天狼さんと再会。(その2)
灯花は銀色オオカミに押し倒されていた。
オオカミの大きな口元からぽたぽたと唾液が零れ、私の顔と首元を濡らした。
「グルルル…」
「………っ」
銀色オオカミは、喉を鳴らしては、今の状況を知らしめた。
目の前にいるオオカミは、飢えたオオカミだと言うことを。
私の瞳は刃に貫かれたように、オオカミの紫色の瞳に釘付けにされて。
私の唇は痺れたように震え、オオカミの吐息とキスをする。
私の首は命の息を音を立てて呑み、オオカミにその首を晒す。
灯花は喰べられる感覚を知った。
それは、死の恐怖と奇妙な感覚を覚えるものだった。
これは、地獄蟲に喰べられる感覚とは違う。
これは、胸の底から湧き上がるものだ。
これは、何と言うものだろうか?
そして今、私はどんな顔で天狼さんを見ているのだろう?
銀色オオカミは答えない。
じっと灯花を見ては、唸るだけだ。
「…………」
「……………………」
しばらくして、銀色オオカミは唸るのをやめた。
静かになったオオカミは、灯花からするりと離れた。
「………?」
銀色オオカミは簾の方へと去り、言葉を言い放った。
「続きが欲しければ、床へ来い。刺激をやるぞ…」
「……っ」
その言葉を聞いた時、なんだが、急に恥ずかしくなった。
「……っぅう」
私の気持ちは恥ずかしさでいっぱいになり、その反動で固まった身体を動かし、部屋から逃げるように出て行った。
灯花が逃げた先には、道司が廊下の中心で待っていた。
灯花の様子に道司は愉快そうに言葉を出した。
「なるほどね~そう来たか~ふぅふん~♡」
「……っ」
羞恥心が頂点に達した。
私は、涙いっぱいになった顔で道司さんを睨んだ。
「……っ」
「おっと、悪気はないよ。でも、君を泣かしたのは紛れもなく天狼ちゃん、でしょ?見ればわかるよ」
その言葉を聞いて、私は、これ以上何かを晒せないように唇を噛んだ。
「ほんと自分勝手な天狼ちゃんだよね~振り回される身にもなって欲しいねぇ~そう思わない?」
私をここに呼んだのは、道司さんだ。
自分勝手なのは、道司さんも一緒だ。
「…………」
「そう睨まないで。これでも、天狼ちゃんが元気が出ると思って、引き合わせたんだ。ま、案の定だったけど……」
「…………」
「それでだ、灯花ちゃん。僕は、君とじっくりと話がしたい…いいよね?」
にっこりと笑う道司に灯花は少しぞっとした。
これは、ただの見舞いではなかったようだ。
道司さんの本題は、私と話すことだったのだ。
「今すぐじゃないよ、客間を用意するから。落ち着いたら、声をかけてね」
道司さんはそう言い残して、この場から去って行った。
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