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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第ニ章 えっ?友達ですか!天狼さん。
35/310

The補習。前半

 今朝から、姉に笑われた。

冬休みに補習を受けに行くからだ。

「あんたって本当にバカなんだねー!」

「シャラップ!」

朝食のリビングで姉にバカにされた。

「ぷぷぷ!可哀そうにー!」

口を手で押さえて、なおバカにしてくる。

「黙り給え!」

「まさか、クリスマスも補習?」

「くっ…。」

「補習がなかったら、合コンあんたも行けたのにねー!」

「はあ!なんで合コン?」

「行くに決まってんじょ!誰が家でケーキなんか食べるのよ!このあたしが!」

ってことは…クリスマスまでに姉に彼氏はできなかったってことか…哀れなのは、姉の方だ。

「補習があっても、なくても、もう行かないよ!そんな所!また絡まれるのは嫌だし!」

「もう!あんたっておこちゃまなんだからー!絡まれてなんぼよ!」

「一人で絡まれてこい!」

「何よ!反抗期?」

「ねーちゃん!これだけは言っておくけど。世の中、危ないことだらけなの!」

合コンに現れた蟲のこともあるし、近くで起きた事件も私は蟲のせいだと思っている。

「変な所に行って、危ないことになっても誰も助けてはくれないんだよ!」

幽世に間違えて入っても、なかなかそこから出られないし、下手をしたら二度と戻って来られない。

「自分の身は自分で守らないと!」

私はカバンに入っている、防犯ブザーを姉にあげた。

「なによー!要らないわよ!」

姉はぽいっと投げ捨てるが、私はすかさず姉のバックに入れた。

その様子を見ていた姉は、じぃーと見て来た。

「なに?」

「あんたさあ、前の合コンの時からどうも様子がおかしいんだよね…」

そりゃあね、ひどい目にあったからね…

「最近、あたしの化粧水、勝手に使っているし」

ぎくっ!

「興味もなかった、雑誌とか読んでいたし」

ぎくっぎくっ!

「もしかして、好きな人でもできた?」

「ぐぶっ!」

飲んでいた牛乳を口からこぼした。

「ほほお!図星か!相手は年上って決まっているんだから!このお姉さまに言いなさい!話付けるわよ、何なら電話番号だって…。」

「あっ電車の時間、行ってきまーす!」

姉の言葉を無視して、家を出た。

姉よ、その好きな人は聖職者だ!

そんでもって、人狼だあ!


 学校に着くと、補習がある教室に向かった。

教室に着くと、男子生徒ばかりいて、女子生徒は一人もいなかった。

しかも、素行が悪そうな生徒ばかりだ。

私、大丈夫か?

とりあえず、席について教科書を出した。

ちらりと隣の席をちらっと見た。

男子生徒が机にうつ伏せで寝ていた。

授業が始まると、先生が寝ている男子生徒を起こした。

男子生徒は素直に起き上がり、あくびをした。

あら、意外とイケメン。

目つきは悪いけど、不良好青年ってところ?

「ねえ、あんた。」

「えっ。」

不良好青年に声をかけられた。

「教科書貸して。」

「えっ!あっはいどうぞ…。」

少し驚いたけど、りんさんもしゅうさんもこんな感じだったから、すんなり返事できた。

少しだけだけど、慣れてきたかな?

前は、すぐにビクついていたし。

不良好青年に、教科書を渡すと。

「ちげーよ。」

と言われた。

「えっ。」

違った?

不良好青年は机を私の机とくっつけた。

「へっ?」

「こうでもしねーと、お前が見れねーだろ。」

あっそうでしたね。

教科書一つじゃあ、私が見れないか。

そっか…って!教科書忘れたんなら早く言え!

あと、近いわ!

近づいていいのは、天狼さんだけですー!

「なに?」

「いえ何にも…」

目つきが悪い目で見られたが、気にしなかった。

りんさんだったら、即刻、ブス呼ばわりだったから割かとマシだった。

そのまま私は、何事もなくすんなり授業を受けることができた。

次の授業も、不良好青年は教科書を忘れたようだった。

同じように、机をくっつけて、教科書を開いた。

てか、授業中筆記用具もノートも出さなかったし、途中寝ていたし…。

追試があるのに大丈夫かこの人。

痺れを切らした先生が、丸めた教科書を不良好青年に叩いて起こした。

叩き慣れた音が響いた。

不良好青年は起きてもだるいようだった。

そして、あっという間に今日の補習は終わった。

 

 補習が午前中に終わって良かった。

前回、天狼さんに羽織を返そうと思っていたがすっかり忘れていたのである。

今日こそ、返そう!

冬休みだし、生徒はかなり減っているはずだ。

渡せるチャンスはある。

よし、職員室に行こう。

が。

職員室に行ってみたが、久遠先生の姿はなかった。

今日はいないのか…

また、明日でいいか…

もちろん、明日も補習はある。

またの機会にとぼとぼ廊下を歩いて行くと、道着姿の女子生徒と制服の女子生徒が通りかかった。

部活の生徒たちだった。

その生徒たちの会話が耳に入って来た。

「聞いてよ!今!久遠先生が!」

久遠先生?

先生の名前が出て来て、耳を潜ませた。

「ええー!マジで!弓道部にいるの!」

「マジマジ!見に来てよ!」

「久遠先生が弓道できるなんて!」

生徒たちはそそくさと行ってしまった。

久遠先生が弓道部にいる?

ちょっと気になる。

行ってみよう。


 弓道部に行ってみると的に当てる音が響いた。

フェンスにうわさに駆けつけた女子生徒が数人いた。

フェンスを挟んで、弓道場を見ると弓道部の生徒が弓を引いていた。

こうして見ると、すごいな。

あんな自分より大きな弓を持って、引いているんだ。

パァッン!

