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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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番外編 オオカミ達のクリスマス。(その8)

 正俊が再び立ち上がった時には、ウシの着ぐるみはいなかった。

「くっ…やるじゃん、あのウシ…今度あったらステーキにしてやる。…勝馬、無事か?」

勝馬はあの爆発によって吹き飛ばされた。

返事が無くて正俊は焦った。

「勝馬!」

「…なんだ」

「なんだ…じゃないよー!もうぉ~~!」

「うるさい」

勝馬は少しふらつきながら立ち上がった。

とっさに鬼火で防御をし、ダメージを軽減したのだろう。

その影響でスーツが少し焦げていた。

「人が心配してんのに~~!」

勝馬の素っ気ない態度に正俊はぶすくれたが、近くにいた男が目に入った。

男は先ほどの爆発で椅子から落ちて、腰を抜かして怯えていた。

「…な、んだ、お前たち、は…」

正俊が近づくと男は半ば発狂寸前になった。

「く、来るなっ!来るなぁあ!!」

正俊は目を細めた。

「なんだよ…あんた」

さっきのウシといい、こいつも契約者か…

「なあ、あんた…無理にとも言わない、今すぐ彼女を止めた方がいい。じゃないと、彼女が彼女ではなくなるよ」

「うるさいっ!あいつはもう化け物だっ!」

「おのさぁーあんたがやったんだろ?あんな風にしたんだろ?人のこと殺した何の言っといて、一体何なの?」

「うるさいうるさいうるさい…!!俺は何も悪くない!悪くないんだ!」

正俊は問うのやめた。

保身に走った時点でこの男は終わっていた。

この男がウシの着ぐるみと会っていたってことは、こいつはもう切られていると判断していいだろう。

ウシを取り逃がしたのは、痛かったな…

あのウシは蟲を使役できるほどの力を持っていた。

密売者、媒介者、蟲使いなどと呼ばれる、地獄蟲を取り扱う組織の一人なのだろう。

正俊は頭を切り替えて、男に向かって言葉を出した。

「あんた、とにかくここから出よう。死にたくなかったら、さっさと立つんだな」

膿蟲は孵化直前だ。

彼女のえにしがあるこの男が一番の獲物えさだ。

今まで、襲わなかったのは利用価値があったからだ。

膿蟲が孵化してしまえば、本格的に彼女は蟲として生まれ変わり、そうなったら確実に襲いに来る。

あまり時間はない。

とっとこの男を連れ出さなければいけない。

だが、男はこちらの言葉など聞かなかった。

「う、う…くっ来るなっ!俺は悪くないんだっ!全てあいつが悪いんだっ!」

天井から、ぼとぼとと黒蟲が降って来た。

「うわあぁああ!!」

男は黒蟲に驚き叫び出し、服に着いた蟲を払った。

「蟲!蟲っ!俺は餌じゃない!俺は餌じゃない!」

正俊は再び刀を取った。

喫茶店の天井は、既に黒蟲の海となっていた。

湧き出した黒蟲は、雨の如く落ち始めた。

勝馬は床に落ちた黒蟲を踏みしめながら、正俊と並んだ。

「次は、へまするなよ」

「わーてる」

正俊は肩に乗った黒蟲なんて気にも留めず、刀を構え直した。

男が黒蟲達にかじられ始め、バタバタと暴れ出した。

そんな時、黒蟲の海から渦が起き、そこから白く尖ったモノが現れた。

「ビリビリ…ビリ…ビリビリ」

布を破く音が聞こえ来ては、その顔を覗かせていた。

肩まである茶髪を男に向かって垂れ流しては、男を誘うように手招きをした。

「あっあ、あ…」

黒蟲の渦の中から彼女が現れた時には、男は魅了されたように彼女に向かって手を伸ばし始めた。

正俊達には彼女の姿は異様な姿に見て取れるが、男にはかつての彼女の姿が見えているのだろうか。

孵化の進行はもはや止めることが出来ない。

彼女の目は既に螳螂かまきりのような目をしていた。

そんな彼女に男は喰われようとしていた。

「このまま、いちゃつかれても困るんだよね。…だからさ、俺に乗り換えない?」

正俊は彼女と男の間に入っては、刀を突き出した。

突き出した所は、彼女の目を突き刺した。

「ウギャアアアアアアア!!」

彼女の奇声が鋭く響いた。

膿蟲の孵化が始まっては、もはやその弱点はない。

膿蟲自体が蟲となる。

そうなれば、自然と戦い方は変わってくる。

「いい声じゃん、もっと聴かせてよ…おねーちゃん❤」

正俊はにんまりと笑った。

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