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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第ニ章 えっ?友達ですか!天狼さん。
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ブラッククリスマス。(その8)

 私達は、視界が光に包まれた。

この光が、きっと出口だとそう思った。

すると、近くにいた真夜が口を開いた。

「ちがう…違うわ!」

「えっ」

「ここは、まだ幽世かくりよよ!」

私は、何度も瞬きをして、視界を慣れさせた。

その世界は、白い霧に包まれた場所だった。

「ここは、屋上なの?」

「そのようだわ」

「うそだろ?」

真夜の言う通りだ。

ここは、まだ幽世だった。

異常な霧の濃さと、さっき出て来た所から黒い煙が漏れ出ていた。

「そんなっ出口はここじゃないの…」

泣きたくなるほど、悔しさが胸に詰まった。

私の考えが甘かった。

この幽世は、簡単なものではなかった。

「泣いている暇なんてないぜ…来るぞ!」

川村君は、出て来た出口を見ていた。

「その通りだわ。まだ、わたくしたちは生きているもの!」

「二人とも…」

川村君と真夜は諦めていなかった。

それどころか、立ち向かおうとしていた。

屋上へと上って来た、首無し男が現れた。


 ぶっぶつぶつぶつぶつ

ぶ、ぶ、ぶ、ぶつ、ぶつぶつぶつ


 頭が無いはずのに、首無し男から声が聞こえた。

バイブレーションの近い、低い声だった。

じりじりと私達に迫って来ていた。

すると、ある一定の距離まで近づくと首無し男は突然、後ろへとのけぞった。

背骨が異常なほどに曲がった。

大量の黒い液体を流しながら、全身から無数の鋭いかぎ爪のような棘を伸ばした。

後から、屋上へと流れ込んだ黒毛虫たちと一体となり、異常なほどの丸い車輪となった。

まるで、黒いタイヤのようだ。

黒い煙をまき散らしながら、今にでも走りそうな雰囲気だった。

「あれに、かれたらまずいわ!二人とも避けて!」

「あいつ、首無しライダーかよ!走るぞ!」

川村君は、私の手を取って走った。

川村君の言う通り、都市伝説の首無しライダーに近いかもしれない。

黒い毛虫たちの群れに乗って、走り始めた。

「ぶっつぶっつぶつぶつぶつぶつ

ぶ、ぶ、ぶ、ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」

バイブレーションのような低い声が響いた。

「あぶね!」

とっさに川村君が、私を横に押した。

首無しライダーは、真っ直ぐに走って行った。

私達は、間一髪でかわすことができた。

でも、川村君は腕と足にに引っかき傷を受けてしまった。

「川村君!」

すぐに駆け寄ろうとすると。

「来るな!」

「でも!」

「次が来ますわ!わたくしの鬼火で応戦します!そのすきに、出口を見つけてくださいまし!」

「ぶっつぶっつぶつぶつぶつぶつ

ぶ、ぶ、ぶ、ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」

再び、バイブレーションの声が響いて来た。

もはや、バイクのエンジン音に聞こえる。

私は、川村君を支えて出口を探した。

この霧の中じゃあ、それらしい場所が見当たらない。

それでも、この場から動かないと恰好の的だ。

真夜は、青い炎を放った。

だけど、青い炎だけでは止めることはできなかった。

バイクの速さと同じのような気がした。

真夜は持っている身体能力で首無しライダーを避けた。

真夜が首無しライダーを惹きつけている間、私達は屋上の奥へと向かった。

「くっそ!」

川村君が嘆いた。

怪我をして自信をなくしたのだろうか?

「川村君!さっきの気迫はどこに行ったの?真夜が言っていたでしょう!私達はまだ、生きてる!あきらめちゃ駄目だよ!」

「……全く、ブーメランだな。俺情けねーな!」

川村君はそう言って、独りでに立って走った。

「急ぐぞ!」

首無しライダーから、引っかけられたんだ。

ぽたぽたと血が零れているのを霧の中でもはっきりと見えた。

手当てする暇なんてなく、一刻も早く出口を見つけないといけなかった。

泣いたら駄目!

私もブーメランだ!

自分で言ったことを責任持たないと!

私達は、必死に霧をかき分けて進んだ。


 屋上の奥へと進むと金属の柵が見えた。

鉄さびがひどくて、押したらすぐにでも壊れて落ちそうだった。

「これって…」

行き止まり?

「まさか、出口って下じゃねーだろうなあ」

川村君は物騒な言葉を吐いた。

柵の下は、霧に包まれていて何も見えなかった。

「…そんなことは無いと思う。でも…」

何か気がかりがある。

「もし、万が一ここから落ちて出口だったらとすると、そこはどこに繋がっているの?」

前回は、土管の中だった。

もし、土管の中じゃなかったら大怪我をする場所だったかもしれない。

この世界は、現実味はあるけど歪んでいる世界だ。

「繋がっているかって、どこだよ?まさか、本当の下とか?」

「私もそうだと思う、出られてもそこは安全地帯じゃないこともある」

そう、私達はより安全な場所に帰ってこなけらばならない。

「うそだろ、あっちのことまで考えないといけないのかよ!」

この世界が残酷なのはよくわかった。

そして、今考えたことはあくまでも可能性だってこと。

鵜呑うのみには出来ないし、何が正解は進んでみないと分からないってことだ。

「考えようよ、もっと考えよう!私達は肝心なところが抜けているかもしれない!」

「肝心な所ってなんだよ!」

胸の中がもやもやする。

もっと単純なことだとカンが言っている。

私は、柵を調べた。

柵を辿っていくと柵が無くなっている所があった。

まるで、ここで誰かが落ちたような場所だった。

「あっ自殺…」

私達は最初、自殺しようとしている人を見つけてこの廃ビルに入った。

そして、幽世に閉じ込められた。

私は、身を乗り出して下を見た。

下は霧で見えないけど、微かに霧が歪んでいるように見えた。

「かさぶた…不安定、入口と出口は一緒…」

りんさん…

「川村君…見つけた」

「何をだよ」

「出口…」

「本当か!でっどこだよ!」

「ここから、落ちればいいんだよ」

「はあ!お前さっき、落ちたら死ぬって言っただろう!」

「そこまで言ってない、あくまで可能性」

「だがよ!」

川村君は焦っているようだった。

そらそうだ、落ちてもそこは安全かどうか分からない。

未知の世界に足を踏み入れることはとても怖いことだ。

この世界に入った時も然り。

私は前に何度か幽世に入っているから、何とか正気でいられたけど、川村君は初めてだ。

強気で頑張っていたけど、ここまで来たら正気ではいられないだろう。

わかっている…私もそうだった。

私には天狼さんがいた。

だからこそ…

私は、川村君の後ろに立った。

「朝峰?」

「向こうでは、きっと天狼さんが助けに来ているはずだから…大丈夫」

「朝峰、どうしたんだ?」

「川村君!天狼さんに伝えて!膿蟲うじは幽世にいない!」

私は川村君を勢いよく押した。

丁度そこは、柵が壊れていた所だ。

「おいっあさっ…!」

川村君は、自殺した人のように屋上から落ちて行った。

川村君が霧で見えなくなって、私は祈るように言った。

「天狼さん…信じているから」

貴方は、私の味方だと言った。

だったら、信じさせて!天狼さん。

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