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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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天狼さんと再会。(その10)

 灯花は畳み上で女の子座りをしていた。

ずっと座り続けて、着物が着崩れが起こしているのにそれを直そうともせず、ぽかんと口が開いた状態でいた。

私が天狼さんの花嫁…。

未だ信じられず、心の整理がつかないでいた。

「……………」

しばらくそのままでいると、ある視線を感じた。

それは、真後ろから来ていて…。

「……っ!?」

「…僕は認めない。お前が天狼様の奥方になるなんて、道司様が認めても、僕は認めない」

その言葉を聞いた私は、目の前が一瞬で暗くなった後で気づく。

天狼さんが狙われているなら、その花嫁候補もまた狙われることを…。

あっやっべ…。


 気づけば、目と口を塞がれ、手足を縛られた状態で人の手によって担ぎ上げられていた。

走る音と振動で、どうやら私は、どこかに運ばれている最中のようだ。

我ながら、こういった状況に慣れているのか、慣れていないのか。自分でも驚くほど冷静だった。

地獄蟲によって、きたえられたからだろうか…心臓に毛が生え始めているらしい。

私は落ち着いて、攫った人の足音を聞いていた。

落ち葉を上を歩いているようなザクザク音や、枝木を踏むパキパキ音が耳に入った。

山の中に入っているのだろうか…?

風によって、葉と葉がこすれる音が聴こえた。

次に耳に入ったのは、コツンと高い音だった。

しばらく、コツコツと足音を聞いていると、突然、攫った人は私を降ろした。

冷たくて固い地面だった。

攫った人は、私に言葉を出した。

「しばらく、ここにいてもらう……ってきり、泣くのかと思ったんだが、泣かないんだなお前」

「…………」

「ま、泣き叫んだ所で誰も助けには来ないよ。その前に僕はお前を傷をつける。そうなれば、天狼様の花嫁の資格はなくなるよね」

「…………」

なんて人…私を傷つける気だ。

それに、天狼さんとの婚約を破棄にしたいらしい。

道司さんに返事する前に、まさか、こうなるとは思ってはいなかった。

攫った人は私に触れた。

「………っ」

頬に首、そして、手首に触れた。

冷たい手だった。

触れられている間、さすがの毛が生えた心臓でも鼓動を高く鳴らしていた。

口を塞がれていてよかった。

いつ叫んでもおかしくなかった。

攫った人は手首に触れていては、疑問の言葉を出していた。

「何この傷…噛み跡?もしかして、隼人はやとの?」

攫った人は、しばらく手首を掴んだままだった。

そして、言葉を出していた時には、私の手首は離されていた。

「天狼様の花嫁が、他の男の噛み跡を残しているなんて…とんだ花嫁だよね。僕が噛む必要なくてよかったよ。お前の血はまずそうだから」

「…………っ」

じわりと目頭が熱くなった。

本当に泣き出しそうで、悔しくなった。

私は泣かないように着物の袖を掴んでは、気持ちを落ち着かせようとした。

攫った人は、そんな私の様子に気づいたのか、くすくすと笑い言葉を続けた。

「くすっくすくす……ずっとそのままで居ればいいよ。ちなみに、お前がいる場所は山犬達が滅多にこない場所だよ。ほら、聞こえてくるだろう?死者の声が…」

「……っ」

風と一緒に聴こえていたのは、女性が高い声音で叫んでいるような音だった。

「…んぅっ!」

「僕は行くよ。そこで、天狼様と道司様をたぶらかしたことを反省するんだよ。…じゃあね」

攫った人は、再びコツコツと鳴らして、どこかに行ってしまった。

残された私は、ただそこで耐えることしか出来なかった。



 あの子が出て行った後、どれくらい時間が経ったのだろう…?

軽い眠りから目を覚ますと、最初に思ったのはそれだった。

部屋の中は、微かな光だけを入れているだけで薄暗い。

床に就いたままの状態で、天井に向かって手を掲げる。

どんなに眠っても、あざは消えないし、起きたことがなかったことにはならない。

時ばかりが過ぎて行って、暗い気持ちばかりが置き去りになっていた。

その時だった。

ある気配を感じては、そっと様子を伺った。

「天狼様…」

「国光か、なんだ…?」

国光の姿はすだれの向こうだが、その様子からは焦っている様子が伺えた。

「どうした…?く…」

「朝峰様が行方不明になりました」

「…っ!?それは、本当か?」

天狼は起き上がり布団を剥がしては、国光の言葉を待った。

「はい…屋敷のどこにもいらっしゃらないのです」

「灯花………」

ぐっと自分の過ちを悔いた。

灯花に対する私の対応が要らぬ行動を招いた。

私のことが嫌になって、この屋敷からも飛び出したのだ。

「すまぬことをした…灯花、すまぬ…」

くっきりとあざが深くなった腕を額に当てては、悔いた。

そして、国光に状況を聞いた。

「国光、捜索はどうなっている?」

国光はすぐに答えた。

「はい、既に何人のも山犬が捜索に当たっています。屋敷の中は、奥方が加勢をしてくださいましたので、数人の山犬と当たっています。屋敷の外は、後の山犬が続いてます。女性の足です。そう遠くは行っていないはずですが…」

「いなかったか、だとすると…」

嫌な予感がした。

「攫われた可能性があります」

国光の言葉によって天狼は、その場から立ち上がった。

読んでくれてありがとうございます!(o*。_。)oペコッ

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