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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第ニ章 えっ?友達ですか!天狼さん。
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ホワイトクリスマス。(その5)

 天狼は、再び歩き出した。

まだ、迷い込んだ者がいる。

天狼は、カウンターから上の階層へと足を運んだ。

階段を登ると、松葉杖の男が階段の上に座っていた。

天狼は、松葉づえの男に見覚えがあった。

「…隆二りゅうじ殿?」

1年C組の元担任。 

田中隆二。

専門教科は、体育。

バイク事故のため入院していたが…重い病気にかかり、再入院。

天狼は、虚ろの男にそっと、肩を叩いた。

「隆二殿…」

男は、名前を呼ばれて、ゆっくりと顔を上げた。

「あなたは…」

天狼は、男の隣に座り、様子を伺った。

「隆二殿、なぜこんな所に?」

男は、天狼の言葉にゆっくりと答えた。

「……おれは、駄目な先生なんだ…」

天狼は、隆二殿の言葉に驚いていた。

まさか、その言葉を聞くとは思わなかった。

隆二殿は、私と事故ったあと、私に生徒を頼むと言って入院した。

己がこんな状態だと言うのに、最後まで生徒たちのことを想っていた。

天狼は、そんな隆二殿に惹かれた。

私も生徒たちを持っている。

武道の師として、教え込んでいるのだが、大半は生徒たちの個性を優先としているため、私が教える事と言えば、己を守るすべばかりだ。

誰かを救うことは、二の次だと生徒たちに言ったことがある。

それくらい山犬たちの現状は厳しいものだった。

天狼は、柴田しばたりんを亡くしている。

りんの相方を務めていた私だ。

その責を私が担う。

りんが最後まで守り通した、灯花を守らねばならない。

灯花が迷い子となってしまったのも、運命さだめとなった。

天狼は、隆二殿に言った。

「隆二殿、あなたは良い師となれる。その想いがあれば、いくらでも生徒たちを導ける。これから、そうなれば良い」

隆二殿は、ゆっくりと目を見開いて私を見た。

「あなた…誰ですか?そんなことを言ってくれる人なんか…俺には…」

「私は、天狼。隆二殿のこころざしが私を導いたのだ。胸を張られよ」

「てんろう…」

隆二殿は、じっと私を見ていた。

私は、ご覧の通りのなりだ。

見られるのは、慣れているが…恐れられるだけは避けたい。

「隆二殿…私は…」

「あなたは…犬の神様なのですか?」

「……犬ではなく、狼のほうだ」

ちょっと、むっとした。

私は、そんな可愛らしいものじゃないし、人から常に恐れられてきた存在だ。

「これはこれは、とんだ失礼を…」

隆二殿は、軽く謝罪をした。

「わかればよい」

天狼は、すぐに水に流した。

「隆二殿…幽世ここにいてはならん。すぐに己がいるべき所へ戻るのだ」

「そうしたいのですが…私はもう…駄目なのです」

「…隆二殿…」

「私は、教師なのですが…先日、校長から長い休暇をいただきました…」

隆二殿は、重い病気だと聞いた。

それが、幽世ここにいる原因なのだろうか…

「自分としては、骨折した程度の怪我でした。ですが、病気が見つかったと聞かされました…」

隆二殿は、ひどく落ち込んでいるようだ。

「隆二殿…」

「私は、なのです…」

「……はっ?」

「手術が必要なほどの、いぼ痔なのです!」

天狼は、言葉が出なかった。

「…………。」

「校長にそのことを伝えたら、ゆっくりじっくりと治すように言われました。笑顔で言われました…しかも、治ってからも、ゆっくり家族旅行でもと言われました。それって、私が教師として失格だったからでしょうか?それとも、いぼ痔ごときで手術しようとした私が悪かったのでしょうか…」

「…………。」

天狼は、少し悩んだ。

隆二殿は、重い病気だと思っていた。

まさか、痔だったとは…

それに、校長もなぜに長期の休暇を?

天狼は、隆二殿に答えた。

「とにかく、隆二殿はその病気を治すことに専念してくれ。教師うんぬんは、治ってから悩むといい」

隆二殿は、ゆっくりと立ち上がった。

「そうします…」

お尻には、少しばかりか血が付いていた。

「りゅ、隆二殿…大丈夫か?」

隆二殿は、ゆっくりと私に告げた。

「大丈夫です…私は教師ですから…あなたの言う通り、まず自分を治します。話はそれからですね…」

少しばかり気を上げられたようだ。

これで良かったのかは分からないが、現世うつつよに戻られるようだ。

「私の悩みを聞いてくださって、ありがとうござしました。それでは、天狼様もお気をつけて…」

隆二殿は、軽くお辞儀をして、松葉づえを使いながら戻って行った。

天狼は、田中隆二を見送った。

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