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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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指切りトンネル。(その29)

遅くなってすみません。(o*。_。)oペコッ

 彼の容姿と背格好は天狼さんに似ている。 

だから、ちょっとだけ安心したことは、内緒にして欲しい。

天狼さんは、彼の事を陽炎(かげろう)と呼んでいた。

だが私は、彼の事をオタク気質の鬼お面、略して、オタ面と呼んでいる。

一応、さんはつけているのだが…。

「灯花た~ん!拙者のこと忘れたのかと思ったのでござるよ~!」

陽炎は両手を広げては灯花に抱き着こうとして来た。

「ちょっと、近づかないでください!」

「ぐふふっ拙者と灯花たんとの仲でござろう…?」

黒の生地に白の刺繡の曼殊沙華(まんじゅしゃげ)が施されている流し着物を着こなし、鬼の面をつけている黒人狼。

見た目に反して、かなり変態だ。

「いい、い、嫌です!」

セクハラって、こういうことを言うんじゃないかな…。

「おいおっさん!」

セクハラを受けている灯花に助け舟が来た。

川村君…!

「おっさんではない!!」

陽炎はいきなり怒りの剣幕で言葉を出した。

「……わ、悪かったよ…」

川村君、そこは謝らないで…。

「ふんっこれだから小僧は…」

なんでこの人は、偉そうなんだ…。

「して…またのない逢瀬を、邪魔をする不届きモノはお主か?」

鈴の音が鳴った。

「…………」

陽炎の問いに山の神は答えない。

「ふん、言葉まで失ったか…。皆離れておけ、こやつは拙者が葬るぞ」

陽炎は灯花達の前に出ては、背に差している刀に腕を回した。

いつの間にか、黒糸が洞窟中に張り巡らされていた。

「……っ!」

その黒糸に引っかかっているのは、山の神だった。

白装束の少女の身体は黒糸によって、拘束されていた。

「オタ面さん!」

灯花は彼のあだ名を呼んでは、言葉を続けた。

「オタ面さん!あれは、地獄蟲じゃないです!」

「わかっているでござるよ~さては、堕ち神の(たぐい)であろう?この手のモノは、よくおる」

陽炎の言葉に反応したのは茶色い毛並みを持つオオカミだった。

「手を出してはならん!呪いをもらってしまうぞ!」

「呪い?結構でござるぞ~棍棒(こんぼう)で打ち返して見せるぞよ!それに、神である道理から外れたモノは、神であらず。目の前にいるモノは、ただの悪鬼でござるよ」

「あなたはいったい…?」

オオカミが問うと陽炎は軽く笑った。

「拙者は、鬼門の門番でござる」

「…っ!あなたはまさか!先代の…」

オオカミが驚いていると、山の神の角から伸びる樹木から木の幹が、こちらに向かって襲い掛かって来た。

山の神は私達を串刺しにするつもりだ。

すると、再び鈴の音が鳴った。

「三弦…」

次の音は、弦の弾く音とパンッと弾ける音だった。

襲い掛かって来ていた木の幹が突然、し散した。

川村はこの光景に言葉を漏らした。

「嘘だろ…」

危機に陥っていた状況が一気に逆転した瞬間だった。


 灯花は陽炎の戦闘力に驚いていた。

強いことは知っていたけれど…ここまでだったとは思わなかった。

「………あ!」

唖然としている場合じゃなかった。

灯花は、川村達から離れ、岩壁に持たれている山犬に駆け寄った。

山犬の様子は深刻だった。

腹から出血があり、ぐったりとしていた。

「山犬さん!しっかりして…!」

「うっ…」

息はあるようだが、早い治療が必要だった。

すると、灯花の行動に見かねた川村がこちらに来ては言葉を出した。

「おい!救急箱を出せ!早いとこ出血を止めるぞ!」

「う、うん…」

灯花は言われた通りにリュックから救急箱を出した。

すると、片脚でよたよたと今でも崩れそうなオオカミが寄って来た。

「隼人、しっかりするんだ…」

首には痛々しく、肉が裂けていた。

「あ…」

言葉が詰まるほどだった。

「私のことはいい…隼人を見てくれ…頼む…」

その言葉を聞いた川村は、オオカミを睨んだ。

オオカミはその視線に少し困った顔すると、山の神の方へと視線を向けた。


 陽炎と山の神との戦闘は繰り広げられていた。

陽炎が山の神の隙をついては、一気に近づいた。

そして、山の神の頭蓋に刀身を振り落とした。

バッキッ!

枝木が折れる音響いた時。

洞窟内に反響するほどの声が響いて来た。

「アワレ、ナ、ムスメ…ヒトニ、ステラレ、ヒトニ、イミキラワレ…ヒトニ、ナレナイ…アワレナ、ムスメ」

山の神の言葉は、娘を憐れむ言葉ばかりだった。

「アワレナ、ムスメのタメニ…ヤクソク、ヲ、タガエル…モノ。ユビヲ、オトス」

指を落とす。

その言葉は、この土地…指切りトンネルと言う呼び名がついたのと、関係があるのだろうか。

指は約束事に使う。

灯花は呟く。

「まさか、指切りげんまん?」

この山は、かつて捨て山だった。

山に捨てる人、捨てられる人、その背景は自然と思い浮かぶ。

捨てられる人は、まさか自分が捨てられるとは思わないだろう。

家族だから、信頼している人だからこそ…。

捨てる人は、どうやって捨てるか、悩むだろう。

山から戻って来られては困るからだ。

なら、有効な手段は約束を取り付けることだろう。

指切りげんまんを使って。

白装束の少女は、両親、また信頼する人と約束をした。

そして、少女は山に捨てられた。

その少女を哀れと思った山の神。

山の神が人の指を落とす行為を繰り返すのは、きっと、約束をなかったことにしたかったじゃないだろうか?

哀れな少女を解放するために…。

陽炎は鬼の面を押さえては、声音を変えては言葉を出した。

「お主もまた、哀れだな…人に関わって魔に堕ちた」

山の神は陽炎の同情に耳を貸さず、枝木を陽炎に向け、千本の針のように突き出そうとした。

「ユビヲ、オトス、ユビヲ、オトスオトスオトスオトスオトスー!!」

陽炎の瞳が朱く光った。

その様子はまさに、鬼の様だった。

「そのまま、終わっていればよかったものを…娘と共に、逝くがいい」

陽炎が張り巡らせた黒糸は、襲い来る千本の針を糸を通すように突き刺した。

千本の針は、陽炎の目の前で時が止まったように静止し、山の神の頭蓋骨は受けた傷から、広がりを見せ、そして、砕けた。

砕けた頭蓋骨から、少女の顔が現れた。

少女の表情は、人のように悲しみ暮れていた。

その少女の背後には、オオカミの姿があった。

そして、少女はそのオオカミに喰われて、育ての親と共に逝くことになった。

この小説をここまで、読んでくださりありがとうございます!!

新人賞を逃してから、落ち込んだ日々がありました。

一時は、一次選考者の名前をデスノートに書き込もうと考えたりしてました。

よくよく考えたら、あれって、偽名だよね…………ちっ命拾いしたな…。

などと作者として、やっちゃいけないことを考えていましたー。

こんな意地汚い、作者ですが今後ともよろしくお願いします。by落田プリン。

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