ホワイトクリスマス。(その4)
天狼は、再び歩き出した。
長い廊下を進むと、カウンターが見えて来た。
看護師がここで、患者の書類を扱っているみたいだ。
すると、どこからか足音が聴こえて来た。
天狼は、迷い込んだ者をまた一人と見つけた。
「巡回ですか?」
天狼が問うと、懐中電灯を持った看護師が言った。
「あなたは…えっと…確か、今日入院した…久遠さん?」
天狼は微笑みながら答えた。
「はい」
看護師は、目を見開いて近づいた。
「久遠さん!今何時だと思っているのですか!就寝時間ですよ!早く病室に戻ってください!」
天狼は、少し後ずさった。
灯花に会えば、真っ先に言われそうな言葉だ。
「さあ!戻りましょう!」
「…まあまあ、そう焦らず…」
「もう!あなた含めて二人目です。勝手に病室を抜け出すなんて」
「二人目?」
「203号室のおじいさん。どこかで見かけませんでしたか?」
天狼は、ふと先ほどの老人のこと思い出した。
老人も病室を抜け出していた。
「…もしかしたら、あのご老人はもう戻られていると思うぞ?」
「久遠さん!見かけたのですね!」
看護師は、ずいっと詰め寄った。
天狼は、また後ずさった。
この看護師は、本当にお強い方だ。
この幽世でも、はっきりと目的を持って行動している。
「でしたら!久遠さんも病室に戻ってください!」
「私は…」
「問答無用です!さあ戻りましょう!」
天狼は、困った。
こうも、強く言われるとはな…
だが、ここは引いてもらわねば。
天狼は、看護師の肩をそっと掴んだ。
看護師は、いきなりのことで驚いていた。
「なっ!」
天狼は、看護師の目を捉えて言った。
「すまない…私は、やらねばならぬことがあるんだ。ことが済み次第、すぐに病室に戻る。この天狼の名に誓って…」
看護師は、ほほを赤くした。
「…は、い…」
天狼は、看護師の髪をそっと撫でた。
「それに、随分とお疲れのようだ。幽世で休むより、ゆっくりと横になれる所で休んだ方が良い」
微笑みながら、看護師をゆっくり放した。
看護師は、先ほどより顔を真っ赤にしていた。
「…わっわかりました…久遠さんも用が…すっすんだら、すぐに戻ってくださいね…」
天狼は、理解してくれたことに感謝した。
「ああ、約束しょう」
「……っ!!わっわたし!行きますから!きっ気を付けてください!」
看護師は、そのまま振り返って走って行ってしまった。
可憐な看護師だったな…
天狼は、看護師を見送った。




