ホワイトクリスマス。(その18)
灯花が天狼の前に立ち阻んだ。
「だめ!」
「なるほど…灯花。それが、お前の答えか」
天狼が灯花を脅しても、どかないのは、そう言う事なのだろう。
天狼は、大太刀を大きく振り下ろした。
灯花は、ぎゅっと目をつぶった。
カッキーン!
鉄と鉄が擦れる音が響いた。
灯花は、突然の衝撃に、目を開いてしまった。
衝撃の正体は、天狼の腕の力によるものだった。
灯花は、天狼の腕の中にいた。
天狼は、灯花に大太刀を振るっていなかった。
刃を振り下ろしたのは、黒い扇を盾替わりにしている赤い着物を着た男だった。
「くふふ、ふふふ…」
赤い着物を着た男は、不敵に笑いながら天狼と対峙していた。
天狼は、男の名を呼んだ。
「神楽夜!」
天狼は、刃のような鋭い目を向けながら、神楽夜に吐いた。
「よくも無垢子を堕ちさせたな!地獄の業火に焼かれて滅せられるがいい!」
天狼は、灯花を抱きながら、強い怒気を吐いていた。
白い着物を翻しながら、天狼は青い炎を四肢にまとわせた。
そんな天狼を神楽夜は、ケラケラ笑いながら黒い扇で仰いだ。
「くふふふ」
その笑い声に挑発を感じた。
天狼は、勢いよく青い炎を神楽夜に向けて投げた。
神楽夜中心に、天井に向かって炎の柱が立ったが、未だに男の笑い声は消えなかった。
「くっふふふ、熱いねぇ」
炎の柱の中から、柱を斬るような黒い閃光が見えた。
柱は、黒い線を引かれ真っ二つに割れ、炎は掻き消えた。
焼き払ったはずの男は、扇で仰ぎながら現れた。
神楽夜は、無傷だった。
天狼は、薄々気づいていた。
この程度では、神楽夜を滅せることができないということを。
何より、懐にいる幼い灯花がいては、こちらが不利だと判断する。
どうにか、灯花を神楽夜から放さないといけなかった。
神楽夜の狙いは、この天狼。
わざと神経を逆なですることをし、私の冷静さを欠かせるのが狙いだ。
そして、子供たちを遊びと称して、蟲たちと番わせて仲間を増やし、私に滅せさせるのが目的だ。
要するに、私と遊びたいのだろう?
お前は、何も変わらないな…
親に構って欲しくてたまらないのだろう。
悪さをしては困らせては、いつまでも天狼にしがみつく。
哀れな我が子。
何度も叱りつけたが、お前の癖は、治りはしない。
治りはしないとわかっていながら、天狼は、何度も叱りつけてしまう。
その繰り返しが、何度も起きている。
やめなければならない…
親子の情を天狼が捨てなければならない。
天狼が子供たちを大事にすると、神楽夜は嫉妬する。
巻き込まれた子供たちは、天狼のせいで堕ちてしまう。
そして、天狼の懐にいる灯花も神楽夜にとっては嫉妬の対象である。
本当にすまない、灯花。
また、天狼が引き寄せた業に巻き込ませてしまったな…
天狼が好いたばっかりに…




