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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第一章 助けてください!天狼さん。
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長い帰り路(その4)

 ここは、コンクリートで出来た地下施設のような所だ。

天井には鉄網があって、そこから、月の光が漏れ出ていた。

大声で助けを呼んでも、きっと誰も来ないだろう。

人一人、動物一匹の気配がしない。

あるのは嫌な予感だけ。

どこかに出口はある。

りんさんが言っていた。

不安定な場所があると、かさぶたのような所があると。

でも、どこにあるのかはさっぱりだ。

実際、幽世って一体何なのかは、未だに分からない所がある。

天狼さんが言っていたことを思い出す。

幽世の事は、天狼さんから教えてもらった。

確か、幽世は鏡のようだと言っていた。

あちらでは何も起こらないけど、こちらでは異常が起こる。

もう一つ、天狼さんが言っていた。

普段開かない所が開く。

そして、そこは幽世の入り口だと。

私にはその入り口さえ分からなかった。

この地下道には、自分で入ったわけではないし、見知った場所すらない。

託された携帯を握る。

大丈夫よね?

焦る気持ちだけが高まっていく。

りんさん…。

お前なら分かるなんて、言われたけど。

だいたい、地下なんて行ったことないから分かんないよ。

下水道なんて…。

うん?

下水道って…普通行かないよね。

普通はマンホールで閉まっているから入れないよね…。

あれ…マンホール。

確かここに入る前に、女の子がいた。

その子に触ろうとして、世界が真っ暗になったんだ。

わかったかも!

入り口は、マンホール。

じゃあ、出口は?

肝心なそこは分かんない。

でも、イチかバチか試すしかない。

私は周りを見渡し、マンホールを探した。

コンクリート道を走って必死に探した。

そして、あったのは…はしごだった。

天井の鉄網が外れてる所があり、そこからはしごが下りていた。

行くべきか?迷った。

でも、迷っている暇なんてない!

私は上った。

上った所は、鉄網で出来た道が広がった森だった。

月が出る夜の森。そして異常な鉄網の道。

いきなり、携帯が鳴った。

見てみると、愁兄貴と表示している画面が出た。

愁さん?

でも、なんでだろう…

心がもやもやしてならない。

りんさんが言っていた。

幽世では圏外だと、そしてもし繋がってもそれは掛けたい相手ではない。

今、私がいるここは、ほんとうに現実?

こんな所、私は知らない。

私のカンが言っている。

ここはまだ、幽世だって言ってる。

今かけてる人は愁さんじゃない。

私は電話を切った。

そして、また地下へ戻った。

違う。

違う。

ここじゃない!

私は再び、マンホールを探した。

そして、コンクリート道を進んで行くと。

あった!

マンホールがいくつもある場所にたどり着いた。

でも、複数あった。

地下にマンホールは明らかにおかしいけれど…

私はマンホールを調べた。

複数あるけど…この中に出口はある。

信じるしかない!

あっこのマンホール…

見たことがあるマンホールだった。

この模様…

県や地域でマンホールの模様が違う事を知っていた。

うちの地域はこの模様をしていた。

これだ!このマンホールだけが異様に現実味がある。

他のマンホールは、模様が付いてなかったり、知らない模様だったりしていた。

きっとこれだと思った。

私はマンホールに手を掛けた。

重く閉ざしていた。

違うの?

でも、開けるしかない!

ここしかない!

これ以上、時間を掛けたくない!

引っ張ると確かに少し蓋が動いた。

動く!

必死に力を入れて、マンホールの蓋を開けた。

重い金属音が響いた。

マンホールの中は真っ暗で何も見えなかった。

でも、行くしかない!

頑張れ私!

頑張れ!

マンホールには、はしごがある。

はしごに脚をかけて下がろうとした時、声がした。

子供の声がした。


いーち

にーい

さーん

しーい


女の子?

その声は上から聞こえた。

数えてる?


ごーお

ろーく


上を見ようとしたが何かが落ちてきた。

ぽたぽたと雫が落ちたみたいだった。


しーち


雫がはしごを掴んでる手に当たった。

見てみると、黒い液体だった。


はーち


……っ。

とても嫌な予感がした。

ゆっくり上を見た。

女の子が私を見下ろしていた。

目が虚ろの女の子。

ぽたぽたと落ちてきたのはこの子の血の涙だった。

ああ、この子は死んでいる。


きゅう


口を動かさないで女の子が喋ってる。


きゅうきゅうきゅうきゅうきゅう


恐怖で心が潰れそうだった。

でも。

でも。

りんさん!勇気を貸して!

私ははしごから手を放した。

身体が宙に浮いた。

私は暗闇の中に身を落とした。


 暗闇の中で、私は生きていた。

落ちた時に尻餅をついて痛い思いはしたが、私は生きている。

起き上がろうとしたが、頭を打ってしまった。

痛い!

