ブラッククリスマス。(その14)最終。
私達は、無事病院に到着した。
「よし!着きましたよー!天狼さん!」
天狼さんは、顔色は悪いが意識は、はっきりとしているようだった。
「そうか…」
普段から良く鍛えているのだろう。
平然と車の揺れにも耐えていた。
車のドアを開けようとすると、美鈴さんは蹴り上げてドアごと外した。
「美鈴さん!静かに開けてください!」
「灯花、まず壊したところからつっこむべきでは?」
天狼さんは、静かに車から降りた。
タクシーの運転手は、青白い顔をしながら私達を見送った。
病院内に入って、急いでカウンターいる看護婦さんに詰め寄った。
「急患!急患!急患!」
「早くしろ」
美鈴さんは、指を鳴らしながら看護婦さんに近寄った。
看護婦さんは血の気がサーと引きながら言った。
「い、い、今、先生呼んできますので!」
逃げるように走って行ってしまった。
本当に大丈夫か?
「天狼さん大丈夫ですか?」
「無論、大事ない…」
天狼さんは、心配するなと言うように、優しい顔した。
私は、その顔を見てふつふつと何かがこみ上げて来た。
それは、すぐに限界値を超えていて、気づいたら大声で怒鳴っていた。
「うそつけぇ!」
「…っ!」
「こんな怪我をして、大事ないって!ふざけるなー!」
「……………。」
天狼さんは、私の怒鳴り声に固まってしまった。
「人に無理するなって言いながら!自分はしっかり怪我してきて!天狼さんは、本当にばか!あほ!まぬけ!この駄犬!宇宙人!」
天狼さんは、わからない単語が出て来たと言わんばかりにきょとんとした。
「…うちゅうじん?」
私は、めんどくさくなって言ってしまった。
「辞書で調べて!」
「わかった」
天狼さんは、納得したみたいだった。
私は、一番重要なことに気づいた。
「あれ、人狼って…病院に診せていいんだっけ…」
私は、天狼さんの身体を触りまくった。
いい体つきだ。
そして、いい筋肉だ!
「とっ灯花…」
私は、次に白い尻尾を掴んだ。
「うぐっ!」
「マジもんだ!やべえ!」
ふさふさしていて、気持ちいい。
「こらっ!勝手に触るんじゃない!」
天狼さんは、スッと尻尾を隠した。
少し赤らめていた。
あら、なんだかエロイな…
私、セクハラでもしたか?
「でも、本当に人狼なんですね!尻尾とか本当に本物で……やばいかもしれない」
今度は私が血の気が引いた。
「何がやばいのだ?」
「天狼さん、解剖される!」
未確認生命体である天狼さんは、間違いなく解剖される!
ツチノコ並みの伝説上の生き物なら、大丈夫かもしれないが天狼さんはアウトだ。
「やばい!天狼さん!」
時は、既に遅かった。
天狼さんは、ベットに乗っけられていた。
たくさんの看護婦さんたちに囲われて連れていかれた。
「天狼さあーん!」
すぐに追いかけたが、集中治療室に連れていかれて入れなかった。
「博物館で会うのは嫌だあー!」
きっと、天然記念物扱いだ!
「天狼さあーん!!」
名前を呼んでも声が響くだけで、虚しく終わってしまった。
そんな私に、年配の看護婦さんが目の前に立っていた。
「あんたらあ!院内で大声でしゃべるなああ!」
いや、看護婦さんの声が一番でかい!
年配の看護婦さんにこってり怒られて、正気を取り戻した。
念のため、美鈴さんに頼んで国光さんと連絡をした。
すぐにこちらまで来てくれると聞いて、ひとまず安心した。
タクシーの件は、全部国光さんに任せよう。
ワタシシラナイ。
美鈴さんと一緒に天狼さんの治療を待った。
解剖の件はひとまず置いといてだ。
しばらくして、年配の看護師さんから声をかけられた。
治療が終わったということだった。
天狼さんは治療が終わって、すぐに病室の個室へと運ばれたらしい。
私達は、すぐに天狼さんの元へ向かった。
病室に入ると、静かに眠る天狼さんがいた。
麻酔でぐっすり眠っていた。
先生からは、傷は浅かったが出血は多かったと聞いた。
このまま、血を流していたら危なかったことも聞いて、やっぱり天狼さんはバカだと思った。
「天狼さんのばか」
私は、天狼さんの手を取った。
自分の手と合わせたら、私が子供の手になってしまった。
天狼さんの手は、細いのに皮膚が厚く、力強い手だった。
美鈴さんの安堵の吐息が聴こえた時には、さすがの美鈴さんも天狼さんのことを心配していたんだと思った。
「あなたがいて、よかった」
「えっ?」
「私は、頭が鈍い。判断が付かない所があって、力任せにやってしまう時がある。だから、あなたがいて、よかった。ありがとう」
「そっそんな!私こそ、お礼を言うべきです!私も美鈴さんがいてくれて、よかったです!ありがとうございました」
こんな、いいお姉さんめったにいないよ。
「うん」
言葉は短く返されたが、美鈴さんの表情は優しい笑みを浮かべていた。
美鈴さんは、何も言わずに病室を出ようとしたが、扉を勢いよく開けてしまって、扉が外れた。
「美鈴さん、静かにね。静かにね…」
「うん」
美鈴さんは、うれしそうに出て行ったが、扉は外れたままだった。
よく見たら、ドアノブが無くなっていた。
私は、天狼さんの手をずっと握っていた。
眠っている天狼さんは、静かに呼吸をしていた。
イケメンが眠っているよ…
このイケメンに、友達宣言される私ってどいうこと!
今まで、いい感じだったじゃん!
ハグした仲じゃん!
それを…友達って!
トモダチって!
「この宇宙人…」
やるせない気持ちが少しだけ湧きあがった。
私は、静かに泣いた。
今日は、こんがりプリンを食べた。
明日も、こんがりプリンだ。
明後日は、プッチンプリンだ!(・ω・)ノ




