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ある彼女のお話。
「きれいだよ」
そんなことはじめて言われた。
子供の頃から、ずっと顔の事でいじられていた。
みんなにとっては、ただの笑いの種であって悪意はない。
わたしもみんなに合わせて笑っていたの。
笑って自分を卑下していた。
みんなに合わせて自分を笑っていたら、あの人だけは笑わなかった。
「俺はそうとも思わない、君はきれいだよ」
わたしにとっては、強烈な言葉だった。
素敵な言葉だった。
夢の様な心地だった。
だけど、あの人はとっくに愛する人がいた。
すごくすごく羨ましかった。
また言ってほしかった。
もう一度。
言ってほしかった。
だからきれいになりたくて整形をした。
整形して整形して整形して…
気づけば整形の繰り返しだった。
きれいになりたかった。
でも醜くて。
顔を隠すのが癖になった。
ある時、自分の顔が鏡に映った。
ひどく醜くて醜くて醜くて醜くて…。
自分で手術した。
すると笑った顔ができた。
前よりマシになった。
「わたしきれい?」
「……ああ、きれいだ」
眠る少女を傍らに人狼はそっとつぶやいた。