少しうめいた。

手で真上を触ると堅い壁の感触があった。

コンクリートの壁かな?

周りを触って壁を確かめた。

私がいる所はどうやら筒状の場所らしい。

とにかく、進まなきゃ!

私は四つん這いになって先を進んだ。

進みにつれて、光が見えてきた。

光に向かって進むと…。

そこは、私が知っている場所だった。

「こう、えん…?」

私が小学校の時に遊んだ、公園だった。

そして、私が出た所は、コンクリートで出来た土管だった。

私は土管から出た。

「……っ」

月が出てる夜は変わらず、ここがまだ幽世なのかはわからない。

でも、この馴染みがある場所は間違いなく現実。

私のカンが言っている。

戻って来たと…

りんさんが言っていた。

五感でわかると。

その通りだった。

この場所の匂いと肌に感じる風が本物であると告げている。

「もどって、これた…」

りんさん!私戻って来れた!

スカートのポッケから携帯を取り出す。

画面を開いてみると、電波が飛んでいた。

繋がる!

画面をタップして電話をしょうとするが、その画面から次に動かせなかった。

「あのばか!なんでロックなんてするのよ!」

携帯にカギをつけられていた。

しかも四桁の数字で解除できるらしい。

ここで助けを呼べないの?

悔しい思いが胸を圧迫する。

私は携帯の画面を見た。

あいつも、アニメ好きなのだろうか?

見たことがある画面だった。

ウンニャー待ち受けだった。

まさか!

ある番号を四桁数字を打ち込んだ。

「よしゃあ!」

オタクをなめんな!

ウンニャーには番号が存在する。

宇宙番号0008

ちなみに、インニャーには0007

産まれた個体数らしいけど…

私はすぐに携帯の電話帳を開いた。

誰に掛けたらいいのか分かんないけど、適当に一番上の番号を掛けた。

コールの音が公園に響く。

ふと、私が出てきた土管に目を向けた。

もそもそと黒いもやのようなものが出て来ていた。

ゆっくりとその場を離れた。

かつて、この公園には殺人事件が起きた。

死体は公衆電話の中で亡くなっていた。

電話のコール音がずっと鳴り響いている。

早く!

早く繋がれ!

お願い繋がって!

「はい」

繋がった!

男の人の声だ。

「えっと、あっ、その!」

「貴方は誰ですか?携帯の持ち主ではありませんね」

「あの!待って!りんさんが危ないんです!助けてください!いっぱい血が出て大怪我なんです!」

「……分かりました。いま、ジジッージジジッ」

ノイズの音が混じって聞こえない。

「もしもし!もしもし!」

「ジジッージジジジッジー」

声がノイズに変わってまったく会話ができなくなった。

「そんな!」

電話はそのまま切れてしまった。

ぼとりと携帯を落としてしまう。

あっ…もうダメだ。

そんな時に子供の声が聞こえた。

出来るだけ土管から下がった。

下がるとお山の滑り台にぶつかった。


「いーち」

「にーい」

「さーん」


また女の子が数えてる。


「しーい」

「ごーお」


…知ってる。

都市伝説で聞いたことがある。

マンホール少女。


「ろーく」

「ひーち」


私は何番目になるかはもうわかっていた。


「はーち」


女の子が私の目の前に現れた。

そして、私を指してそれは言った。


「きゅう」

「いーや、はちで終わりだよ!」

「…!!?」

男の人の声がした。

私の後ろのお山の滑り台の上に人影があった。

その人影は女の子に向かって、銀色の刃を投げた。

女の子の頭に銀色のナイフが突き刺さった。

その衝撃で女の子はパタリと倒れた。

「…っ!?」

私は尻餅をついた。

「油断しないで、まだ終わってない」

女の子から、黒い液体が広がった。

「ほーら、湧き出した。」

ギチギチギチギチ。

ギチギチギチギチギチギチギチギチ。

黒い毛虫の群れが湧き出した。

「……っ!?」

「悪いけど、こっちは急いでいるんだ。一気に片をつける」

青い光が見えたと思ったら一気に黒い毛虫の群れが青く燃え上がった。

ギギィイイーー!!!

私の目の前に男性が降りて来た。

黒スーツの上に茶色のコートを着た男だった。

茶色のコートには土汚れがひどくこびりついていた。

「終わりにしょうね…」

男は女の子に持っていた刀を振り下ろした。

男は首の付け根を斬った。

そこが、膿蟲うじが寄生していたのだろう。

女の子は燃えてしまった。

だけど、魂だけが残った。

「おかあさん……どこ?」

私も目の前にいる男性も黙って見送ることしかできなかった。

「ちゃんと数かぞえるようになったよ…」

だけど、心が痛い。

普通の女の子の声がする。

普通の女の子だったから、痛い。

「だから、たたかないで…」

私はどうしたらいい?

聞くことしかできないの?

こんなの嫌だよ…

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