ホワイトクリスマス。(その8)
病内の廊下が静かになった。
青い炎で、黒蟲たちを焼き払ったからである。
しばらくは、黒蟲たちの動きが鈍くなるだろう。
その間に、少女を探すとしよう。
抱えている灯花の無事を確かめながら、廊下を歩き始めた。
「灯花、無事か?」
「ぶううーー!粉まみれーー!」
灯花は、灰を被ったみたいだった。
「目を擦ったらならんぞ。私が払ってやるから、待ってくれ」
天狼は、立ち止って灯花を降ろし、灰を払った。
灯花にくっついていた黒蟲は、一緒に焼けて灰になったようだ。
鬼火といえども、火を扱う。
人肌に当たれば、やけどもする。
灯花に当たらぬように鬼火を使ったのだが、大丈夫だろうか?
「大丈夫か?熱かっただろう?」
「ううん、あつくなかったよ?」
「…そうか、それはよかった」
ひとまず、安堵した。
今の灯花は、不安定な存在になっている。
幽世では、現世にどう影響するか、分からない。
大事が無ければいいが…
灯花がいきなり、声をあげた。
「あっ!」
灯花は、急に廊下を走り出した。
「どうした?灯花」
天狼は、その後を追った。
廊下の先に、厠があった。
灯花は、その厠に入って行った。
幽世と言っても、女子の厠は入りづらい。
「灯花!用でも足すのか?」
灯花の用が終わるまで、外で待つしかないな…
とは言っても、あまりゆっくりはできないが。
「みーつけた!」
灯花の声がして、厠を少し覗いた。
灯花が言った先には、個室があった。
個室の扉がゆっくりと音を立てて開いた。
そこから現れたのは、花柄のパジャマを姿の少女だった。
「みつかっちゃった…」
灯花と少女は、仲が良さそうだった。
少女は、灯花の手を取って、笑った。
「じゃ…次は…あなたが、かくれる番ね…」
そう言った途端に、厠の電気が消えた。
「…っ!」
天狼が、慌てて厠に入った瞬間に、電気が点いた。
その時には、灯花の姿がなかった。
「灯花!」
しまった!連れていかれた!
その場に残ったのは、花柄のパジャマ姿の少女だけだった。
「…すまぬが、灯花を返してくれぬか?」
この子が、隠したことは分かっている。
「あなたは…だれ?」
「私は、あの子の友人だ。だから、返してほしい。頼む」
懇願しながら、頭を下げた。
少女は、困った顔した。
「う…ん……わたし、かくしてないよ…」
天狼は、目を見開いた。
「では、勝手に消えたと?」
「うん…」
まさか…別の何者かが、灯花を連れて行くなどと…
蟲の仕業か?
だとしたら、時を読み過ぎだ。
蟲が遊びをするなど、あり得ない。
だが…一つ、心当たりがある。
天狼は、口を押さえた。
憤りを抑えるためだ。
灯花を隠したな!神楽夜!