一人の生徒が引いて的に当てた。

おおー!

すると、道着姿の久遠先生が出てきた。

一斉に女子生徒が騒ぎ出した。

久遠先生の道着姿は体育以来だ。

久遠先生は弓を引く前に膝をついて一礼していた。

なんて凛々しいんだ。

ゆっくりと礼を尽くすように、矢と弓を構えた。

佇まいが凛々しすぎる。

久遠先生が弓を引くとわかったら、周りの空気が変わった。

時間が止まるような感覚だった。

風が吹いたと思ったら、矢は的に当たっていた。

的は当たったが、中心には当たらず端に当たった。

久遠先生なら、中心を当てると思っていた。

私の期待しすぎなのかな?

ふと周りを見ると、周りの反応が私と同じようだった。

二射目もまた端に当たった。

次もまた端だった。

そのまた次も端。

最後、五射目もまた端。

的は当たっているのに全て端。

これは、一体?

結果は啞然。

弓道のことは分からないけど、この結果をどう受け取ればいいのかわからなかった。

凄いってこと?

それとも?

「あいつ、スゲーな…」

ふと、後ろから男の声がした。

振り返ってみると、あの不良好青年だった。

「あっ…。」

私は少したじろいだ。

「…っ…。」

なんだか、自分が恥ずかしい。

こういう時、素直にすごいって思えたらどんなにいいか…。

天狼さんのこと何も知らないくせに、勝手に期待して勝手にがっかりしてバカみたい。

なんだか、あの不良好青年に嫉妬する。

下を向いて俯いでいると…。

「おい!大丈夫か?」

「わあ!」

不良好青年に声をかけられた。

心配そうな様子で伺われた。

「そんなにビビるなって!で、大丈夫か?」

「……はい。」

「ふーん、で、あんた何してんの?」

「えっ!あっその…」

そう聞かれて、戸惑った。

見たら駄目だった?

「あれを見に来たんだろ?…だったら!こんな所で見るより中に入って見ようぜ!」

いきなり、手首を掴まれて引っ張られた。

「えっ!ちょお!」

連れていかれて、中に入ろうとした時。

きっと、3年生だろう。

弓道部員に呼び止められて、中に入ることができなかった。

「関係者以外立ち入り禁止!帰って!」

強く言われてここは大人しく帰ろうと私は思ったが、不良好青年はそれでも入ろうとしていた。

「なんだよ!ケチくせーな!いいだろ!」

私はガッチリ手首を掴まれているから、どうしようもできなかった。

「弓道部以外立ち入り禁止!久遠先生に会いたいからって!私たちに迷惑かけないで!」

全くその通りである。

「いいだろ!さっきの射、間近で見てえ!」

「あの!もういいです!」

私は掴まれた手をぐっと引っ張ると不良好青年は言った。

「お前も見たいだろ!」

まだ言うか!

私達のせいで周りがざわざわと騒ぎ出した。

「ちょっと!あんたら!もしかして1年!」

「1年のくせに先輩に向かって!そんな態度取って言いわけ!」

外にいた女子生徒まで、話に入ってくる始末。

「何よ!貴方たちせいで!せっかくの久遠先生の射が台無しじゃない!どうしてくれるのよ!」

「そうよ!どうしてくれるのよ!」

どうしよう…これ…

「ああもう!キーキーうるせー!」

それは同感。

「何事か」

ひどく落ち着いた声が響いた。

久遠先生が騒ぎについに駆けつけてしまった。

あちゃーほんとどうしよう…

「やっと出て来たな!お前の射もう一度見せろよ!」

こら!久遠先生にお前呼ばわりは何だ!って言いたいけれど…

すでに火に油だった。

「久遠先生になんて態度!」

「あやまりなさいよ!」

「ほんと迷惑!」

うわあ…天狼さん、ちょっと助けてください…

「皆、落ち着いてくれ」

「でも!」

「良い、呼び方などどうでも良い。だが、今は射を撃っている者がおる。見るのは構わないが、その者たちの邪魔になることは控えてくれ」

しっかりと久遠先生は言い放った。

「それに、神経を使うぶきを持っている、大怪我に繋がることだってある。むやみに近づくことは私が許さん。」

最後の言葉は不良好青年と私に言い放った言葉だった。

これは、きついかも…

「なんだよ!くそが!」

不良好青年は何も言えない様子だったが、暴言を吐いて出て行ってしまった。

もちろん、掴まれているから私もセットである。


 天狼さんに嫌われた。

絶対嫌われた。

ガターンと学校の校門前で体操座りして、落ち込んでいた。

落ち込んでいるといきなり、冷たいものが首に当たった。

「ひい!冷た!」

不良好青年が私にパックのいちごミルクを差し出していた。

「ん。」

目つきが悪い目で差し出されて受け取るしかなかった。

「…ありがとうございます」

不良好青年は炭酸だった。

「あいつら、ケチくせーな!まったくよ!」

「………当たり前ですよ」

「なんだよ!」

怒鳴るように言ってきた。

私の中でぷちっと音がした。

「いい加減にしてください!久遠先生言っていましたよね!大怪我するかもしれない武器を持っているって!あなたのような自分勝手な人に近くに寄られたら怪我するかもしれないって言っているんです!」

「…っ!」

不良好青年は驚いていた。

「もう!貴方のせいで!うっ…くっ!」

泣くつもりなんてなかったのに、涙が出てきた。

……最悪。

不良好青年は慌てた。

「わっ悪かった!俺が悪かった!だから泣くな!泣くなよ!」

「うるさい!ほっとして!」

私は元々持っていたカバンを手にして、ずんずんと地面を鳴らして校門を出た。

後ろから、何か言われたが無視して私は駅へ向かった。

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