ホワイトクリスマス。(その17) 夢の灯花(最終)
灯花たちは、階段を下った。
最初にいた階層には、天狼がいなかったからだ。
灯花の前には先行している女性がいる。
無口だが、灯花のことを考えていることはわかった。
遅れていると立ち止って待っててくれる。
先ほど、女性がこの病院の事を歪んでいると言っていた。
この人の言う通り、この病院はおかしい所がたくさんあった。
それを気づいても、今の灯花にはどうしょうもできない。
今は黙って、この女の人について行くしかなかった。
階段を下って行くと、肌に熱気が漂って来た。
目を凝らすと灰が上へと舞い上がっていた。
「…っ!」
女性は、何かに気づいたようだった。
階段を急いで下り始めた。
灯花も少し遅れつつ続いて行った。
下へと進むと、灰の量が多くなってきた。
誰かが、何かを燃やしたの?
舞い上がる灰は、下から上がって来ているようだった。
女性は、急に立ち止った。
どうしたのだろう?
灯花は女性の様子を伺おうとしたが、生臭い臭いが漂ってきて顔をしかめた。
「くさい!」
あまりにも臭さに、すぐに鼻を押さえた。
「灯花、先に行って。白いわんこは、この下にいる」
「…………。」
女性の真剣な口調に、灯花は静かに頷いた。
ここは、一階だった。
この階層に何かいるのは、なんとなく灯花にもわかった。
女性は、黒い手袋をしっかり絞めて、ゆっくりと一階へと足を降りた。
女性の一つに束ねた黒髪がさらりと波打った。
灯花は、女性の後ろ姿に美しさを感じた。
きれいな人だな…
青い雨を思い出す。
天狼と違って、静かな輝きがある。
いつまでも見ていたいと思った。
女性は、灯花を置いて廊下へと出て行った。
灯花は、女性を見送り、そのまま灰が舞い上がる階層へと下って行った。
一階から下へと進むと、そこは真っ暗だった。
くらっ!
階段は、ここで終わっていた。
「わんわん?」
天狼がいるって聞いたけど…
「わんわん、どこ?」
灯花は辺りを見渡したが、暗くて何も見えなかった。
怖い思いはずっとしている。
けど、またわんわんに会えるって聞いて、もう少し頑張ろうと思った。
真っ暗闇の世界をゆっくり進んだ。
突然、強い風が顔に当たった。
「うわっ!」
すると、急に青い光が目に飛び込んで来た。
「っ!」
青い光が辺りを照らしたおかげで、この場の状況がわかった。
目の前にわんわんの背中が見え、その奥に、あの女の子が笑いながらこちらを向いていた。
わんわんが大きな刃物を振り上げて、女の子に向けていた。
灯花は、泣いていた人影を思い出した。
このままだと、あの人影はずっと泣いたままだ。
なんとかしなきゃ!
灯花は、わんわんの前に出て来て、両手を広げた。




