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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第一章 助けてください!天狼さん。
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長い帰り路(その3)

 りんさんは、私から唇を離すと言った。

「これ以上、されたくなかったら…言うことを聞け」

さっきまでの甘い笑顔ではなく冗談抜きの真剣。

確実に脅しに来ていた。

彼は、瀕死の状態だ。

息が荒いのは、血をあまりにも流しすぎたため。

私は血の味を噛みしめながら、従うしかなかった。

「わ、かった」

「いい子だ」

りんさんはうめきながら、私を放した。

私は変に冷静だった。

いや、彼に冷静にされたのだ。

どろりと血が滴るのをただ黙って見ているしかなかった。

嫌な自分がいた。

りんさんは自分で止血を始めた。

私だと、すごくもたつくのに彼は慣れた手つきで傷口を縛った。

彼から踏ん張る声が漏れたが、私は何もしなかった。

りんさんは止血を終えると言った。

「俺は、あれを倒さなきゃいけない…だけど、俺一人だけでは力が足りない。精々、焦がす程度だ。」

「…………。」

「だから、お前にはここから出て仲間を呼んでほしい。」

「…でもここは…」

普通じゃない。

「ああ、幽世だ。おかしな世界だろ…だけど、完全じゃない。必ず、ぬるい所がある」

「ぬるい?」

「そうだ、現世と幽世が混じっている所だ。そこが穴で…かさぶたみたいで…あやふやな所」

「わっ分かりにくいよ!」

「お前ならわかる」

「分からないよ!それなら、りんさん!一緒に逃げようよ!ここから出よ!」

切に願うように言った。

「…それはできない。俺は、山犬だから無理」

「なんで!」

まったく理解できない。

「俺が選んだ道だ。どんな道だろうとも走り抜くのが山犬だから…山だろうが、川だろうが、崖だろうが、関係なく走る。そして、俺は俺の好きな道を走る」

「いやだよ、そんなのりんさん…すごく傷ついてるよ。すごく痛いよ…」

「ふっあはは!ぐっふっつ!」

彼は笑おうとして咳き込んだ。

「やっべえー!もっと色々しとけばよかった」

「……っ」

少し動揺したがそれどころではない。

冗談では済まされないこともある。

「怒んなって!俺は大丈夫だから…助けを呼んでこいって言ってんの!頭悪いなー!」

「悪かったわね!頭悪くて!」

私がやるべきことがようやくわかった。

「わかったから!ちゃんと呼んでくるから!だから!生きてよ!」

私の言葉にりんさんは目を見開いたが、すぐに笑った。

ようやく私は、りんさんをちゃんと見た。

天狼さんに似ていると思った。

瞳の色が紫色だったから、笑い方がほんとうに似てるから。

「…っ」

涙が零れたがすぐに拭った。

「わかったのなら…ほらよ!」

渡されたのは、携帯だった。

「携帯!」

最初から携帯で助けを呼べば…。

「幽世では圏外だよ。ここを出ないと繋がらない、もし繋がってもそれはかけたい相手ではない」

それは別の誰かってこと。

「確実にここを出ろ。そして助けを呼べ!いいな」

でも、幽世と現世は似ている所がある。

もし幽世でかけてしまったら?

「不安げだな、感覚だよ!自分の五感を信じろ」

かなり不安なんですけど!

「つべこべ言わずにとっと行け!」

そうだ、今はやるしかない!

「うん!」

携帯を持って走ろうとした時。

「なあー灯花、ここを出たら付き合わね?」

「こんな時に何言っているのよ!このばか!」

「ざんねーん!」

「私行くから!生きてね!絶対!助けるから!」

りんさんを振り切って私は走った。


「はあーやっと行ったか…おれ、かっこわりいぃ…」

家までちゃんと帰すって言ったのにこのありさま。

まじで萎える。

「じいちゃん…ごめん」

手を上げる力が無くだらりと落ちた。

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