

護身用として、何か役に立つのかわからないけど…

灯花は、着物の帯の中にしまった。

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