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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第一章 助けてください!天狼さん。
7/310

保健室にて。

 テストが終わると晴れて冬休み。

というのはいかないだろう。

勉強しなかったツケというものは、追試という形で返ってくる。

仕方ない、覚悟の上でテストを受けたのだから。

それにテスト以上に気になり過ぎて集中できなかった。

天狼さん。

まさかの先生になっているなんて!

いつそうなったんだろう?

私が学校休んでいたうちに担任変わっていたなんてびっくりだ。

天狼さん(先生)に話をしよう。

そう思い、天狼さん(先生)に声をかけようとしたがうまくいかなかった。

どうしても、他の生徒に阻められて話すことができなかった。

他の生徒がいるとビビって声が出なくなる。

普通に話せばいいのに、相手は先生だしまず無視することはないのに。

わかっているのに話せない自分がいた。

重い口が開かず、うっとかあっとかしか出せなかった。

なんとか二人きりで話をしたいがタイミングが見つからなかった。

天狼さん(先生)!人気ありすぎ!

そんなこんなんで、テスト期間中は一切話をすることなく終わってしまった。

あっでも、ちらちらと目線だけは気づいていましたよ。

天狼さん(先生)も私の事気にはしていたぽい?


 天狼さん(先生)と話をしたい!

だけでテストが終わっても学校に通った。

今の私はまさに空気。

クラスの中では空気になっている。

誰の目に留まっていないのは明らかだ。

いない扱いは心地いとも思える。

私にしたら好都合だ。

後は天狼さん(先生)と二人きりで話すタイミングだけ。

天狼さん(先生)が教室に出ると後を追う。

何人もの生徒が天狼さん(先生)を囲う。

そして、チャイムが鳴り生徒たちに追われるように職員室に向かってしまう。

なら職員室に行けばいい考えが思いつくがそうはいかない。

職員室にも生徒が来ている。

授業の手伝いか質問かそれなりに天狼さん(先生)の用事で来ている生徒が何人もいる。

隙がねえぇー!

タイミングどころか近寄れないが敗因だろう。

廊下の角で隠れつつそう思った。

傍から見たらストーカーぽいのようだが仕方ない。

仕方ないのだこれは!

堂々と廊下を歩けないよ!

周りの視線が気になってどうしてもこうなるのだ。

そんなこんなんで気づけば放課後だった。

放課後になっても後をつけては隠れての繰り返しだった。

廊下の角で隠れていると自分の左肩に軽い衝撃が走った。

「ひゃいあ!」

後ろを振り返ると白衣を着こんだ女性が立っていた。

消毒液のにおいで、女性が保健の先生だとすぐに分かった。

黒髪で後ろで一つにまとめていて、白衣の下は緑のワンピースを着ていた。

他の女性先生たちと比べてとても清潔感があり、よく落ち着きのある女性だった。

何事にも優しいそうな雰囲気がでていて、めったなことに怒らない人なんだろうなと思った。

「驚かせてごめんね、朝峰さん…だよね?」

少し自信なさげそうに伺う、保健の先生に慌てて言い返す。

「はっはい!わっわたしです!」

答えると先生は、ほっと安心した様子になった。

「ごめんね…朝峰さん、教室にいなかったから…その、話したことなかったからわからなかったの…だから急に声かけてごめんなさいね」

「いいいえ!だっだいじょうぶです」

「そう、少しお時間もらってもいい?」

「はい、全然だいじょうぶです」

内心焦りながら保健室へと足を運ぶとなった。


 保健室に入ると暖房がよく効いていた。

ああったけー!

室内に設置しているストーブの近くに寄る。

あったけぇ…

さっきまで自分が冷え切っていたなんて気づかなかったな。

保健室とはもっと殺伐とした医療品ばかりかと思ったがそうじゃなかった。

くまのぬいぐるみやピンクのクッション、花柄の毛布とか明るくて穏やかな室内だった。

「寒かったよね、ゆっくりしていってね」

先生は暖かい紅茶を振る舞ってくれた。

とても香りがいい匂いが漂ってきた。

茶請けがクッキーとは気前がいい。

椅子に猫型の座布団を置いてあったのを、そのまま腰掛ける。

「いただきます」

紅茶を口にすると、口の中の冷たいものが無くなった。

きっと、唾液まで凍っていたのかもしれない、普段飲まない紅茶が美味しく感じた。

「クッキーもどうぞ、家庭科の子が作ってくれたのよ、とてもおいしいから食べてみて」

星形のバタークッキーにハートのチョコクッキーとかあって乙女心が詰まっていた。

これが女子力かすげえ!

