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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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番外編 オオカミ達のクリスマス。(その9)

 一方、青年は誰もいないカラオケボックスにいた。

「本当に広いカラオケボックスっすね~」

エレベーターまで設置されてるから、結構でかい建物なのだろう。

6階建てみたいだし…

エレベーターの近くに案内板があった。

それを見てみると、1~3階までカラオケボックス、4、5階はスポーツジム、6階はカマガマバー(居酒屋)。

4~6階層は想像ついているので、行かないっす。

とにかく、まずはこのカラオケボックスの階層を調べて回って見るっす。

青年はこつこつと靴を鳴らしながら、廊下を歩いた。

やけに響く廊下だった。

1階の様子は、特に目立った様子はなかった。

普通のカラオケボックスと変わりない。

この1階の部屋は、5部屋あるようだ。

ぞれぞれの扉に番号が振ったプレートがつけられている。

101から105の順だ。

青年は101の部屋の扉に手を掛けた。

ドアノブを捻ったまではいいが、扉をいくら押しても引いてもびくともしなかった。

「開かない…」

普通に開くと思っていた。

青年は扉の小窓を覗いて見た。

真っ暗で何も見えなかった。

他の扉でも調べてみたが、どれも同じようだ。

だとすると、最初に出た扉、105の扉に手を掛ける。

「開かなくなっているっす」

中の方も同じく暗くて見えない。

どうやら、この1階は何もなさそうだ。

「次は2階っすね…」

上に向かうには、通路の先にある階段を使うことにした。

エレベーターを使うのは、気が引けた。

一応、電気は通っているみたいだが…

もし、エレベータ内で蟲にでも襲われたら対処しようがない。

延べ棒である紅桜を使うには狭すぎるし、退路も確保できない。

よって、エレベーターを使うのはやめた。

そして、青年は階段を使って2階へと足を運んだ。

「一人だと、結構心細いっすね…先輩たち大丈夫かな~」

一刻も早く、合流したい所だが、この幽世は複雑だ。

行ける所が限られているし、そこから道を見つけるのも難しくなってくる。

青年が2階の廊下へと出るとそこにも、5つほどの部屋が並んでいた。

201から205と順に並んでいた。

「ここも、似たような場所っすね」

違っているとしたら、カウンターは無く、トイレが設置されていた。

青年は一部屋ずつまた調べ回った。

結果は、同じ。

青年は持っていた携帯を見た。

圏外だった。

「ま、わかっていたっすけどね…」

幽世は隔離されている世界だと習ったから、こうなるってわかっていた。

むしろ隔離された世界で、携帯が使えるのが異常だということだ。

携帯の時間は、深夜に入っていたが、この時間も正しくないんだろう。

本来の時間と幽世の時間はずれている。

幽世の時間は、固定された時間でもある。

幽世が夜なら、現世はとっくに朝になっていることもある。

隔離された世界なら尚更、正確な時間がわからないということだ。

青年は上を見上げた。

3階へと進む階段を見つめた。

3階まで、何もなかったら本格的に道を探さないといけない。

青年は3階へと足をかけた時。

2階の廊下のどこかで壁を叩く音がした。

「音したっす…まさかのホラー展開っす~」

青年は地味染み思った。

一人はやっぱ怖い…

「せんぱ~い~どこすか~俺もう泣きそうっす~」

ぼそぼそと言っているとまた音がした。

「うわ~ん」

壁を叩く音は部屋の中で叩いているようだ。

つまり、どこかの部屋で誰かが叩いているということだ。

「先輩、帰っていいすか…俺、実はホラーもの駄目でして…」

すると、女性の叫び声が聴こえた。

「マジでっす!!」

青年は半泣きながら、壁音が鳴る場所へと向かった。

それは、案外近くで鳴っていた。

女性の叫び声もここからだった。

205、プレートの番号がそう告げていた。

青年は扉のドアノブに手をかけ、傾けた。

少し押すと動いたのである。

さっきまで、動かなかったのにだ。

小窓を覗き込んでみたが、暗闇でわからない。

ここは入って確かめないといけなかった。

青年は唾を飲み込んで、勢いよく扉を開けた。

ドンッ

「……誰も、いない」

そこに広がっていたのは、誰もいないカラオケ部屋だった。

おかしなことに明かりも点いていて、周りがよく見渡せた。

誰もいないのに、音が鳴っていた。

勘違いか…?

「……なんだったっすか…?びびったっす…」

カラオケの機材も雑誌も特に荒らされた様子はなかった。

部屋はきれいに掃除されていて、いつでも客を入れそうな部屋だった。

「…はあ」

青年はドサッと黒いソファーに座った。

女性の声といい、壁の音といい、てっきり女性が襲われたんじゃないかと思った。

「何だってんすか…」

青年が脱力していると急にテレビが点き、画面が砂嵐となった。

「…………」

青年は言葉が出なかった。

これって、アレすか…

アレっすよね…?

助けてください…せんぱ~い!

青年が心の中で助けを呼んだ所で、テレビの画面は砂嵐から別の画面となった。

「……っ!!」

テレビから女性の叫び声と壁を叩く音が鳴った。

それも、この部屋と同じ場所を映していた。

青年はテレビから来る情報にただじっと耐えるしかなかった。

その内容は、事件の始まりを示していた。

これは、女性と映っている男性に聞けば、全てがわかる。

青年は頭を抱えた。

「なんすか…これ…これが現場すか…?思っていたのと違うっす!」

頭を掻きながら、青年は立ち上がった。

ここで立ち止ってはいけないと思ったからである。

テレビから流れる悲劇を絶ち斬るために、青年は部屋を後にした。

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