表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
162/310

指切りトンネル。(その13)灯花視点。

 灯花が落ち着いた頃、白が混じる黄土色のオオカミは言葉を出した。

「なぜ来た…」

思っていなかったことを急に言われて、灯花は驚いた。

「な、なぜって…」

オオカミの問いは続いた。

「帰れと言ったはずだ…なぜ来た?死にに来たのか?」

うわぁ…この人、怒ってる。

灯花は目を細めてオオカミに言った。

「そんな言い方、ないです。こっちだって…まさか、あなたがこんな風になってるなんて思わなかったんですけど…」

「……これは仕事だ」

「大怪我することですか?それとも、蟲に喰われることですか?」

仕返しのつもりで、オオカミに嫌味の言葉を送る。

すると、オオカミはバツが悪そうに答えた。

「…断じて、違う」

「なら、聞きます…怪我の方はどうですか?動けそうですか?これから、脱出の為に動かなきゃいけないんです。…どうなんですか?」

「…………」

オオカミは黙ってしまう。

灯花は気にせず言葉を続けた。

「動けなかったら、私があなたを負ぶって行きます」

灯花は扇子とリュックを前に持ち、オオカミを背中に背負っと手を伸ばした。

すると、伏せていたオオカミは起き上がり、灯花の手を避けた。

「あ」

「己の足でここまで来たんだ、自力で出られる」

オオカミはそのまま、廃トンネルをトコトコと歩いて行った。

灯花も歩こうとしたが、傍にある刀に気づき、それを拾っては後を追いかける。

「刀、置いて行ってるよー!」

オオカミに追いつくと、灯花は言葉を送った。

「素直じゃない奴」

オオカミはふんと鼻を鳴らした。


 廃トンネルを進みながら、灯花はこれまでの経緯をオオカミ姿の山犬に伝えた。

それを聞いた山犬は、しばらく沈黙した。

なーんか、可愛くない。

天狼さんだったら、いろいろと気遣ってくれるのに。

その毛並みに触らせてくれて、安心させてくれるのに…。

ああー天狼さんに会いたい。

あの優しさに触れたい…。

てんろう…

「お前はなぜ、愁に会いたいんだ?」

山犬の言葉でぶち壊しにされた。

人が想いにふけっている時に…なんだ!この可愛くないオオカミは!

「山犬違いと聞きましたけど?」

「ああ…だが、愁に会うならやめておけ」

「…どうして、ですか?」

「今、組同士で派閥争いをしている。そのため、他の組との争いはおろか山犬同士で疑心まで出ている始末だ。愁は、我々が疑いを向ける組の一人だ」

山犬違いだけでも驚きなのに、山犬内でごたごたがあったのはもっと驚きだ。

「…それで、私達が会うのと関係ないのでは?」

灯花は問うが…。

山犬は、ちらりとこちらを見ては、何も言わず前を向く。

「…………」

「なんか、言ってくださいよ!なんですか?心配でもしてくれているんですか?」

「…………」

また、ちらっとこちらを向いては、何も言わず進む。

だから言えっつの!

ぶっきらぼうな肯定に灯花は呆れつつ、言葉を出した。

「大丈夫です!前にも言いましたが、以前、困っている時に助けていただいたんです。そんな人が悪い人なわけありません。それに…私達は…」

山犬は急に立ち止った。

「止まれ」

「はあ?」

灯花は言われた通りに立ち止ったが、プチと嫌な音を聞いた。

「あら、まあ…」

プチっと鳴った正体は、灯花自身、気を付けようと注意を払っていたヤツで、案の定踏んでしまった。

ねちゃりと赤黒い液体が靴裏を汚す。

「なんか…ごめんなさい」

灯花は山犬に向けて謝る。

「…ばか者」

「デレですか?」

「理解不能、とにかく走れ!」

灯花と山犬は襲い来る黒蟲の大群に追われる羽目になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