ホワイトクリスマス。(その6)
天狼は、上へと階段を登った。
3階へと足を運ぶと、小さな足音が廊下から聴こえて来た。
廊下に出ると、小さな人影が通った。
迷い込んだ者がいるみたいだな…
人影を追おうとするが、天狼は足を引いた。
足元に黒蟲がいた。
黒蟲たちがゆっくりと動き出していた。
足元の黒蟲を踏み潰せば、この病内を埋め尽くすほどの、黒蟲が湧く。
黒蟲が湧けば、迷い込んだ者を導くことは困難になってくる。
ここからは、慎重に行動しなければならない。
この廊下の先に、迷い込んだ者がいるのは間違いない。
天狼は、天井に黒蟲たちの気配を感じていた。
黒蟲たちは、こちらを伺っている。
天狼は、少し息を吐いた。
廊下のあちらこちらに、黒蟲が落ちていた。
それを踏まぬように、そっと歩いた。
天狼は、ある病室の前まで来た。
迷い込んだ者のにおいがここから来ていた。
先ほどの、小さな人影もこの病室に入って行ったみたいだ。
天狼は、病室の扉を開けた。
病室は、質素な個室だった。
天狼が病室に入ると、ある気配を感じた。
それは、ベットの下から感じていた。
天狼は、ゆっくりと腰を下ろし、柔らかな声音で声をかけた。
「怖がらなくてもよい、どうか姿を見せてくれまいか?」
「…………。」
「うん?」
ベットの下から、もそもそと動くのが分かった。
ベットの影から、にょきっと小さな手が出ていた。
天狼は、そっと手を差し出すと、その小さな手は天狼の手を取った。
ベットから出て来たのは、小さな女の子だった。
黒髪の白いワンピースの少女だった。
どこかしか、灯花に似ていた。
少女は、天狼の顔をじっと見ていた。
「わんわん?」
少女は、口を大きく開けて笑った。
天狼は、微笑みながら少女に言った。
「こんな所で何していたのだ?」
少女は、にぱあと笑いながら答えた。
「かくれんぼ!」
「かくれんぼ?誰とだ?」
「うんとね、えっとね、あの子とね、かくれていたの!」
「あの子?」
少女が指を指した。
指す方向は、私の後ろだった。
天狼は、後ろを振り向くと、そこにはもう一人の女の子が立っていた。
花柄のパジャマを着ていた。
ここの入院患者だろうか…
花柄のパジャマの少女は、私と目と合うと、廊下を走り去ってしまった。
「あっ!見つかっちゃったあ!」
目の前の少女は、しまったと言わんばかりに頭を抱えた。
天狼は、走り去った少女のことを考えていた。
迷い込んだ者は、この子で最後だ。
この幽世での、においはほとんどかぎ取っている。
だとすると、あの子は…
「もう!わんわんのせいだよ!むうぅ!」
少女は、ほほを膨らませて言った。
天狼は、少し困った顔をして、少女に謝った。
「すまんすまん、まさか、かくれんぼしてるとは思わなかったんだ。どうか、許してくれ」
天狼は、少女のほほをそっと触れながら、許してくれるよう頼んだ。
「うん?」
少女は、そんな天狼に口をとがらせて言った。
「ぶううーー!」
「では、どうしたら許してくれるか?」
天狼が問うと、少女は口を大きく開けて言った。
「じゃあ!かくれんぼ手伝って!とーかが鬼なの!」
天狼は、少女の言葉に少し驚いたが、すぐに笑みをこぼした。
「わかった。灯花、私が手伝おう」
返事を聞いた少女は、にっこりと笑った。




