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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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指切りトンネル。(その4)

 怪しいうさぎさん達を見送り、灯花達は再び夕道を歩き始めた。

すると、一台の軽自動車と行き違った。

灯花はその軽自動車に見覚えがあった。

気のせい…?

それは、川村君も一緒だった。

振り返ると軽自動車は、止まっていた。

「おいおい、またかよ…あのトンネル、かなり人気じゃんか」

「心霊スポットだからじゃない?」

「頻度が高すぎるぞ」

そらそうだ。

ここは滅多に通らない道路だし、それにあの廃トンネルは既に使われなくなっている。

そうこうしているうちに、軽自動車からクラクションが鳴った。

「あーはいはい、どうせトンネルはこの先かーって奴か」

「変な人じゃないといいね」

「やめろよ、本当だったらどうするんだよ?」

「さあ…?」

そんなこんなんで川村は、軽自動車に近づいた。

「……っ!?」

軽自動車に近づいた川村の様子がおかしかった。

「どうしたの?川村君…っ!?」

「すみませーん、この先ってトンネルありますか?」

軽自動車に乗っている人には見覚えがあった。

あの廃トンネルに入って行った大学生達だった。

大学生はまるで、初対面同様に話しかけていた。

「どう、なって…」

川村君の動揺をよそに大学生は言葉を出した。

「この先に、指切りトンネルがあるって聞いたんですけど……俺たち、遠いとこから来たんでーここの土地にあまり詳しくなくて」

固まっている私達に、露出で派手な恰好をしていた女性がこちらを見てはくすりと笑った。

「貴方たちって、見たところ高校生よね。こんなところで二人で何してたの?くすっお盛んねぇ」

赤い口紅を塗りながら女性はそう言葉を出した。

「…………」

それはこっちが聞きたいくらいだ。

彼らはどこから湧いて出た?

