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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第ニ章 えっ?友達ですか!天狼さん。
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ホワイトクリスマス。(その21)

 天狼は、幼い灯花を抱え直そうとすると、小さく身じろぎをする灯花がいた。

「うっん…わんわん?」

灯花には、傷一つ付けることなく済んだ。

途中、灯花は気を失ってしまったが、息はしかとあった。

天狼は、寝起きの無邪気さに、肩を落として安堵をした。

「うん」

小さな温もりを感じながら、天狼は微笑んだ。

天狼は、灯花の無事を確認し、後ろを振り返った。

美鈴は、もう一体の膿蟲うじの傍らにいた。

「さて、どうするか…」

床に横たわっている花柄のパジャマ姿の少女。

背中には、はねが生えているが、もう飛べないだろう。

美鈴の氷鬼ひょうきにより、身動き取れなくなっている。

美鈴は、すぐにでも始末できるような態勢に入っていた。

灯花は、手出しするなと言われたが、このままだと人を襲う。

聞いてやりたいが、すでに膿蟲になってしまった以上はどうしようもできない。

無理に引きはがすのは、強靭きょうじんな肉体を持つ山犬しかできない。

「美鈴、致し方ない」

私の言葉に、美鈴は構えたが…

「待って!待って!」

灯花が天狼の腕からもがいた。

天狼は、ゆっくりと灯花を床に降ろした。

床の上に立てたが、ふらつきが目立つ。

灯花は、とことこと膿蟲に近くに寄ると、ぺたんと床に尻餅をついた。

天狼は、美鈴に頷いた。

様子を見よう…

美鈴は、膿蟲から一歩下がった。

今の灯花は、この状況を理解していない。

でも、灯花は灯花なりに何か思う所があるのだろうと天狼は考えた。

例え残酷な結末だろうとも…


 灯花は、パジャマ姿の女の子に触れた。

皮膚の柔らかさを感じたが、氷のような冷たさに驚いた。

「…っ!」

なんで、こんなに冷たいのだろう。

前会った時は、温もりがあったのに…

「ねぇ…ねぇってば!」

女の子は、うなっていた。

「う、ううう、うう、う」

「ねぇ、どこか悪いの?痛いの?」

「うう、うう、ううう」

灯花は、ただその場で慌てるだけだった。

痺れを切らした天狼が、灯花の傍に寄った。

「灯花、その子は灯花が知っている子ではない」

「…………」

わんわんが言っていることがわからなかった。

困った顔をすると天狼は、灯花の頭を撫でた。

天狼は、灯花が理解できなくてもあえて、灯花に道理を唱えた。

「生きている者は、必ず死を迎える。それはどんな形だろうとも、生者にとっては死が必要なこと。また新たな命の為に、生きる為に死を迎える。死を迎えぬ者は、生きる苦しみを味わう。肉体の滅びは、死を迎える為のもの、そして、新たな肉体を貰い受け、育み歩むもの。……灯花、その子に、なみに、死を迎えてやろう、そして新たな命をやろう。そして、見届けることが、お前が唯一できることだ」

灯花は、冷たくなった身体をそっとでた。

次第にぽろぽろと涙が溢れた。

灯花は、天狼にしがみついて、泣きじゃくった。

天狼は、そんな灯花を胸の中に入れて、涙を受け止めた。

すまない…

天狼は、口には出さなかったが、なみを救えなかったことを深く詫びた。


 天狼は、美鈴に頷いた。

美鈴は、膿蟲に近づき、その身体に触れた。

とたんに、身体に割れ目が現れた。

ゆっくりとガラスが割れるような音が響いて来た。

パキリ、パキリと四肢が崩れて行った。

氷の砂となって、消えて行くまで私達はその場から離れなかった。

灯花は、天狼の腕の中で、ある声が聞こえた。

「……?」

今しがた消えてしまった子の声だった。

「お願い……」

「えっ?」

「おかあさんに…渡して」

「あっ!」

そういえば、この子は…

「クリスマスプレゼント…絵を渡して…」

一瞬よぎったのは、あの画用紙…

真っ黒く描かれてあった絵。

「うん、わかった」

できること。

小さな灯花が今、出来る事だった。

灯花は、天狼の腕から身じろぎをする。

天狼は、急な灯花の動きに驚きながら、腕の中から離した。

「どうした?灯花」

天狼には、あの子の声はどうやら聞こえなかったらしい。

あまりにも小さな声だったから、きっと同い年の私にしか聞こえなかったかもしれない。


 灯花は、病内を駆け出した。

ふらつきながら、長い廊下を走り出した。

そんな灯花の様子を訝しげに後を追う、天狼と美鈴だった。

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