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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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指切りトンネル。(その11)川村視点。

マイペースで投稿してます。

遅くて、すまんでござる!( ゜Д゜)

 川村は、近づいてくる白装束の少女に恐怖していた。

こいつ、ヤバい…!

口元から赤い液体をこぼしながら笑う少女は、見るからに狂っていた。

川村の身体は既に震えて動けなくなっていた。

それを見透かしているのか少女の歩みは止まらず、獲物を見るような目でこちらを射止めていた。

「くっへへぇー!」

イカれた声が洞窟を満たしながら、少女は血に濡れた口を開いては襲って来た。

「……っ!!」

川村はとっさに身構え目を瞑ったが、石壁に叩き付ける派手な音を聞くと大きく目を見開いた。

「おいっ!シャキシャキ動け!このウスノロ!」

その声の持ち主は、先の程まで鬱陶しく思っていた奴だった。

「けん、き…か?」

霧状の影から巨大な黒い手が現れていた。

その手は、まるで巨人の手。

人を簡単に握りつぶせる5本の指を持っており、墨のような黒い肌に紅く濡れた鋭い爪を持っていた。

硯鬼は、襲ってくる白装束の少女を石壁に叩き飛ばしていた。

川村は震えていた身体を動かす。

「……うっせーよ!」

この場から離れようと足を動かすと、不気味な笑い声が上がった。

「くひゃひゃひゃあはぁっ!」

「あいつ、生きてんのか…!」

あの衝撃で無傷では済まないはずだが、少女はむくりと起き上がった。

「化け物…!」

川村は落ち葉を蹴っては、走った。

開けた空間から更にその奥を目指す。

川村はライトと硯鬼を落とさないように力を入れる。

この二つが頼みの綱。

川村は奥へと向うとその先は、絶望的だった。

「行き止まりかよっ!ちきしょう!」

洞窟の先は大岩によって塞がっていた。

このままでは、まずい…!

奴はケラケラと笑いながら、こちらに向かって来ていた。

「おいっ!硯鬼!お前の力であいつをどうにか出来ねぇか?」

「けけっオレ様に頼るのか?そいつはお門違いだぜ」

「なんだと?おまえさっき、助けてくれただろ!」

「おいおい、人間の小童ガキがオレ様を使うなんざ、千年はえーよ」

「言っておくが、お前が力を貸してくれねぇと、このままあいつの餌食えさだぜ…!それも、瓶から取り出して、お前の頭からせんべいみたいにバリバリと…」

川村は硯鬼に半ば脅迫めいた言葉をかける。

何としても硯鬼の力を借りたい。

今、この状況を何とか出来るのは硯鬼だけだ。

「ただとは言わねぇよ…その大岩だけでもどかしてくれたら、貸しを一つやっていい…」

「ふんっ!なら聞くが、オレ様が岩をどかしている間、お前はどうする?あのババアとやり合う気か?」

「やるしかねぇだろ…!つーか、ババアってなんだよ?」

そうこうしているうちに、少女はすぐ近くまで来ていた。

川村は大岩の方に硯鬼を転がしては、注意を引く為に大きく落ち葉を蹴った。

「おい悪食野郎!腐ったミカンでも食わしてやる!」

その挑発に少女は反応し、楽しいそうに口を開いた。


 硯鬼はしかたなーく、塞いでいる大岩をどかすことにした。

小童ガキが喰われても、封印されている以上どっちみち己の自由はない。

なら、マシな方を選ぶに決まっている。

小娘との生活は、あの暗い箱の中より、なかなかマシな方だったし。

「小娘のねーちゃんは、おっぱいもケツもよかったしな…」

…また、拝みたい。

硯鬼は周りに漂っている血の粒子を使い、巨大な鬼の手を創造させる。

硯鬼は血を司る鬼。

チヲ…チヲ、集めよ…。


 硯鬼が大岩をどかしている間、川村は白装束の少女の注意を引いていた。

少女が川村に襲ってかかって来た時、瞬時にライトの光を強くした。

川村は少女の目に当てては、目くらましをする。

「だてに、高いライトを持って来てねぇんだよ!」

少女は急な光に当てられてうめいた。

ずっと暗闇の中にいたのだ。

急な光には弱い。

だが、それは一時的なもので、あまり時間稼ぎにはならない。

川村はすぐに少女から離れた。

すると、呻いていた少女が再び笑い出し、こちらを獣のようにぎらついた目で見ていた。

「やっべ…!本気にさせちまったか…?」

狂い笑いをする少女は、獣のような鋭い爪を立てながら再び襲いかかる。

どんなに川村が少女から離れてもすぐに追いつかれ、襲いかかる力に川村は押し倒された。

「……うぐっ!」

大量の落ち葉が舞う中、落ち葉に埋もれながら首に喰らいつこうとする少女に、ライトをくわえさせ押し返す。

バキバキとライトが割れる音を聞く。

押し返す腕が痺れて来ていた。

「お、まえ、なんつう…ちから、、つえーんだよ!」

川村は少女の胴体に蹴りを入れる。

だが、蹴る威力は少女の人離れした身体には、まったく通用しない。

「くっそ、う…」

バキバキとライトが割れて行く。

ライトが割れれば、そこでおしまいだ。

光と首を失うことになる。

「なに…が、指、だよ!」

指喰わねーじゃん!

少女はガッツリと首の根を喰らいに来ていた。

「早く、しろ…!硯鬼!」

さっさと岩をどかして、こっちを助けてくれ!

硯鬼はようやく隙間をこじ開けた。

だが、人が通れる隙間を作るのは、まだまだかかりそうだった。

「くっそう…!」

川村が限界の声を上げそうになった時、風が鳴った。

それは、塞がっていた岩の方からやって来た。

硯鬼が開けた隙間から、するりと茶色いモノが現れ、そのまま白装束の少女の首に喰らいついた。

「……っっ!!」

「グルルル…!!」

少女は喰らいつかれ、横転。

川村は押し倒された身体を起こす。

「……マジか」

茶色いモノの正体は、オオカミだった。

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