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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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小さな波紋。(その8)最終。

 道司は神座の前まで来ると、辺りを軽く見回した。

せっかくの捧げものがすべてひっくり返っており、荒れていた。

道司は神座に近づき、膝をついた。

姿勢を正しくし、目線を上げた。

本来ならば、目線を下げるべきだろう。

けれど、事が起きた原因は紛れもなく神座にいる神祖だ。

緊迫している状況の中、道司は恐れと怒りを隠しながら言葉を出した。

「道司です」

「…………」

神祖は何も答えない。

神座の前に敗れた几帳があり、そのお姿は伺えない。

道司は天狼が倒れたと聞いた。

そうだとすると、天狼の身に何かがあったということだ。

神祖が出て来たのが何よりの証拠だ。

あの温厚すぎる天狼がここまでの事をするわけがない。

神祖という人格が、天狼を乗っ取っているから事が起きた。

道司は、嫌な汗をかいていた。

この場に居るだけで、喰い殺されそうで、じりじりと追い込まれていた。

すると、道司の懐から、うんしょと亀が出て来た。

わお、出て来るの?

一瞬、すっぽん鍋を連想してしまった。

鍋にして持ってこいとか言われたら、どうしよう…。

道司が焦っている中、亀はのそのそと神座の方へと向かった。

おそっ!

張りつめた中で、この亀の行動はいかがなものか。

嫌なことしか、連想してしまう。

道司は心の中で、叫んでいた。

カメ!カンバック!!

亀はそんな道司の考えをよそにして、のそのそと神座に向かう。

亀が几帳の中へと入った時には、終わったと思った。

中に入った亀が声を荒げた。

「わあっ!なんてことを!」

ついに亀鍋か…

道司は腰を上げた。

一度、守ると決めた以上、それを実行するのみ。

それは、父から教わった人狼としての道だ。

小さき命とて、見逃せない。

道司は几帳をかきわけて、神座の中に入った。

「か、亀鍋はちょっと待ってください!せめて、黒和牛のすき焼きにしまっ!?」

目の前の光景は、道司が想像していた事と違っていた。

「道司さま!天狼さまがっ!」

亀の言葉ではっとした。

そこにいたのは、神祖ではなく。

亀を傍らにして、苦しげに胸を押さえ倒れている天狼であった。

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