表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第ニ章 えっ?友達ですか!天狼さん。
41/310

ブラッククリスマス。(その5)

 私達は蟲たちから逃れて、資料室で潜めていた。

川村君とは無事、合流することができたが、山犬である、彼女は負傷してしまった。

何とか、三人でこの幽世かくりよから脱出できるだろうか? 

「その犬。名前は、なんて言うんだ?ポチ」

川村君は、彼女に失礼な言い方をした。

「貴方のような方に、お答えする必要ございません」

耳が垂れた黒オオカミはプイっとそっぽを向いた。

「お前、なんか知ってる?」

川村君は私に聞いて来て、何て言えばいいのかわからなかった。

とりあえず、わかることだけを言った。

「ええと…彼女は、オオカミで…」

「それは、さっき聞いた。」

「えっと…ストーカー?」

「よし、ストーカー犬。お前は、この訳が分からない廃ビルを知っているのか?」

「なんて呼び方!ストーカーは認めますけど、犬はやめてくださいまし!」

ストーカーは認めるのか…

「…まや…」

「えっ今なんて?」

川村君が聞き返した、私もよく聞こえなかった。

「…まや。紫苑時しおんじ真夜まやですの。」

「よし、まや犬。聞かせろ」

「失礼通り越して、み殺したくなりましたわ!」

彼女は、うなるように牙をむき出しにした。

また言い合いになりそうだった。

私は、彼女に声をかけた。

「えっと、紫苑時さん?」

名前を呼ばれて、彼女は大人しくなった。

「真夜で、よろしければ呼んでくださいまし、朝峰様」

「わかった。でも、私の事も灯花でいいです」

「では、灯花様と」

「様はつけないで、私そんなに偉くないし」

私がそう言うと真夜は、長い尻尾を振りながら言った。

「では、灯花ちゃんと呼んでもよろしいでしょうか?」

「うん、いいよ真夜」

「はい!」

真夜は、川村君に向かって言った。

「そこの愚かな人間、よく聞きなさい!」

川村君が反応した。

「なあんだとお!」

「何ですの?」

どっちもお互い様だと思った。

また、言い合いになりそうだった。

「二人とも、ケンカはダメだよ!今は、どうするか考えよう」

「ふん、わかりましたわ。灯花ちゃんの言う通りですわね」

「だったら、教えてくれよ」

「特別に、お答えいたしますわ」

真夜は、幽世かくりよのことを川村君に話した。

川村君は少し驚いた様子だったが、少しは納得できたようだ。

「どうりで俺、屋上にたどり着けなかったのか。俺ずっと、廃ビルを駆けずり回っていたぜ」

「貴方が生きていたなんて、運が強いお人だこと」

「これでも、危なかったぞ!あの毛虫の大群に追いかけられるわ、かじられるやらでヤバかったぞ!ってなんだよ!」

真夜は、川村君の身体に近づいて、鼻を擦った。

「じっとしてくださいまし、今貴方のことを調べていますの…」

「はっ?何を…」

真夜は、川村君の身体の匂いをかいでいるようだった。

「くすぐってーぞ!このまや犬!」

「黙りなさい!…むしが入りこんだ感じは無さそうね」

「虫?あの毛虫か?」

「気を付けなさい、あの蟲はとても凶暴よ。普通に人を喰う時もあれば、巣に持ち帰ったり、人の体内に宿ることもあるわ」

「マジかよ!俺、大丈夫か!」

川村君は、自分の身体を触って確かめていた。

「自分自身で調べても分からないわよ、だからこそ、わたくしが調べてあげましたの」

「なんで、わかんだよ」

「においですわ」

「俺そんなにくせーの?」

「ええ、においますわ、貴方の口からハンバーグ定食の匂いが」

そういえば食べたな…

「そんなことまで、わかるのかよ」

「ええ、わかりますわ」

「蟲のにおいは、すぐにわかります。そして、死体に宿る膿蟲うじのにおいも」

「死体?ウジ?なんだそれ」

「貴方が助けようとした方ですよ」

「…助けようとしたって!あの屋上の?俺そいつを…」

川村君は、そもそもその人を助けるために屋上に上ったんだ。

そういう所は、本当に尊敬する。

「その方は既に、亡くなられておりました」

「なんで知っているんだよ、まさか!」

「最後までは、知りえません、わたくしはすぐに灯花ちゃんを追ってここまで参りました。そして、わたくしがここに入る前に、その方に蟲のにおいがしていたことしか存じておりません」

