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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第三章 契りって何ですか?天狼さん。
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マジかよっ!ようこそ幽世へ。

 勉強が深夜へと移り、トイレ休憩を挟んだ時に事は起きた。

トイレから出た灯花は、違和感に気づく。

「なんか、違くね…」

確かに自分は、屋内の水洗トイレを使っていた。

それがなぜ、私の目の前で森が広がっているのだろう…

風に揺れられて、森林から落ち葉が湧いていた。

落ち葉がぱらぱらと舞い落ちる中、私は外気にさらされ、鳥肌が立つほど震えあがった。

私は、自分から出て来たトイレを振り返ると、公園に設置するトイレがそこにあった。

公衆トイレは、森林のど真ん中に設置されていた。

私は、その場で立ちすくんだ。

「……マジかよ」

頬をつねって、寝ぼけているのか確かめたが、痛いだけで駄目だった。

「…………マジかよおお!」

私は頭を抱えた。

とりあえず、状況確認だ。

私は、天狼さんと勉強をしていた。

天狼さんが呆れるほどの出来の悪さだった。

数学の小テストで1点とって、ごめんさい、バカで…

真面目に解いて、この点数だ。

誰も彼も、匙投げたくなるだろう。

天狼さんから、小学生問題が出て来た時には、死にたくなった。

そして、時間帯が深夜に回ってきて、一度トイレ休憩を挟んだ。

トイレに駆け込み、用を済ませた後、目の前に、森林があった。

終わった、何もかも…

私の追試も…

肩を落としつつ、辺りを見渡した。

ここで、落ち込んでいる場合ではない。

薄暗さはあるものの、月明かりのおかげで真夜中でも、見渡せた。

公衆トイレから石畳が並んでいて、道が整備されていた。

私は、その道なりに進んだ。

足袋を履いているから、そんなに歩いていて痛くはないが、折れた枝とかあって歩きにくかった。

「ここって、幽世だよね…」

いきなり、別の世界に迷い込むなんて、幽世しかありえないよね。

「だとしたら、蟲いるよね…」

幽世に必ず、地獄蟲がいた。

「最悪」

せっかく、天狼さんに勉強を教えてもらっていたのに。

なんか、踏んだり蹴ったりだわ…

弧を描く月は、鋭くてまるで、死神の鎌みたいだ。

私が死ぬまで、これが続くのだろうか…

唾液が苦く感じた。

何も口にしてないのに、毒を飲んでいるみたいだ。

少しでも唾液の味を味わいたくなくて、下唇を噛んで気を紛らせた。


 しばらく、道なりに進んで行くと、石灯篭が並ぶ道へと変わった。

近くに神社があるの?

森林の中に、整備された場所があるとしたら、神社や寺を考える。

今の所、警戒していた蟲は、一匹たりとも現れていない。

一匹でもいたら、近くに群れが潜んでいる可能性がある。

一匹はおとりで、蟲はこちらの動きを様子を見ては襲いかかっている。

そんな知りたくもないことを知っているのは、何回も遭遇し襲われた経験があるからだ。

嫌でも、記憶や身体にも覚える。

勉強法としては、いいかもしれないね…死神がついてまわるけど。

灯花は、石灯篭が並ぶ道を歩き出した。

すると、紅い鳥居が見えて来た。

鳥居は、所々に紅い漆が剥がれてて、古びた様子だったが、この場に建っていることに異様な気配を感じた。

「大丈夫よね…」

くぐることに、ためらいがあった。

だけど、先に進まないとここから出られないのも確かだ。

私は、意を決して鳥居をくぐった。

くぐっても何も起きなかったが、何かしらの不安はある。

「本当に大丈夫よね…」

真夜中の神社って、出る言うし…

幽霊。

肝試しなら喜ぶだろうけど…この状況で出て来られてもすごく困る。

出て来られて、冷静さを失くすと思考が出来なくなる。

それこそ、幽世から出られなくなる。

何事にも、冷静さが大切である。

だから、お願いだから、出て来ないでね…

心細さと恐怖を握りしめて、一歩一歩ずつ踏み出した。


 鳥居を通り過ぎてから、辺りが白く濁り始めていた。

霧が出始めてから、いよいよ、覚悟を決めた。

このパターンは、出る可能性は高い。

そう思った時、近くにあった石灯篭が、突然、青い火を灯した。

「…ひっ!」

それも、一つだけではなく、道に続いて石灯篭が火を灯し始めた。

びびった…

いきなり、点くんだもん…

火が点いただけでも、半泣きだった。

青い火。

天狼さん達は、この火を使って蟲退治をしていた。

鬼火と言う術らしい、蟲を一瞬で焼き払う力を持っている。

この火があるということは、蟲の心配はないということかな?

そう甘いことはないと思うけど、ここは山犬達の住処でもある。

何かしらの、対処はあってもおかしくはない。

そう思ったら、少しだけ恐怖が和らいだ。

霧の中でも、石灯篭に灯る青い火が道を照らしてくれるおかげで、迷う事はないみたいだ。

明かりを頼りに道を進んだ。


 道なりに進んで行くと、私は、鈴の音を聴きながら、いきなり転んだ。

「いったーい!」

華麗に転んだため、きちんと受け身を取れたから怪我はしていない。

どうやら私は、足を何かに引っかけて、転んでしまったようだ。

足元を見て見ると、細い糸が絡み付いていた。

「なにこれ?」

黒い髪の毛のように見える。

私は、これで転んだの?

黒い糸を試しに引っ張って見ると、思った以上に切れなかった。

それに、糸は鋭くて、皮膚を小さく切っていた。

「ほんとなにこれ!」

地味に痛いんですけど!

とにかく、足に絡み付いている糸を取らないと…

そう思った時。

鈴の音が鳴り響いた。

まるで、獲物が罠に引っかかった音だ。

すると、足に絡み付いていた黒い糸は、急に私の両足を縛った。

「…痛いっ!」

黒い糸はしっかりと足袋を履いた足でも食い込み、糸を伝って血が流れ出していた。

強い縛りに身動きが取れなくなった。

「どうなって…」

鈴の音が再び鳴り響いて、今度は、両手に黒い糸が絡み付いた。

手首に熱を感じた。

「…っ!」

どこから伸びているのかわからない黒い糸に手首を絡み付かれて、拘束されてしまった。

少しでも動いたら、熱が零れ落ちそうだ。

身動き取れない状態の中、月光が黒い糸に反射して、その仕掛けがわかった。

そこら中に、黒い糸が張り巡らされていて、蜘蛛の巣のようだった。

「…………」

言葉がでなかった。

私は巣にかかった獲物だった。

だとすると、その巣の主が現れるのは必然だろう。

鳴り響く鈴の音の主が、月光の影から現れた。

それは、鬼。

鬼の面をした、人狼がそこに立っていた。

長い黒髪を流し、人ではない証の獣耳と尾があった。

黒の着物に白の曼珠沙華まんじゅしゃげの模様が施されていて、深紅の帯が栄えていた。

背に刀を差していて、そこに手を回す腕は、細腕だがしっかりした男の人の腕だった。

天狼さんと同じぐらいの体格で、どことなく佇まいが天狼さんと似ていた。

私は、その人に目を奪われていたが、鈴の音に反応した。

鬼の面をした青年は、刀に複数の鈴を付けていた。

そして、よく目を凝らすとその鈴に無数の黒の糸が繋がっていた。

鬼の面の青年は、石畳に下駄の音を鳴らせながら、こちらへと向かっていた。

私は、息を飲んだ。

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