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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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小さな波紋。(その7)

ちょっと過激な内容が入っています。

ご注意ください。_(._.)_

 社の中は灯りが消えており、辺りは闇に包まれていた。

道司は、警戒しながら中へと踏み込んだ。

中は、むせ返るほどの血臭が昇っていた。

血臭の若さで、こちらが血に酔いそうになる。

床をゆっくりと踏みしめると、軋む音と共に水の音が聴こえていた。

道司は目を細めた。

夜闇でも辺りはよく見えていた。

獣達やその他の生き物たちの死体がそこら中にあった。

道司の足元にもそれはある。

道司はそれを踏まないように足を運んだ。

天井のはりまで、死体がぶら下がっていたのを認識しながら進んで行く。

すると、進むにつれて咀嚼音そしゃくおんが響いて来た。

近づくにつれて、その正体が露わになった。

その光景を見た道司は、何とも言えない気持ちになった。

あまり見たくなかったな…。

人狼としてそれが本性だとしても、彼の半分は人だ。

「……勝馬」

彼は天狼の護衛を務めていた。

そんな彼がオオカミの姿となって、死体をむさぼっていた。

黒狼こくろうがこちらに気づき、食事をやめた。

ぽたぽたと口元から、赤い液体をこぼしながら威嚇しだした。

その威嚇に反応して、複数のオオカミ達が影から現れ出した。

彼らもまた山犬であり、家族だ。

オオカミ達は、新たな獲物だと言わんばかりに目の色を変えた。

もう彼らの意識は神祖に乗っ取られていた。

道司は、懐から扇子を取り出した。

白く銀色の扇子は、竹や木では作られておらず、特殊な金属で作られた一品。

道司は、オオカミ達に扇子を向けた。

「僕だってね、一応君たちの長なんだから、ね」

道司が行動を起こすとオオカミ達はいっせいに襲いかかって来た。

襲って来たオオカミ達の一体に扇子で頭を叩き付け、喰らいつこうとするもう一体の攻撃を横にそれて避ける。

扇子を構え直し、オオカミの胴体に叩き付ける。

道司の反射でオオカミ達は怯んだものの、すぐに態勢を戻してしまった。

「あ、やっぱダメ?」

彼らに啖呵を切ったものの、道司にはオオカミ達を倒せる腕力がなかった。

ゴリラ並みの力がないと、彼らを気絶させることができない。

かと言って、術に頼っては彼らを燃やしてしまうのはいただけない。

つまりこれは…

「やばいね」

道司がそう呟くと黒狼が道司に襲いかかって来た。

道司は、扇子で防御しょうと動いた時。

派手に床を蹴る音が響いた。

「勝馬あああーー!!」

それは、声と共に襲い来る黒狼を殴ったのである。

道司は驚いた。

「まー君!」

正俊は息切れながら、道司の前に立っていた。

「みっちゃん!だいじょうぶ?」

「あ、うん…」

道司は彼の強い意志に驚いていた。

神祖の意志に反して行動している。

山犬の中でそれが出来るのは、ごく少数。

彼がそうだったことに、道司はありがたさを感じた。

そして、それがもう一人いた。

彼女は他のオオカミ達を一撃で倒していた。

「美鈴ちゃん!」

「…………」

返事はないが、彼女は頷くだけの反応をした。

あまり顔には出さない彼女だが、今は少し辛そうだ。

彼女なりに、神祖の意志と戦っているのだろう。

「美鈴ちゃん…」

道司は名を呼ぶくらいしか出来なかった。

美鈴はそんな道司をよそに、襲ってくるオオカミ達と対峙していた。

すると、いつまでもぼーとしている道司に美鈴が言葉を出した。

「行って!」

「そうだよ!みっちゃん!」

正俊も言葉をかけ、道司を促した。

「ごめん、二人とも!」

二人に言われて、道司は奥へと向かった。

残された正俊、美鈴は正気を失ったオオカミ達と向き直り言葉を出す。

「美鈴ちゃん、今度デートしない?」

「断る」

場の空気を読まない正俊といつだって平静の美鈴の会話だった。

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