The補習。後半
家に帰ると姉がソファーにくつろぎながら、テレビを見ていた。
「お帰りー!」
「ただいま、何見てるの?」
「ストーカー特集。ストーカーの実態24時!」
また、陰険な番組。
「最近、多いんだってね、ストーカー」
「みたいだね…」
そそくさと制服を着替えに行こうとすると。
「あんたも気を付けたほうがいいよ!」
「んー」
適当に返事をした。
「あんたがストーカーになったら、あんたのこと妹だと思わないから、一緒にされたくないし!」
「………はっ?」
何言ってんだ?被害にあわないように気をつけろじゃないの!
「だから、あんたみたいなヤツがストーカーになりやすいって言ってんのよ!ストーカー予備軍!」
「なんでよ!ならないよ!」
「そういう奴がなりやすいって!」
「はあー!」
もう!すぐテレビの影響受けやすい女め!
「あんたのことだから、どうせ自分なんかーって思って、影に隠れて男のケツばかり追っているんでしょう!」
うぐっ!
確かに姉の言う通りだ。
私は、密かに久遠先生の後を追っている。
学校で喋ることができないから、せめて姿だけでも拝ませてもらっていた。
「だっだったら何!ねーちゃんみたいにガッツリじゃないから!」
「でたでた、ひがみひがみー!」
「うるさい!」
「好きな男の前でするんじゃないよ!みっともない!」
「わかっている!」
ドスドスと音を立てて階段を上がった。
好きな人がいると公言してるようなものだった。
「わかっているよ…うぐっ…」
どうせ私は、こんなことしかできないよ。
今日、絶対天狼さんに嫌われた。
不良好青年は良かれと思ってやったんだろう…
私も心の奥では、もしかしたら会えるかもって思ってそれに乗っかってしまった。
安易な気持ちでやってしまった結果だ。
天狼さんには何度も助けてもらったのに、してもらったのに…何一つ、返せてない。
現に、羽織は手元にある。
こんなことじゃあ、好きになってもらうどころか、嫌われるのも頷ける。
その日、大好きなゲームやアニメをほっぽって、布団にくるんでめそめそと泣いて寝た。
次の朝、顔がえらいことになっていた。
泣きまくって、目が腫れていた。
前もずっと泣いていた時もあったけど、ここまでなるとは思いもしなかった。
悪泣きしたのがもろ分かる。
その最悪の顔をした日にまた補習がある。
本当に最悪。
ぐずぐずと学校に行く準備をしていると姉がまた言ってきた。
「あんたその顔!」
「もう黙って!」
姉の言葉を無視して、準備をしてすぐに家を出た。
電車に乗り込むと、今日の補習の復習をした。
昨夜は泣いて寝たから、勉強していなかった。
勉強しながらふと電車の中の広告がクリスマス使用になっていて、忌々しく思った。
そう今日は、クリスマスだった。
学校に着いて、補習の教室に向かった。
昨日と同じ生徒たちがいた。
不良好青年はまだ来てなかった。
前と同じ席に座って教科書を出し授業を待った。
チャイムがなり、教科の先生がくると思っていたが…今日は違った。
黒髪の黒スーツは、久遠先生だった。
こんな時に、ついてない。
できるだけ俯いて、顔を見られないようにした。
「…私が代わりに担当することになった。今日はプリントを解いてくれ、出来た者から私の所に来るように」
そう言って、久遠先生は適当な椅子に座った。
どうやら、採点は久遠先生がするみたいだ。
オーマイガー!
久遠先生にモザイク機能がついていればよかったのに!
しばらくすると、廊下から走ってくる足音が聞こえた。
急に教室に駆け込んできたのは、不良好青年だった。
「間に合った!」
「間に合っておらん!」
久遠先生がしっ責したが、本人は汗だくでそれどころではなさそうだ。
「何事にも時間厳守だ。遅れた分は自分で取り戻してもらうからな」
久遠先生は私が相手した時と違って彼には厳しかった。
不良好青年は、私の隣に座った。
その時に目が合ってしまった。
「…っ!」
「お前のその顔!」
やーめーてぇー!
必死に顔を隠すが既に遅かった。
「おい!昨日は悪かった!なあ!」
不良好青年は私に触れようとしてきたが、久遠先生がそれを阻んだ。
「それ以上、その子の邪魔をするな」
「……っ!」
背筋が凍りそうな、凄みだった。
すごく、久遠先生…怖い。
教室が一気に温度が下がったようだった。
余りにも寒すぎて、ガタガタ震えた。
て、天狼さんだよね…?
