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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第ニ章 えっ?友達ですか!天狼さん。
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ホワイトクリスマス。(その25)最終。

 天狼は、幼い灯花を連れて廊下を歩いていた。

天狼の病室へと戻るに連れて、灯花の身体が透けているのがわかった。

灯花は、自然と己が返る所が分かってるようだった。

本人は、家に帰ると思っているのだろう。

それでいい、家に帰ろう…灯花。

「どうした?」

灯花がじっと私を見ていた。

「うーんとね、えっと、その…」

「うん?」

天狼は、膝を付いて灯花と目線を合わせた。

灯花がもじもじと恥じらいを見せた。

「ぁりがとぅ…」

「すまんが、よく聞こえなかった。もう一度はっきり言ってくれんか?」

「…っ!」

灯花は顔を膨らませた。

「そんな顔されてもな…」

天狼は、灯花のほほを指で押した。

ぶうーー

灯花の様子にふと笑ってしまう。

「それで?」

「うーんとね、ありがとうなの…」

照れくさそうに言う灯花は愛らしいかった。

「なにがだ?」

ちょっと意地悪をしてみた。

「むうう、か、かくれんぼ…手伝ってくれたから…その、ありがとうございました」

ぺこ。

小さな頭が傾いた。

「たいしたことはしてないが、その礼は受け取っておこう。今宵は、お前と出会って良かった」

天狼のその言葉を聞いて灯花は、口を開けて笑った。

「うん!」

天狼は、その笑顔が眩しく見えた。

灯花に微笑み返しながら想った。

本来ならば、なみも一緒にいたはずだった。

三人でこの道を歩みたかったな…

天狼は、悔恨を残しつつ、小さな手と手をつなぎながら帰路へと向かった。


 天狼が病室へと戻る頃には、灯花の姿はなかった。

だが、寝台の上で眠っている灯花がいた。

あちこちに包帯が巻かれていた。

「また、無茶をしたな…」

まだ幼さが残る顔にかかる前髪をそっとよけた。

ゆっくりと呼吸の音が聞こえてきて、安堵をする。

窓から、まぶしい日差しが入って来た。

夜明けか…

降っていた雪は、夜と共に去ってしまったのだろう。

天狼は、近くにあった椅子に座って肩の荷を降ろした。

この病院の幽世かくりよに巣繕っていた蟲は滅したが、大半の蟲は神楽夜かぐやと共に逃げようせたようだ。

幽世の柱となっていた蟲がいなければ、幽世の崩壊は免れん。

今の現状、この病院の幽世は、消滅したことになる。

天狼は、銀色の髪を掻きながら己に反省をした。

美鈴が来てくれたことに感謝しなければな…

現世うつつよに影響が出ないように、一人で乗り込んだのはいいが…まさか、神楽夜に出くわすとはな…

「天狼とは名ばかりだな…」

山犬の一人が亡くなった。

あの黒狼こくろう東石とうせきの者だろう…

また一人、一人と山犬が堕ちて行く。

天狼ならどうする?この状況を。


 しばらくして、無い扉から国光の呼びかけがあった。

「天狼様」

「美鈴は良いのか?」

国光は、病室の扉を様子見ながら答えた。

「ええ、傷は浅かったようなので、大事ないかと」

「そうか…美鈴には礼を言わねばな」

「必要はありませんよ、まずは弁償の方を何とかしないといけませんからね」

国光は、ドアノブが無いことに気が付き、掛けていた眼鏡を上げた。

「そのようなことを申すな、私が言っていたと伝えてくれ」

「…わかりました。領収書付きですが」

天狼は、国光に言わねばならんことがあった。

「国光、神楽夜と会った」

「…………」

国光は、その場で停止してしまった。

「だが、逃げられた」

「…………」

「国光、美鈴から聞いているだろうが…」

「はい、存じています」

国光は、その言葉だけで会話が終わってしまった。

天狼は、ただ押し黙るしかなかったが、ふと、国光の手に画用紙あることに気づく。

「国光、それは?」

病内うつつよを見回った時に拾ったのです。天狼様にと持ち運んだ物です」

「私に?」

「はい、心当たりがあるかはわかりませんが…ご覧を」

国光は、画用紙を私に見せた。

「……確かにこれは私宛だな」

天狼は、笑みを浮かべながら、その画用紙を受け取った。

「国光、礼を言う」

画用紙には、絵が描かれていた。

きっと、幼い子供が描いたのだろう。

クレヨンで描かれていたのは、小さな人が二人と人狼らしき者が仲良く手をつないでいる所だった。

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