小さな波紋。(その6)
道司が、天狼がいる社へとたどり着くと、そこは慌ただしく騒ぎが起こっていた。
社の方から、慌ただしく獣達やその他の生き物達が逃げて来ていた。
「恐ろしや恐ろしや」
「逃げろ逃げろ!」
「大喰いだ!喰い殺される!」
人の言葉を使ったことから、彼らが何者かすぐにわかった。
彼らが人に化けていた参拝者なのだろう。
身に着けていた笠や布を脱ぎ捨てるほどの、恐ろしいことが彼らにあったようだ。
道司は道の端にひっくり返っていた亀を見つける。
逃げて来た参拝者に蹴られてしまったのだろう。
道司は亀を拾い上げては、様子を見た。
「君、大丈夫?」
「うぅう…こ、これは、これは…道司さまでは、ありませんか…」
僕の名前を知っているってことは、名のある主の使いだろう。
亀は、蹴られたせいで甲羅に少しひびが入っていた。
道司は傷ついた亀をそっと撫でては言葉を出した。
「きつい所、ごめんね。何が起こったのか、わかるかい?」
大体のことは聞いたが、現場にいた者の言葉の方が、その状況がわかる。
「それが…突然、明りが消えてしまいまして、すると、周りにいたオオカミ達が苦しみだしたのです…」
予想通りの最悪の状況だった。
「……うん、ありがとう。ごめんけど、しばらく僕の懐にいてくれないかな?…大丈夫、守るから」
「これはこれは…わたしめにそのようなこと…申し訳ない」
「いいって、事はこっちが悪いんだしさ」
道司は、亀を大事に胸の懐にしまった。
「さて、と…」
社の中から血臭がしていた。
きっと、中で喰い荒らしが起きている。
僕を呼びに来た山犬達を下がらせたのはよかった。
ついでに、辛くなったら強引でも気絶するよう指示もして来た。
それでも、どれだけ被害を抑えられるか…
道司は、頭を少し抑えた。
頭の中に鳴り響く声がある。
それは、強い思念のようで、ひどい怒りの感情でもある。
それが道司の意識を乗っ取ろうする。
その怒りを抑えようとすると、ひどい頭痛なって帰ってくる。
道司は眉間を寄せた。
痛みが社に近づくにつれて酷くなってくる。
社の中には、神祖の意志に逆らえるほどの強い意志がないと入れない。
道司がそうだ。
「僕を舐めてもらっては困りますよ」
道司は意を決めて、社の中へと入って行った。
読んで下さりありがとうございます!
拙い文章でありますが、これからも背一杯書いて行きたいと思います。
誤字脱字や文章の書き方、ここはよくない表現など、ありましたら気軽に教えてください。
この小説にアドバイスなどありましたら、ぜひ教えてください。
参考にしたいと思っています。_(._.)_