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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第一章 助けてください!天狼さん。
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長い帰り路(その5)

 黒スーツに茶色のコートを着た男は、座り込んでる私に手を差し出した。

「もう大丈夫だよ」

私は恐る恐る手を出した。

一気に引っ張られて立たされた。

「…っ!」

足ががくがくしていた。

自分の足じゃないみたいだ。

「あれ?なんだかデジャブ感が…前にもここで女の子を助けたような…」

男は短髪で癖っ気があり、ほんのり髭を蓄えたそこそこ三十過ぎた男性で鮮やかな茶色の瞳をしていた。

刀を持って、あれと戦っていた。

この人はもしかして…

「あっあの!あなたは人狼で山犬?」

男はぎょっとしていたが、すぐに答えた。

「そうだよ、よく知っているね…」

男は刀を私に向けた。

「…えっ…」

な…んで?

刀は確かに私の首に向けられていた。

少しでも動けば、首が斬れる位置だった。

「ごめんねえー僕は疑い深いんだ。今度は、こっちが聞く番」

笑っているけど、怖いぐらい目が笑っていない。

「君ってさー蟲使い?」

むしつかい?なにそれ?

「…むしつかいって何ですか…」

かすれる声で言った。

自分でもびっくりするほど息をするのが精一杯。

「へえぇー知らない?じゃあなんで僕のこと知っていたのかな?」

この人、私が天狼さんの知り合いなんて知らないんだ。

「わた、しは、天狼さんの知り合いです。だから知っているんです…だからお願いします、信じて…。」

「ごめんねえー、僕は君を信じない」

「はっ!」

私は驚いて、首に刃が当たった。

「うぐっつ!」

首に痛みが走った。

再び尻餅をついてしまった。

「あっ…あっ………」

恐怖が私の心を潰そうとした時。

オオカミの遠吠えが聞こえた。

それも複数の遠吠えが響いて来た。

目の前の男は動きが止まった。

「ふーん……どいうつもりかな?国光君?」

「どうもこうもありませんよ。それ以上その方を傷つけたら、貴方の首を刎ねると行動で示していますが?」

「おおー怖い怖い。でも大丈夫だよーきっと全てを忘れちゃうから、多少傷づけてもいいんだよー。おっと!」

コートの男の後ろに黒スーツを着た国光さんがいた。

国光さんは刀で男の首を捉えていた。

「朝峰様、動けますか?」

私は震えながら頷いた。

「なら、こちらに来てください」

私はみっともないほどずるずると体を動かした。

国光さんの足元にたどり着くとすがるように足を掴んだ。

「国光君は甘いねーさすが天狼様のお膝元。ってそんなに怒らないでよ。保険はかけておいた方がいいと思うだよね」

「それは、貴方だけの保健でしょう。こちらには、関係ありません」

「言うねーでも、それで何人死なせたのかな?今回もそれで死なせたかもね?聞いたよー柴田坊ちゃん大変だってね」

「し、ばた…!」

柴田で思い出した。

怯えている場合じゃない!

「国光さん!りんさんが!」

必死に足を掴んで懇願する。

「りんさんが!りんさんが大怪我をして!」

「朝峰様、存じております。今、天狼様が対処に当たっていますので…ご安心ください…」

国光さんは、そう言っていたがなんだかとても不安だ。

とても嫌な予感がする。

とても…とても。

コートの男はため息をついた。

「もういいんじゃない?見逃してよ」

「それは却下します。あなたのことは、本部にご報告させていただきます」

男はあきれまみれに答えた。

「やれやれ」

国光さんが刀を降ろすと男もまた持っていた刀を鞘に納めた。

「朝峰様」

国光さんが私の肩を引き寄せた。

「朝峰様、もう少しのご辛抱を」

国光さんは腕を回して私を抱えた。

「国光さん、りんさんが、りんさんが、りんさんが!」

「落ち着いてください。」

「でも!りんさんが、りんさんが!」

「落ち着いてください、彼は戻ってきます」

「でも、でも…でも……」

「彼は、戻ってきます…少し、休みましょう。休みましょう…休みましょう」

国光さんもなんだか焦っているような気がした。

「…………。」

この心が潰れる不安が、いつまでも止まらなかった。

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