しかも、サクサクして丁度いい甘めでおいしい!

いくつでもいける!

食べ続けていると先生は切り出した。

「最近どうかな?」

「……えっと…」

きっと、私が学校さぼっているから心配しているのだろうか?

学校休みがちなのは今に始まったことじゃないし、どうしよう…。

答えに戸惑っていると先生が答えた。

「ああ気にしないでね、無理に話すことはないから…何か困ったときには頼ってほしいなって思って…」

こうしてわざわざ呼び出すからには先生なりの気遣いだろう。

先生に心配かけてしまっている。

うっとくる感覚に少し胸やけを起こした。

気にしなくていいのにと心の奥でぼやいた。

「相談とか気軽にしていいから…ね」

先生は私を気遣いながらの会話だった。

なんとかその話を切りたくて別の話を出した。

「あの、その、私の担任…」

「うん?」

「担任の先生は、いつ変わったんですか?」

「えっと…久遠先生のこと?」

急な話に先生は少し驚いていた。

「私その、休んでいて担任変わっていたなんて知らなくて…」

「ああそうね、変わっていてびっくりしたよね…えっとね、田中先生はバイクの事故を起こしてね今入院中なの」

「え?」

田中先生は体つきのいい体育教師だった。

まさかのバイク事故。

「それで、臨時の教師が久遠さんなのよ」

「くおん?くおん…久遠」

久遠ってあの眼鏡の人の名前だったような…

天狼さんに、顔つきがどこか少し似ているような感じだったから意外と覚えていた。

顔は覚えていても名前は覚えてなかった。

先生はメモ帳を取り出して書き出してくれた。

久遠司狼くおんしろう

なんだかすごくかっこいい名前。

「久遠先生は教師としてはまだ成りたてだそうよ、担任を受け持つのは初めてだから何かと困ったことがあたら助けてあげてね」

「わっわかりました…でっでも急ですよねあんな先生来て…」

「そう!そうなのよ!私びっくりしちゃって芸能人でも来たのかなと思っちゃって!」

いきなり太い声となって帰ってきた。

「あっごめんなさい、でも誰だって驚くわ。だってあんなにイケメンだったら…ねぇ」

先生の言う通りだと頷いた。

「まだ、挨拶程度しか話したことはないけれどきっといい先生だと思うの。とても真面目な先生だから、生徒のこととか真剣に聞いているみたい。だからね、朝峰さんこときっと聞いてもらえると思うわ」

「はい?」

「久遠先生のこと、もう少し待ってあげてね」

「えっ」

「本当は久遠先生に頼まれてあなたに話かけたの」

「えぇ!」

「まあ、この学校に来たばかりだったし、しかもテスト期間中だったから色々と忙しいみたい」

気にしていたんだ私の事。

なんだか少し照れる。

「そっそれを聞いて良かったです…ほんとに」

無視とか決め込まれたら、どうしょうか思っていたから安堵した。

「ええ、私もあなたと話せてよかったわ」

いつの間にか胸やけは治まっていた。

「そうそう、久遠先生の授業は受けたかしら?」

「えっ?まだですけど…」

そういえば何の教科だろう…

国語か歴史かあるいは数学ってところだろう…

「そう?じゃあ近いうちかしら、体育」

体育かよ!

「グランド何週も走るそうだから…頑張ってね、持久走」

引きこもりにとっての体育は一番の苦手分野です。

むしろ地獄。

学校どう休もうかなと思い始めた頃、先生の携帯が鳴った。

「あら、ごめんなさい」

そう言うと携帯を持って室内から出て行ってしまった。

廊下一歩出れば凍える寒さだ。

わざわざ出なくてもいいのに…

生徒に聞かせられないことだろうか?

そう思いながら、紅茶をすする。

紅茶を飲み干した頃には、先生は戻って来た。

「ごめんなさいね、急な電話だったから…」

「いいですよ、気にしないでください」

この先生は、本当に気を遣う先生だ。

こういう先生は、いい先生だと思った。

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