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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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天狼さんがいない教室。(その8)

 天狼さんを探す。

それを決めてから、一週間が経った。

天狼さんは未だに行方知れず。

学校の様子も初日と同様で久遠先生なんていなかったことになっている。

灯花達は、山犬である愁さんに会おうとしたが未だに連絡がつかず、いつもの公園にもいなかった。

確かな手掛かりを掴もうと街の中をうろうろと回って見たが、オオカミ一匹すら見かけなかった。

そして、なにより事情を知ってそうな真夜、年越しから戻って来ない。

「つんだ…」

「つんだな…」

灯花と川村は、学校の裏庭のベンチで頬杖をしながらぼやいていた。

そのはず、学校中に術をかけるほどの相手だ。

そうそう見つかるはずもなく、手掛かりもない。

灯花は山犬の住処を知っているが、道中を知っているわけでもなく。

神社の近くなのは覚えているが、その神社がなんなのかはわからない。

むしろ、知っていても口外するなと脅された。

川村君に喋って、首ちょんぱはさすがに嫌だ。

そして、私が知りたいのは住処じゃなく、天狼さんの居場所だ。

「天狼さん、天狼さん、天狼さん、天狼さん、天狼さん、天狼さん、天狼さん、天狼さん…」

「やーめーろー!ぶつぶつ何度も唱えやがって、呪文か!」

「こうしていると落ち着くの…名前を呼ぶと近づいてくれるんじゃないかなと思って…」

「何を呼び出そうとしてるんだよっ!」

「天狼さん」

「お前のそれは、邪悪なものだろうが!」

そんな会話がずっと繰り返している始末だ。

このままじゃあ、川村君がノリツッコミの才能を開花してしまう。

どうにかしないと…。

「おい、また変なこと考えていないだろうな」

「してないよ。川村君が心読むのが得意になって行くのがキモいなって思っただけで…」

「図星じゃねーか!」

川村君にそう言われて、灯花もまた言い返す。

「じゃあ、どうしたら天狼さんに会えるの?いっそのこと、幽世に堕ちてみる?」

「……それじゃねーの?」

「えっ…まじ?」

「おい、うわっ何こいつ…って言う目を向けんな。……実際、そっちのほうが手っ取り早く見つかると思っていた。ほら、あいつらって蟲退治してるんだろ?だったら、実際に幽世に行ったら、あいつらの一人に会えるんじゃないか?」

確かにその案はいい。

だけど…。

「だけど、危ないよ」

「だろうな…」

川村君は腕を組んでは続けて言葉を出した。

「だけど、そんなの今さらだろ?」

「うん…そうだね」

相手は、学校中に術をかけるほどの力がある。

その関わらず、私や川村君に術をかけなかったのは、関わるなと言う意志表示だということ。

だが、その意志に信憑性はない。

あくまで、灯花達内で推測したことだ。

そこで、灯花は川村にあることを話した。

その内容は、自分が術がかからないというものだ。

「おいおい、なんだそれ?今まで黙っていたのかよ」

もっと早めに言うべきだったかもしれない。

「ごめん」

私の想い足らない所だ。

「…私は、川村君もみんなみたいに、いつか忘れるんじゃないかと思っているの」

私は術がかからないから、仕方ない。

でも、川村君は術に対して対策がない。

「それって、天狼に会う前に俺の方が先に天狼を忘れるってことか?」

灯花は頷いた。

「もしかしてだけど…。むしろ、あの人たち…山犬に会うならそれなりに覚悟した方がいいと思うの」

私の経験でこれは言える。

術による、記憶の改ざんや隠ぺいももちろんこと。

そして、必ずしも彼らが、私達の味方ではないこと。

すると、川村は答えた。

「だったら、あの廃ビルでとっくに忘れているぞ?俺は」

「あ」

それもそうだ。

「なんでだろう?」

「さあな…もしかして、それも天狼が関わっているんじゃないのか?」

「天狼さんが、どうして…?」

「これも、本人に聞くしかないだろうな。少なくとも俺は、あの出来事を鮮明に覚えている。忘れてねえ」

川村君もまた、巻き込まれた一人だ。

灯花はもう一度、川村君に問う。

「いいの、本当に危ないよ?」

川村は答えた。

「俺は、あいつに一言文句言ってやりたい。このまま何も言わずに終わるなんざ、俺の腹の虫がおさまらねえ」

私が言うまでもない覚悟があった。

「うん、私も文句言いたい。たくさん言いたい!」

互いに天狼に用がある。

ここで引き下がるわけにはいかない。

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