あの廃トンネルの先は、よくは知らないが、行き止まりになっていると聞く。

つまり、廃トンネルから戻ってこないと出られないはずだ。

そして、この軽自動車が向かっていた先は、私達と反対側だった。

トンネルにさっき入ったばかりの人たちがここに居るのが、不自然過ぎる。

今から、廃トンネルに向かうなんて…。

灯花と川村は不気味さを抱えながら応対することになった。

「トンネルはこの先だよ…ところで、俺たちさっき会わなかった?」

川村がそう問うと大学生らは互いの顔を見合わせては言葉を出す。

「いいや、初めてだけど?」

「人違いじゃない?」

「そっか…」

川村は灯花の腕を掴んでは、ゆっくりと車から離れた。

彼らは川村の警戒に気にもせず、車にエンジンをかけた。

「じゃあ、ありがとう。助かったよ…」

「貴方たちは、早く帰りなさいな」

「言われなくとも…」

川村は苦笑いで言葉を返した。

灯花は一言も言葉に出すことが出来ず、頷くだけだった。

大学生らが乗った軽自動車が発進し、先へと向かった後。

川村は灯花を引っ張って、早足で帰路へと進んだ。

「なんなんだよ!気味悪いぜっ!」

「あの人たちって、いったい…?」

灯花は川村を引き留めた。

「なんだよ!早く帰ろうぜ!」

「待って…」

灯花は背負っていたリュックから、ある物を取り出した。

「硯鬼」

「またお前は、エグイものを…」

川村が呆れて言葉に出すと瓶の中で小さく身じろぎをしては、あくびをする硯鬼がいた。

「くわ~~」

「…………朝峰、俺をつねってくれないか?割とガチで」

「いいよ」

灯花は言われた通りに遠慮なく川村の頬をつねった。

そして、頬を押さえながら硯鬼を凝視する川村君が出来た。

「なんだよ、こいつ…動いたぞ」

「そりゃあ、生きているしね。ねー硯鬼」

「うるせ」

「しゃべったし…」

川村は驚きつつ、本題を出した。

「そ、そいつをどうするんだよ?」

「えっとね、硯鬼には目になって欲しくて」

「はっ目?」

「うん、人ではない人を見分けて欲しい。だから目」

灯花はそう言うが、当の硯鬼はやる気なさそうだ。

川村は灯花が言いたいことはわかったようだ。

「それで、わかんのかよ?」

「…………」

硯鬼は返事しない。

「無視するんじゃねーよ。このタコ助」

「ああん?」

さすがの硯鬼も今のは、効いたみたい。

「やんのかガキ!」

「やってみろよ!タコ助野郎!」

「やーめー!ケンカはやめて!」

灯花が喧嘩の仲裁に入る。

「…それで、硯鬼、お願い聞いてくれる?」

「なぜオレ様が、お前の願いをお聞かなきゃならんのだ?」

力を貸さない硯鬼に川村は、再び苛つき始める。

「こいつ」

「ああ川村君いいから…硯鬼どうしてもだめ?」

川村を諌めて、お願いする灯花に、硯鬼はちらりとこちらを見ては言葉を出した。

「既にお前は見えるはずだぞ?」

「えっ?」

すると、灯花達の前に眩しい光が当たった。

「眩し!」

川村は手をかざして光を遮り、灯花は目を閉じた。

いきなりのことで、驚いていると、再びクラクションがなった。

ゆっくり視界を広げると、そこには先ほど廃トンネルの方へと向かったばかりの軽自動車がそこに停止していた。

そのことに嫌な予感する灯花達。

軽自動車から、言葉が上がった。

「すみません、この先、トンネルありますか?」

その言葉と人物は数分前の出来事と同じだった。

「…………」

灯花達は言葉が出なかった。

軽自動車に乗ってるのは紛れもなく、あの大学生達だった。

「あの〜この先って、トンネルありますか?」

同じことを繰り返す彼らに、川村は答える。

「知らねえ!」

川村は灯花を連れて、走った。

「川村君!」

「あいつら、マジでやべぇ!」

灯花は川村に引っ張られながら、硯鬼に問う。

「硯鬼あれって?」

硯鬼は、再びあくびをしながら答える。

「ふあっ〜俺さまが答える義理はねぇ〜知りたきゃ、お前の目で見な。なんの為の右目にそれがあんだよ?」

「右目?」

硯鬼の答えに灯花は心当たりがあった。

正月の初夢。

綾女様に右目にビー玉を入れられた。

そのことを言っているんだろうか?

「…………」

灯花は左目を隠して、右目で見ようとする。

すると、軽自動車がこちらに向かって、急発進して来た。

車の急発進音が鳴り響いた。

「何なんだ、あいつら!」

川村は灯花を押した。

気づけば、軽自動車にかれそうなっていた。

「……っ!!」

川村は間一髪の所だった。

「川村君!」

「大丈夫だ。それよりも、連中をよく見てくれ」

川村はよろけた身体を起こし、軽自動車に近づいた。

灯花も、転んだ身体を起こし、硯鬼をしっかりと持ち上げる。

軽自動車から、再び言葉が上がった。

「この先、トンネルありますか?」

大学生らは、先ほどの運転をなかったことのように話出した。

「あら、貴方達高校生?くすっ」

露出が派手な格好の女性がこちらを見ては、くすりと笑う。

彼らを見よう…。

本当の彼らの姿を。

灯花は右目で、彼らを見た。

すると、視界がぱっと開いた。

今まで、曇って見えていたものが晴れたのである。

そして、真実が映し出された。

「……っ!」

まさしく彼らの正体だった。

無惨な姿の彼らがいた。

彼らの指は引きちぎられたのように、なくなっていた。

…そう彼らは、もうとっくに亡くなっていた。

私達の前にいる彼らは、死者として私達を追いかけて来ていた。

そのことを川村君に伝えるまでもなく、川村もまた彼らに察していた。

灯花は川村の顔を見合わせて、軽自動車からゆっくり離れて、そして走った。

当然、彼らもまた、追いかけてくる。

「どこに逃げるの!」

灯花の問いに川村は言葉を出す。

「俺達の足じゃあ、逃げられない!だとすると、行くしかないだろう!」

それは、指切りトンネル。

彼らは必要にトンネルのことを聞いていた。

それは、誘導。

彼らはずっと、私達をトンネルの方へと導いていた。

腹を括るしかなさそうだ。

「わかった!行こう!」

灯花の言葉を合図に灯花達は指切りトンネルへと向かった。

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