ブラッククリスマス。(その2)
ビルの中は、荒れていた。
ここは、廃ビルのようだった。
私は、カバンの中から携帯を取り出した。
携帯で国光さんに電話をした。
りんさんの一件以来、国光さんから電話番号をもらっていた。
何かあったらすぐに連絡するように言われている。
国光さんはすぐに電話に出た。
「はい、どうしましたか?」
「国光さん!また!」
「落ち着いてください。ゆっくり現状を報告をお願いします」
「あの、また!黒い蟲が出て来て…」
「そこはどこです?」
私は、国光さんに場所を教えた。
「わかりました、すぐに向かいます。あなたはそこから離れてください」
「でも、友達が!」
「友達?誰か廃ビルに入って行ったのですか?」
私は、屋上の男性のことと川村君のことを話した。
「わかりました。あなたはすぐにここから離れてください」
私は言われた通りに、廃ビルから出ようとしたが扉が閉まっていて開かなかった。
「国光さん!出られない!」
国光さんを呼ぶが、返事がなかった。
それどころか、ノイズが入ってきて通話が出来なくなった。
さっきまで開いていた扉が開かなくなったことは、ここはただの廃ビルではなくなったってことだ。
「……ここは、もしかして幽世?」
私は、再び幽世に迷いこんだみたいだった。
「また…」
まただ…もう合わないと思っていたが、こんなことになるなんて…
嘆きたいけれど、今はそれどころではない。
「川村君を探さないと!」
ここに居ても何も変わらないことも知っている。
私は、廃ビルを奥へと足を運んだ。
廃ビルは、奥に行くほど暗くなってくる。
外の外灯の明かりを頼りに歩んできてるけど、その明かりが頼りにならない。
携帯のライトを明かりにして歩むしかない。
足元を照らすと窓ガラスの破片が飛び散っていた。
破片だけではなく、コンクリートが崩れているところが所々にあった。
これは、気をつけないと怪我をする。
ビル内には、このビルを使用をしていた人が置いて行ったのだろう、大量の段ボールが積み重ねてあった。
段ボールには、埃が被っていた。段ボールの中身であろう、大量の書類が散りばめられていた。
川村君はあの男性を助けに行ったのだろう。
だったら、目指すのは屋上だ。
私は、階段を探した。
そう、大きくないビルだ。
すぐに見つかると思った。
だけど、周りを見渡すが階段らしきものがなかった。
ここは、幽世。
そう簡単に、見つかるわけない。
前回みたいに空間が別の世界になっていたことがあった。
この廃ビルは、私が知っている空間ではない。
本当に気を付けないと…
そして、いつ蟲に襲われるかわからない。
川村君…
私も一緒に行けばよかったと、自殺しようとしている人にすぐにでも助けようと、どうして思わなかったんだろうと後悔した。
ただ見ているだけで、何もしなかった自分がいる。
私は、思った以上に冷たい人間なのかもしれない。
でも、後悔しても嘆いても遅い。
今は川村君を探さないとそしてここから出ないといけない。
川村君、無事でいて…
もう、りんさんのように置いて行ったりはしないから!
一緒にここから出よう!
私は覚悟を決めた。
行こう!
私は、暗闇の向こうに足を踏み入れた。
思った以上に、奥が暗すぎる。
携帯のライトだけでも、奥が見渡せない。
どうにか足元だけでも、照らすようにするしかない。
頑張れ!私!
自分を励まして、一歩一歩と歩んだ。
すると、コンクリート壁が見えて来た。
ここは、バカに広い空間だとわかった。
上を見ても、上に続く道はなく閉じ込められた空間だった。
あるのは、段ボールの山と崩れた瓦礫。
大きく開いた崩れた床だ。
ふと、思った。
瓦礫があっても、どうして天井は崩れてはないのだろう?
崩れているのは、壁と床だ。
天井が崩れていてもおかしくはない…
しかも、大きな瓦礫だ。
どうやってここに落ちて来たのだろう?
もしくは転がった?とでも言うのだろうか?
