ホワイトクリスマス。(その7)
天狼は、幼い灯花と一緒に少女を探すこととなった。
少女は、花柄のパジャマを着ていた。
ここの入院患者なのだろう…
「さて、どうするか…」
…においがしない、御霊をどう探すか…
このままだと御霊を蟲に喰われてしまう。
それに、灯花をこのままにはできない。
いつまに、幽世に迷い込んだのだ?
迷い子だから仕方ないが…
天狼は、灯花をじっと見る。
可愛らしいな…
灯花のほほをつんと指で押す。
「むう?」
灯花は、きょとんと天狼を見た。
「わんわん?」
「そろそろ、探しに行くか?」
「うん!」
天狼は、灯花の笑顔に微笑んだ。
病室から廊下に出ると、パラパラと黒蟲が降って来た。
「…っ!」
「ふにゃああ!」
幼い灯花は、服に付いた黒蟲をぱたぱたを叩いた。
天狼は、灯花を連れて一旦、病室に戻った。
灯花についている黒蟲を取りつつ、状況を見た。
黒蟲たちが、動き出している。
あまり、時間がないのかもしれない…
灯花を一人で幽世から、戻すことは難しくなってきた。
ならば灯花は、この天狼が導いてやらねば…
天狼は、灯花を抱き上げた。
「わあ!」
「しばらく、私に掴まってくれるか?」
灯花は、にぱあっと笑いながら言った。
「わんわんの耳だあー!」
小さな手が獣耳に触って来た。
「できるだけ、優しく触ってくれ…この耳は生き物だぞ…」
遠慮なく握ってくるので、少しばかり顔をしかめた。
「灯花、痛いんだ…頼む」
私が言うと、灯花は握るのをやめた。
「むうぅ…痛かった?」
「痛かったぞ」
灯花は、ちょっと涙目になって言った。
「むうぅう…ごめんなさい……」
天狼は、顔を近づけて灯花のおでこに、こつんと当てた。
「わかればよい、灯花は素直で良いな」
微笑みながら、灯花に告げた。
「灯花、私に掴まっててくれ。もし、蟲が付いても少しだけがまんしてくれ。あとで、きちんと払うから大丈夫だ」
「うん」
灯花は、私に腕をまわした。
「いい子だ…」
天狼は、灯花をしっかりと抱き寄せて、廊下に出た。
天狼は、長い廊下を走った。
黒蟲たちが天井から湧いて落ちて来ていた。
雨のようにパラパラと無限に降り続ける。
もはや、慎重どころではないな…
痺れを切らした黒蟲たちが、仕掛けて来ていた。
廊下を走っていると、黒蟲の群れが形をなして、巨大な黒蟲となって襲ってきた。
「でかあ!」
灯花が叫ぶと天狼は、持っていた大太刀を素早く取り出して、巨大な黒蟲を一刀両断する。
斬れた黒蟲から、黒血がとびっ散った。
天狼は、灯花を抱き直した。
「灯花、目をつぶってくれ。目が痛くなるぞ」
「うん?」
天狼は、風を感じた。
この廊下に流れる風の道を感じ取りながら、身に宿る炎を練る。
巨大した黒蟲が再生始めた。
無数の黒蟲には、大太刀で斬ったところで無駄なことは分かっていた。
だからこそ、こちらにはそれを一掃する力がある。
「世界の理にそって、お前たちを消してやろう」
火種と風と燃やすモノがそろえば、何になるかはわかるな?
天狼は、足元に散った黒血を踏む。
すると、青い火がガソリンに引火したように散った黒血に広がった。
青い火は、青い炎となって、風を通して廊下中に広がり、黒蟲たちを燃やし尽くした。
焦げたにおいが鼻に着いた。
黒蟲たちの残骸が白の着物を汚す。
灰は、力なく風に踊る。




