ホワイトクリスマス。(その1)
天狼が目を覚ますと、傍らに娘が眠っていた。
小さく呼吸の音を吐きながら、私の手を取って握っていた。
起こさぬように、娘の顔に掛かる髪をそっと払った。
また、泣いたのだろうか?
泣いた跡が残っていた。
この子は、私に出会った時からこうなる運命だった。
「お前は、私に出会ってはならなかった…救われてはならなかった」
朝峰灯花は、私によって迷い子になってしまった。
幽世へ堕ちやすくなり、現世での生活も困難になってきていた。
「すまない…灯花。私が、手を出してしまったために…」
灯花の首元には、包帯が巻かれている。
私は、そっとほどくと、刀傷が残っていた。
今、嘆いても灯花の日常は、返っては来ないというのに…
私は、愚かだな…
灯花の刀傷をなぞるように触れた。
しばらくして、廊下から靴音が響いて来た。
病室の扉は外れていて、誰が鳴らしているのかすぐにわかった。
眼鏡をかけ直しながら、病室へと入って来た黒服の男は言った。
「天狼様、正直そのまま帰ろうと思いました」
国光の呆れまぎれの言葉に私は答えた。
「そう申すのではない、国光」
「無茶をなさらないでください。山犬の皆が心配しておりました」
「それは…すまない」
「彼女の身はこちらで保護するつもりでした。天狼様が、駆け出して行かれることではありません」
「どうしても、灯花に会いたくてな…」
「それが、この結果ですか」
「…そう怒るな、美鈴にも、責めないでやってくれ」
「いいえ、美鈴にはきつく叱っておきます。弁償代がありますので」
国光は、外れている扉を見てそう言った。
言っていることは、分からんでもないが…
私は、あることを国光に告げた。
「国光、ここの蟲を滅するぞ」
国光は、少しため息交じりに言った。
「…そうだろうと思いました。持って参りましたので、こちらを…」
国光は、カバンと長い包みを私に渡して来た。
カバンの中には、いつもの着物が入っていた。
白い着物に黒の袴だった。
私は、それに着替えると国光に言った。
「仕事が早いな、助かる」
「それが、私の仕事ですので」
国光は、よくやってくれている…
その彼の前で、休むわけにはいかないかった。
「この土地は、よく蟲が湧くな…」
「それは、この土地に大本が存在しているからでしょう…」
「そうだな…」
私は、滅せなければならない。
もう一人の自分を。
長い包みから、大太刀を取り出した。
「また、長い夜になりそうだ…それまで、灯花はここで休んでくれ」
私は、起こさぬように、そっと灯花の額に口付けを落とした。
灯花は、ぐっすり眠っていて、ぴくりとも動かなかった。
そんな灯花に、私は少し笑みがこぼれた。
今日は、お兄ちゃんにプリンを食べられました。
貴様の持っているプリンをよこせえぇー!(゜Д゜)ノ




