ブラッククリスマス。(その7)
川村君は、真夜にやられた首を押さえながら、後ずさった。
「くそ、まや子!」
「あ~ら、そんなに気持ちよかった?」
「だまれ!」
真夜はくすくすと笑った。
「さて、準備は出来ましたわ」
これから、この世界から出るためある場所へと向かう。
「屋上だよね」
「ええ、でも邪魔しに来るでしょうね」
「うん、そうだね。でもどうやって突破する?」
「わたくしが、突破口を開きますわ」
「わかった」
「一つ、お願い事がございますわ」
「うん、なに?」
「黒蟲を一匹だけ見つけても踏み潰したりして、殺さないでくださいまし」
「黒蟲?」
「毛虫たちのことですわ。黒蟲たちは、一匹だけ餌のそばに落ちますの。その一匹に何かあれば、仲間を引き寄せてしまいますの」
「わかった気を付ける」
私も黒毛虫を一匹潰してしまった。
その結果、大群に襲われることとなった。
本当に気を付けようそう思った時。
ブチっと何かを踏み潰す音がした。
音がした方向を見て見ると川村君が何かを踏んでいた。
「あ」
「…まずかったか?」
「おおありでございますわ」
ぼとぼとと天井から落ちて来た。
ギチギチギチギチ
ギチギチギチギチギチギチ
黒毛虫たちの大群がびっしりと天井に張り付いていた。
「逃げろーー!」
私達は、資料室を急いで出た。
再び、社内廊下を走ることになった。
後ろからは、黒毛虫の大群が追って来ていた。
廊下を突き進むと、ある程度の広さの広間に近づいた。
広間には、エレベーターがあった。
もしかして、あのエレベーター使える?
「ねえ、あのエレベーター!」
「駄目だわ」
真夜がそう言うとエレベーターから、聞き覚えがある音が鳴った。
ポーーン
何かが、この階にたどり着いた。
「先ほどぶりね…」
真夜がそう呟くと、エレベーターの扉が開いた。
中から出て来たのは、首無し男だった。
黒い煙をまき散らしながら私達の前に現れた。
「エレベーターを使ってくるなんて…」
「ここでは、何が起きるかわからないわ」
真夜が首無し男と対峙すると川村君から声が上がった。
「おい!こっちだ!」
川村君の先は非常口だった。
「やらかしたわりに、いいことするわね」
真夜がそう言うと青い炎を放った。
「今のうちに!」
私は、川村君の所まで走った。
真夜も首無し男をけん制しながら、あとを追った。
非常口に入ると、長い階段を見つけた。
これが現実なら、下へと下るけど、ここは幽世。きっと、下へと下っても私達は、外へには出られない。
私の中のカンが言っている。
出口は上だと。
「行こう!」
私達は、階段を上った。
非常階段を上がっていくと、黒い煙が上へと上って来た。
排気ガスが空気を犯す。
「あいつ、上って来てんのか!」
「いいから、上を見て」
上からも、黒毛虫が降って来ていた。
私達の道を塞いできた。
ギチギチギチギチ
ギチギチギチギチギチギチ
「くっそ!しつけーぞ!」
とっさに真夜が青い炎で黒毛虫たちを焼き払った。
「止まらずに進んで!来るわ!」
下から首無し男が、上って来ている。
私達は、階段を急いで駆け上がった。
「ってか、このビル何階あるんだよ!」
「つべこべ言わずに上る!」
「構わないで進みましょう!」
すでに足が悲鳴をあげているが、それでも、踏ん張って階段を駆け上がる。
上に上がるにつれて、黒煙が酷くなってきた。
だんだんと息が出来なくなってくる。
「もう少しですわ!煙が一番濃くなっている所が、出口ですわ!もう少し踏ん張ってくださいまし!」
ぜいぜいと肺が鳴って来ていた。
手すりに掴まって、必死に上って行く。
黒い煙のせいか、視界が悪かった。
それでも、構わず感覚だけで上る。
川村君が何かにぶつかった。
「痛ってーー!」
「きゃあ!」
川村君にぶつかって、よろけた。
「ここが出口よ!」
真夜がそう言うと、川村君はぶつかった壁に体当たりした。
目の前が真っ暗で何も見えない。
それでも、目の前の壁を壊さないと進めない。
「いけ!おらああー!」
ドッン!
扉が開いた音がした。
私達の視界が突然、光に埋め尽くされた。