「何なんだよ!蟲って言うのはよ!気味悪ぃ」

「蟲は死体に宿りますわ。そして、蟲に寄生された死体は生きたように動き回りますのよ。あの黒い毛虫たちを引き連れて」

「うそだろ…俺、なんのために…」

落ち込む川村君に、私は口を開いた。

「……そんなことないと思う、川村君はすごいよ」

「えっ?」

「人を助けるのに蟲とか死体とか、関係ないと思う。それを真っ先にした、川村君はすごくすごいよ」

そう言われて、川村君はほっとしたようだった。

「そうか、そうだよな、助けるのに理由はないもんな!ありがとな!」

「うん」

「大体のことは、わかった。あとは、どうやってここから出るのかってことだな…そう言えば、まや犬!」

ちょっと不機嫌そうに真夜は答えた。

「…何ですの?」

「お前さ、においでわかるなら奴らの行動もわかるんじゃね?」

「ええ、わかりますよ。蟲たちのにおいは特にわかりますわ、でも、残念なことに先ほどの戦闘で嗅覚を麻痺いたしております。先ほどみたいに、うんと近づかないとわからないんです」

「なんだよ!つかえねーな!」

「…だからこそ、今のわたくしは役には立たないんですの」

「…川村君、言い過ぎだと思う」

自分を置いて行けと言うほどだ、よほどこたえたのだろう。

「…悪かったよ」

「気にしておりません、事実ですので…」

しばらく、沈黙が続いた。

ずっとこの場にいることはできないし、大群に襲われたら、ひとたまりもないし、膿蟲に見つかれば、今度は窒息死するかもしれない。なんとか、蟲たちを避けることはできないだろうか?


 私は、前に幽世に迷い込んだ時のことを思い出していた。

あの時は、りんさんがいてくれたから、幽世から出られたんだと思う。

幽世からの出方は、ほぼカンが頼りだった。

りんさんは、言っていた。

不安定な場所があると、かさぶたのような所があると言っていた。

それは、未だにわからない。

そして、今回もわからない。

ため息をつきたくなった。

…でも、気になることがある。

ここは、最初、廃ビルだった。

奥に進むにつれてだんだんと会社へと現実味を帯びてきている。

この資料室もそうだ、どれも本物にみえる。

だとしたら、本来たどり着くはずだった、屋上へ行けるのでは?

すごく気になった。

私達は最初、屋上にいる男性を見かけて上ろうした。けど、中に入ると上に続く道はなく、地下へと続く道しかなかった。

膿蟲が屋上にいるなら、餌になる私達を屋上で襲えばいいのになぜ?どうして、近づいて来た?

「…もしかして…」

「ん?どうした朝峰」

「もしかして、屋上に何かあるのかな?」

「屋上?屋上は行けなかっただろ、上に行く道なんてなかったんだし」

真夜は何かに気が付いたみたいだった。

「灯花ちゃん、さすがですわ。よく気づきました!」

「何がだよ、俺にはさっぱりだ」

「屋上に行けば出口ですわ!きっと!」

「出口本当に?」

屋上が出口なんて、考えてなかった。

「それほんとかよ!」

「可能性はありますわ!屋上こそが今回の幽世の入り口ですわ。そして、出口も同じく」

ちょっと希望が湧きて来た。

「それだと、どうやって屋上まで行けるかどうかだな…」

「そうですわね…」

途中で蟲たちに出くわしたら、逃げるしかない。

体力がある限りそれは、続くだろう。

でも、尽きてしまえば私達は蟲たちの食卓に上ってしまうだろう。

私は、ふと思ったことを真夜に聞いた。

「真夜は、あの時膿蟲を刺したはずなのに、どうして倒せなかったの?」

「それは、膿蟲の残り香を刺したことになります」

「残り香?」

「わたくしたちは、膿蟲のにおいを頼りに戦っております。においで的確に膿蟲を倒します。そうじゃないと、いくら肉体を切っても倒したことにはなりませんわ、肉体はいくらでも再生しますし、指一つでも永遠と動き続けましょう。残り香は、あの膿蟲が残したにおいでしょう、わたくしはまんまと騙されてしまい、不覚を取りました…」

「じゃあ、その膿蟲は一体どこに?」

「膿蟲は死体に必ず存在しますわ。そして、あの場で膿蟲がいなかったことになります…」

考えられるのは、一つ。

現れたのは、首無し男。

あの場で膿蟲がいなかったとなると、膿蟲は別の場所にいることになる。

膿蟲は死体に必ず存在するとなると、あの場でなかったパーツは…

「頭だろ」

答えを言ったのは、川村君だった。

「頭に奴らのボスがいるんだろ!そいつ潰したらここから出られるのか?」

「さようでございますわ。でも……いいえ!わたくしがお二人方を導いて差し上げます!」

「なんだか、すごいやる気だな!いいぜ!何なら、奴らのボスをやっつけようぜ!」

「…できれば、の話だと思うけど…」

冷静になれば、無理な話だ。

「だがよー、やられっぱなしは性に合わないぜ!やるなら奴らを倒して出たいぜ」

「でしたら…このわたくしめに…」

真夜は、先ほどと変わって真剣なおもむきで私達に告げた。

「お二人方にお願いがあります。どちらかお一人に、この真夜の生け贄になってくださいまし。」

「「…はい?」」

真夜から唐突な言葉に私と川村君は、その場で固まってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