帰りの公園。
緋色に染まる校舎を見ながら、時間の速さを実感する。
ほんの少し保健室で、過ごしただけなのにあっという間に夕方だ。
保健の先生とは、少しお茶をしただけで終わった。
先生としては、私を心配しての行動だった。
帰り際にいつでも来ていいとまで言われた。
私は気にしなくていいのにとまた思ったが、天狼さんの話なら聞きに来ようと思った。
あの夢のような出来事が、私はまだ忘れられない。
天狼さんと久遠司狼が同一人物かはまだわからないけど、確かめる必要はあると思う。
もう一度会いたい。
天狼さんに会いたい。
私の脳内はそればかりだった。
電車を降りると、外は日が落ちていた。
無人駅に並ぶお迎えの車のライトが眩しく感じた。
そういえば、犯人まだ捕まっていなかったな。
いつもの人だかりが、少し多いのはそれが理由だろう。
事件から、結構日数が経っている。
だいぶ日常から忘れつつであった。
すぐ近くの公園の公衆電話の中で、女の人が殺害された。
犯人は、カッターナイフで女の人を切り刻んで殺している。
しかも、両腕を切断されていて体中にカッターの刃が埋まって発見されたらしい。
考えただけで、怖気がする。
だからだろうか。
私もそんな危険な経験をしてからか、殺害された女の人の気持ちがわかるような気がした。
天狼さんが守ってくれたからこうしていられるけれど、もし一人だったら例え夢であろうとも私はきっと死んでいた。身も心も死んでいた。
だから、とてつもなく怖かったのはわかる。
必然と私はあの公園に来ていた。
公園内はさずがに入れなかった。
立ち入り禁止の黄色いテープで、張られていたからである。
公園内は電柱の明かりでだけで、なんとか周りが見渡せる事ができた。
不気味な雰囲気が漂っているが、私は気にしなかった。
それどころか、懐かしさを感じていた。
小学生の頃よく遊んでいた。
ありきたりた遊具で遊んだ記憶があるが、あのコンクリートで作られた筒状のトンネルの中に入ってよくおままごとをしていた事は覚えている。
その時は、友達はいた。
あの、村上みのりとだ。
とんだ皮肉だ。
いい思い出のはずなのに、今は最悪な思い出だ。
来るべく所では、なかったなと少し後悔した。
田舎であるここは学校に通うには少し遠く、交通手段を使わないと通えなかった。
気軽に遠くの家に住む友達と遊べないだろう。
遊ぶとしたら、学校か休みの日でしか遊べなかった。
学校の後も遊びたかったし周りを見ると寂しくて羨ましくもあった。
近所の子たちと遊べと言うけれど、馬の合わない子とは遊べないだろう。
そんな時、村上みのりだけはわざわざこっちに来てはよく遊んでくれていた。
住む地域が違うはずのに遠い所から一人で来てくれたのだ。
その頃が、一番楽しかったと思える。
少なくともお互い純粋な気持ちで友達だったから。
学校が終わってもずっと一緒にいたかったんだなと思った。
だけど今は、過去の事。
お互いもう立場が違う。
村上みのりは私を裏切り嘲笑ったのだ。
今、村上みのりはどうしているだろう?
今も私を笑っているのだろうか?
あの笑っている顔が、今でも鮮明に覚えている。
憎しみが湧いてくる。
満足?今の私を見てさぞ面白かろう!
足元にあった、小石を怒り任せで思いっきり蹴った。
小石は、思ったほかあらぬ方向へ飛んだ。
当初の目的地、公衆電話へと小石は当たった。
げっ!罰当たりな!
当てるつもりはなかったが現場だけに後味悪い。
公衆電話は、公園の入り口からそう遠くはない。
近くに行って、ごめんなさいしてくる?
よく見たら公衆電話の元に花束が置いてある。
いいか悪いかどっちかというと悪いと思うが…自分がやってしまった事に良心が痛む。
それに、私は不幸にあってしまった女の人に手を合わせに来たのだ。
周りを見渡すが誰もいない。
車も来てない。
いつやるんだ!今でしょ!と黄色いテープを跨いで中に入った。
胸ドキドキで公園内に入った。
ちらりと地面を見る。
血の跡ないよね!
冷や汗かきながら公衆電話の元に行く。
うひゃああー!
公衆電話は電気がついていて今でも使えそうな感じだった。
血の跡は無くてよかった。
でも、不気味さはある。
ううー!早く済ませよう!
公衆電話の前で手を合わせた。
小石当てたこと!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさーい!あと天国行けますように!幸せになりますように!安らかになりますように!
焦りながら祈った。
なにかとやっぱり怖い。
祈ったあと急いで踵を返して急いで黄色いテープを跨ごうとした。
その時、テープに足を引っかけてしまった。
あぎゃん!
地味に痛い転び方だった。
手がヒリヒリして痛かった。
痛さで怖さが半減した。
はぁーなにやっているのだろう。
ため息がついた時、ぬっと陰った。
えっ
なんで今暗くなった?
私の真上は電工灯があった。
それが暗くなったという事は誰かかいるという事。
息が止まった。
顔は上げるな。
「君、大丈夫?」
男の声が私の真上から聞こえた。