さすがの不良好青年も固まってるし…
「……あの、わっわたしは、だい、じょうぶだから…」
かすれた声が出た。
不良好青年はその言葉を聞いて、少し安堵したようだった。
「あ、ああ…」
不良好青年は大人しく机に向かった。
久遠先生から、プリントを受け取った。
不良好青年はカバンをあさって、ぼさぼさの黒髪をカリカリとかいていた。
昨日も筆記用具出さなかったし…もしかして忘れたとか?
私は不良好青年にシャーペンで腕をつんつんした。
「何だよ…」
「これ…貸すね」
私はシャーペンと消しゴムを渡した。
無駄にいっぱい持っていたし、貸してもどうってこともない。
不良好青年はポカンとしていたが、しだいに口を大きく開けて笑った。
「サンキューな!」
「うっうん…」
よかったのか?
でも、困っていたしいいよね…
ふと、久遠先生を見てすぐにそらした。
鋭い目とあって、ぞっとした。
機嫌悪!
どっきどっきでプリントを解く羽目になった。
プリントを最後まで解けたけど、わからないところがあって、これで出したらいいのかわからなかった。
何より、久遠先生が怖い!
あんな機嫌が悪いのは始めて見た。
周りの生徒も同じく怖がっていたようだった。
それでも、プリントを出さないと意味がない。
じりじりと勇気を出してプリントを出しているようだった。
不良好青年は遅れて来たくせにもう解いて、真っ先に久遠先生に出していた。
機嫌が悪い先生によく行けるな…普通は近寄りたくないのに…
不良好青年は、採点を終えてこっちに戻って来た。そして、にっこり笑って私にプリントを見せて来た。
「すげーだろ!」
100点だった。
「なっ!」
期末に近い問題だったはず、それを解くなんて…こやつ何者。
ってか自慢してくるな!
あぴって来るな!
じりじりとプリントを押し付けてくる。
だが、すぐに止まった。
久遠先生がじろりと見られたからだ。
ぎっくー!
こうなったら行くしかない!
いざ!参る!
もちろん、顔を隠しながらだけど。
久遠先生の視線が痛い。
採点してもらった。
「間違えた所は、よく復習するように。あと、分からない所は必ず私の所にくるように、良いな。」
「…はい」
じいーと見られて、顔をそらす。
席に戻ると、不良好青年はどうだったと聞いて来た。
私は潔く見せた。
この、3点のプリントを。
「マジかよ!」
大声で言われて、むっとした。
私はきっと、顔がぶすっとしているだろう。
悪かったわね!バカで!
むっすー!
「悪かったって!」
「むう。」
そうこうしているうちにチャイムが鳴った。
「次の補習も、引き続きプリントをしてもらう。間違った所を放置せず、やり直しするように。」
そう言い残して久遠先生は教室を出た。
一旦、職員室に戻るのだろう。
「でさ!お前なんて言うんだ!」
不良好青年はいきなり言ってきた。
「お前の名前だよ!俺は、E組の川村幸夜。お前は?」
「…朝峰灯花C組の」
「そうか!朝峰か!よろしく!」
「よっよろしく」
何だこれ…男子生徒と仲良くなってないか?
「朝峰、昨日は悪かった!ほんとうにごめん!」
急に頭を下げられた。
「えっ!」
「俺が勝手に連れ出したから、お前を巻き込んだ。しまいには、泣かせた!ほんとごめん!」
男子生徒がここまで謝るなんて、あっただろうか?
今まで、嫌なことをされても流されてきた自分だ。
まず、関わろうとは思わなかっただろう。
これも、りんさんのせいかな…
信じてあげよう…
「いいよ、もういいよ。あの時、私も近くで見たかったし…おあいこってことでいい?」
どっちも悪かったってことでいいかな?
「いいのかそれで!ああいいとも!お前いいやつだな!」
はじめていい奴って言われた。
「しっかし、あのセンコウ!ヤな奴!いちいちうるせーんだよ!ガンつきやがって!」
…そこ、イライラしないイライラしない。
「…久遠先生、なんか機嫌悪かったし…なんかあったかも…」
「だとしても、俺ばっか見てよ!ムカつく!」
はいそこ、ムカつかない。
「お前もばっちりガンつけられてたぜ!」
ガンつきって…見られたんだ私。
この顔を…
私はガックリと肩を落とした。




