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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第一章 助けてください!天狼さん。
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ここは、どこ?(その4)

 私は、ギシギシと床を鳴らせて廊下を歩いていた。

着物で歩きにくいけど気にしてる場合じゃない。

ここのどこかに天狼さんはいるはず!早く天狼さんに会わないと!

ずんずん足を進めると日本庭園が見える所まで来れた。

さっき通った時と変わらず鮮やかに紅葉しているお庭だ。

ゆず子さんにこの場所のことをよく聞けばよかった。

最初は旅館かと思ったけど、どうやら違うみたいだ。

どちらかと言うと日本のお屋敷だ。

この古臭い匂いがおばあちゃん家の匂いがする。

とりあえず、どうする?

そうだ!まず、りんって言う人に会えば天狼さんの居場所がわかるかも!

あの金髪の青年だ。

探して見よう!


 ずんずん廊下を適当に歩いて来たけど、右に行っても左に行っても同じような景色をぐるぐるとしていた。

また、日本庭園だ。

あっこれって迷子って言うやつ?

いや!これは迷子じゃない!だって最初から道、知らないもの!

むしろ攻略してる!

ちゃんと探索しないから迷子になるんだ!

これゲームの基本。

ならば次はよく見て行こう。

周りを見ながら長い廊下をどんどん歩いていったが…同じ風景で何も変わらなかった。

………詰んだかも。

再び日本庭園にたどり着いてしまった。

さっきから人一人誰にも出会わないのがだんだん不安になってくる。

私は日本庭園を見渡した。

よく手入れされている庭だ。

特に何かあるわけではない。

「はあ…詰んだ。」

「何がつんだの?」

「!?っ」

周りを見渡した。

誰もいない!

「こっちこっち、上だよ上」

声が聞こえたほうへ向いた。

向いたがそれでも声の主はいない。

「そっからじゃあ、見えないよー!」

そう言われて庭のほうへ足袋のまま出た。

声が聞こえた方へ屋根を見上げる。

真昼の日差しに眩しく感じながら目を見開くとそこには真っ白いオオカミがいた。

「やっほー!」

「……ほんとにしゃべっている」

「あれ?きみ初めて?」

始めて見たわけではないがオオカミがしゃべったことはまだ慣れてなかった。

なんて答えたらいいのか判断がつかなかった。

「ふーん」

白いオオカミは上から私を吟味するようにじっと見た。

オオカミは深い青の瞳をしていた。

「そんなに怯えなくても食ったりしないよー!だいじょうぶ!だいじょぶ!」

そう言って白いオオカミは屋根から降りた。

「わあ!」

思った以上に大きなオオカミだった。

大型犬より大きくまるで熊だ。

「だいじょうぶだよー!」

白いオオカミは目の前に来てはお座りをした。

さらさらの毛並みが風に乗っていた。

「よかったら撫でてみるー?ほらほら!」

ずぃと私の前に頭を差し出した。

「…………。」

恐る恐る右手を出して見る。

ちょんと頭を触れてみる。

温かみと柔らかい毛並みを感じた。

わあ、やわらか!

ゆっくり、ゆっくり、手を動かして撫でてみる。

すると、ぐるるるっと鳴った。

気持ちいいのかな?

犬を飼った事ないからわからないけど、なんとなくわかった。

調子に乗って撫でていると白いオオカミは長く舌を出して、私の手をペロリと舐めた。

「ひゃあ!」

「くっふふふっ」

白いオオカミは舌を出してペロペロしながら笑っていた。

やられた感はあったが、一人でいた不安は消えていた。

同じオオカミなら、りんさんの事知っているかも。

「あ、あの…りんって言う人知ってますか?」

恐る恐る聞いてみた。

「うん?りん君のこと?」

「…はい。」

「りん君なら任務に行ったよー」

「えっにんむ?」

「うん、お仕事のことだよ」

「それじゃあ、ここにいないんですか?」

「そうだよ、ここの山犬はお仕事行ってるよー!」

そんな!

それじゃあ、天狼さんに会えない。

「…………。」

「うーん。りん君に何か用だった?あいにくだけど、りん君は朝まで戻ってこないよー。」

「…そ、んな…」

天狼さんに会えないの?

肩を落として俯いた。

私どうしたらいいんだろう…

「気を落とさないでー、ぼくが代わりに聞くよー!」

白いオオカミは心配そうに私をのぞき込み、きゅーんと鳴いた。

そんな鳴かれたらどうしょうもできない。

「………天狼さんに…会いたい、です」

ぼつりと私は話した。

「天狼?天狼ちゃんのこと?」

天狼…ちゃん?

あれ、天狼さんって山犬にとって神様みたいな存在とかなんとか…じゃなかったけ?

「天狼ちゃんなら、いるけど…」

「えっ?」

「後ろに」

「へっ?」

いきなり、後ろから抱きしめられた。

「!!!」

「全く、お前は!」

「…てんろうさん?」

ポタポタと涙がこぼれた。

「…会えないって言われて…」

「私はここにいる」

「天狼さん」

天狼さんに向き直った。

灰色の羽織と白の着物姿の白銀の人狼が私の目の前にいた。

優しく微笑む天狼さんがいた。

「灯花」

「天狼さん!」

天狼さんの腕の中に飛び込むように抱き着いた。

天狼さんも、包むように抱きしめてくれた。

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