もしかして…下から?
私は、穴が空いている床を覗いた。
携帯のライトで下を見渡すとコンクリートの床が見えた。
地下か…それとも、上に行く道だったりして…
イチかバチか行くしかない。
私は、下へと降りることにした。
大丈夫か?そんなに低くはないと思うけど…下手して骨折する?でも言ってはいられないね!
念のために準備運動をする。
よし、行こう。
まずはカバンを降ろして確かめる。
蟲がいたら大変だから、よく注意深く確かめた。
何もないことがわかったら、自分が降りて見た。
おりゃあ!
「っ!!」
尻餅は着いたけど、うまく降りれたみたい。
そんなに、低くなくてよかった。
私は、カバンを持って、再び携帯のライトを使って歩いた。
よし!
暗闇を歩いて行って、同じような空間になっていた。
配置は変わっているけど、崩れた瓦礫を見て穴が空いている床を見つけた。
どうやら、まだ続くみたい…
この廃ビルに、こんなに地下があるなんてまずないだろう。
下が正解だったみたい。
確実に進んでいることは分かった。
ここまで、川村君が進んだとは思わないけど…ここは幽世。
道が違ってもおかしくはない。
そうと思ったら行くしかない。
私は、また下へと降りた。
「…はあ…。」
…帰ったらお風呂に入りたい。
ここは、埃っぽい。
そう思ったら、物音がした。
ガタン!
詰んでいた段ボールが落ちた音だった。
パラパラと書類が散った。
「…っ!」
気が滅入る。
だけど、一歩踏み入れた瞬間。
ブッチ!
何を踏んでしまった。
携帯のライトでその何かを確かめた。
見て見ると、黒い毛虫を踏んでしまったようだ。
生々しく黒い液体が散っていた。
「………っ!」
その黒い液体から微かに生臭い臭いがした。
………嫌な予感がした。
どこからか、ざわついた音がした。
ギチギチ。
その音は次第に近づいてくる。
ギチギチギチギチ。
ギチギチギチギチギチギチギチギチ。
やばい!
私は走った。
足元を見ないで、走ったためにすっ転んでしまった。
「うぐっつ!」
その時に後ろを振り返った。
後ろは黒い毛虫の群れが迫って来ていた。
天井からも床からも、湧いて出るように現れていた。
「っ!!」
私はカバンで、黒毛虫を払った。
でも、数が多すぎる。
慌てて、立ち上がって再び走った。
カバンには、黒毛虫がびっしりとついていた。
私は、カバンを床に叩きつけたが、黒毛虫にあっという間に喰われた。
「っ!!」
カバンの中に入っていた、教科書類も喰われて泣きそうになった。
でも、真っ白い布は黒毛虫には喰われなかった。
それは!
私は、黒毛虫の中に手を突っ込んだ。
「いっつ!!」
黒毛虫に噛まれて激痛だった。
でも、白い布は掴めた。
白い布は、天狼さんの羽織だった。
羽織は黒毛虫には喰われないらしい。
そうと分かれば、私は羽織を羽織って走った。
そして、また転んだ。
「うぐっ!!ぐっ!」
黒毛虫はもう間近だった。
私は羽織を掴んで、心の中で呼んだ。
天狼さん!
「ようやく、見つけましたわ!」
女の人の声が聞こえたと思ったら、青い光が私の視界を埋め尽くした。
青い火は、青い炎となり、黒毛虫を燃やし尽くした。
ギギィイーー!!
「あらあら、いい声ですこと」
私の目の前には、同じ制服の女子生徒が立っていた。
長い三つ編みの黒髪で黒ぶちの眼鏡をかけていた。
すらりとした黒タイツが目に入った。
スタイルは抜群だと思った。
その女子生徒は、私の手を取って立たせた。
「もう少しの辛抱です。朝峰様。」
「…どうして、私の名前を…。」
女子生徒はくすりと笑って言った。
「わたくし、あなたのストーカーですもの」
「……………はい?」




